最新宇宙望遠鏡 1 | kouseisogoのブログ

kouseisogoのブログ

ブログの説明を入力します。

 最新宇宙望遠鏡とは?

 米国が2021年12月25日に打ち上げたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡である。この望遠鏡で撮られた写真を紹介したい。すでに観た方もおありだと思うが、先に可視光線で撮ったあのハッブル宇宙望遠鏡(略称:HST ハッブル・スペース・テレスコープ)の写真と見比べていただきたい。

 なおこの新しい望遠鏡は略称JWST : ジェームズ・ウェッブ・スペース・ テレスコープ 。 ジェームズ・ウェッブは1960年代、NASA月面着陸計画(アポロ計画)時の長官である。フルネームを付けた所に彼への敬意が感じられる。JWSTの反射鏡径6.5m(18枚の正6角形鏡「セグメント」の集まりで ベリリウム金属板に薄い金でコーティングしている。1枚が20kg 、裏には1枚づつアクチュエイター40kgを装着して、セグメントの位置、上下左右を地球から変えられる) 光波長の反射率は金の特性で99%と抜群なのだそうだ。望遠鏡総重量約6t。余談だがベリリウムはオッサンのステレオ・スピーカーにも使われている。何でも強い毒性を有しているとか。トゥイーターと言う高音用のスピーカーに使用されているが、やや強調された繊細で突き抜ける高音がすばらしい、まあそれはどーでもいいけど。

 

 どうしてそれを作ったのか?

 1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡(HST)は反射鏡径2.4m、総重量11t。高度600kmの地球周回軌道上にあり、可視光線主体の高解像度天体写真や詳細な天体データを数多く提供して来た。(後に赤外線カメラなども装着)

 1995年のクリスマスの頃、この働き者が宇宙の虚空と思われる「何もない空間」を10日間に渡り凝視していた。有能な彼には世界中から観測や撮影の依頼が殺到しており、要望を叶えるには「何年待ち」の状態だった。

 「この忙しい時に一体何をしているんだ」

 当然そんな声が上がった。

 だが ── 「何もない空間」には、おびただしい数の天体が映っていたのだ。10日間の光の蓄積で 通常ではとてもじゃないが見えないような暗い天体までが映っていたのである。更にその中でひと際赤く暗いものを発見した。ぼんやりとクラゲのようなそれは、専門家の眼からすれば非常に遠い天体であると推定できた。

 関係者は仰天し、この「何もない空間」を 「ハッブル・ディープ・フィールド」と名付けた。そしてその赤暗い最遠候補の天体をGN-z11と命名した。同時にもっと遠い天体、すなわち宇宙の創始時期たる138億年前の天体を見付けて調べれば宇宙の多くの謎が解けるだろうと考えた。そこで更に遠方の天体を捉える為に赤外線専用の望遠鏡が必要になったのである。これがJWSTを誕生させる強い動機になっている。

 

 有名な写真でJWSTとHSTの映像性能を比較
  下の写真①②③は余りにも有名な「創造の柱」。①②がJWSTの昨年8月発表分である。中間赤外線装置で可視化した①映像。へび座方向にあるM16「わし星雲」(ここでは新しい星々が誕生しているので 創造の・・・ と呼ばれている 距離6500光年)。

 ③「創造の柱」は1995年発表になるHSTの写真で大きな話題を呼んだが、その後2015年に同じ写真③を再度二枚撮影した。そのうちの1枚は新たに装備した赤外線カメラの画像と重ねているので、多数の背後にある星々が描写されており、例の「柱」はやや紛れ気味となっている。

 

 ①のJWST版写真は中赤外線装置で撮影のものだが、赤外線系の影響はやや抑制されているようだ。反射鏡の大きさや搭載機器が高性能なので、細部の描写が緻密である。最も長い柱の先端(頭部)にいくつかの小さな親指に似た形の突起が見て取れるだろうか? それがやがて輝き出し 星になると言う。小さな親指と書いたが、大きさはその中に太陽系が丸ごと入ってしまうほど。(太陽ではなく「太陽系」ですぞ!) この柱の長さは5万光年(一部に7万光年とも)である。つまり先端~下部のちぎれた部分まで光の速度で5万年かかる。(昔のハッブル写真の解説では1万光年と書いてあった。どれが正しいかは不明だが、とにかく超大なスケールなのは間違いない)

 

    ①JWST 中赤外線装置で2022年撮影 。

 

 

 ②同じものをJWST近赤外線カメラで撮影したもの。

 

 

 ③次は比較の為 あの有名なHST可視光線帯域で2015年に撮ったもの。もう1枚あるが省略した。

 

 HSTの写真は可視光線とは言っても、あとから三色フィルターで補正し、見えづらい部分は修整を加えている。また高倍率をかけたカメラの画角が狭いため、何枚かを部分撮りして1枚の写真に繋ぎ合わせている。かなり努力した写真である。

 

 選択した光の波長(赤外線帯域)によって当然色彩は違って来るし、周囲や背後のガスや星々が映し込まれる。どれが本当の映像かと言われれば「どれも本当」と言わねばならない。ただ我々が「本当の」と言う場合、可視光線での姿を指している。可視光線の帯域は、全ての光や電波帯域のほんの一部のみである。(たとえばTVの全チャンネルが一度に見えたら困るでしょう?) 我々のカメラ眼は様々な意味で優秀な機能を備えているが、認識できる光の帯域は非常に狭い。

 研究者にとって赤外線映像は、組成構造やガス物質の種類が推定し易いと思われる。また光学機器や映像処理機材による性能の違いから、明らかに細部表現には格段の差があることは否めない。しかし HSTのこの写真を観た時は鳥肌がたつほど感動したものだ。恐らく世界中が同じ感動を覚えたことだろう。ありがとう、ハッブル君。世界一有名な望遠鏡である。

 

          *  *  *

 

 創造の柱はどれだけの高倍率率をかけているか

 ではここで これらの写真がどれくらいの高倍率で高解像度なのかを感じていただく為に、M16「わし星雲」の全体像から紹介しよう。M16とは仏天文学者シャルル・メシエ(1730~1817)のM。その彼が当時の望遠鏡で見ることのできた103個の星雲・星団に番号を付けてカタログを作った。その16番目に決めた星雲がM16である。有名なアンドロメダ星雲はM31。望遠鏡性能が向上した以降は計7840個の星雲・星団を記録したNGC(ニュー・ジェネラル・カタログ)がある。

 

 星雲は小さく薄い色なので肉眼で見える人は少ないだろう、「わし星雲」も然り。すばらしく視力のいい人なら名前のとおり、わしがやや横向きで羽を広げているように見えるかも知れない。だがそれはとびっきり澄んだ空気で夜空が晴れている場合である。

 

 写真④ M16が映っている。(カメラのシャッター解放にして光を蓄積している為、実際に見た目より明るくなっている。

  ④ 

 

写真⑤ 次は天体望遠鏡で撮ったもの。わしが羽を広げ頭は右向きに見えるだろうか。胸のあたりに創造の柱がおぼろげに小さく見える。

 ⑤ 

 

 

 写真⑥ 更に大口径・高倍率をかけたもの これはもう天文台クラスの望遠鏡である。倍率・光蓄積などもすごい。

   

 

 写真⑦ そして一挙にハッブルへ。④~⑥の写真と比較すれば、この映像の倍率と解像度がいかにすごいかが推定できる。

   

 

 通常、星雲などは山や高原などに行って観るもの。現在の中小都市ではまず観えない。肉眼で見えるのはあのオリオン大星雲が有名だ。これならオリオン座が出ている冬にオリオンの腰あたりの三ツ星の下にボンヤリしたものが見えるはず。これが大星雲である。(しかしその中にある馬頭星雲は見えません)

 

 以前、M31アンドロメダ大星雲を見ようとした事がある。口径100mm反射望遠鏡を使い、嬉々としてオッサンの実家で試みた。

 まずアンドロメダ座を探す。倍率100倍、直線上に並ぶ星を辿って行くと、そのすぐ横にローソクを灯したような それらしい仄かなモノが見えた。「ただそこに何かある」と言う程度だった。我々が目にするアンドロメダの天文写真は、大口径の望遠鏡で受光センサーに光を蓄積した映像だからはっきりと見えるが、100mm径で肉眼で見るのは暗すぎる。

 

 しかし ── 天文写真のそれは 言わば「死んだ光」である。実際に我々が小口径で観る時、たとえ映像は小さく不鮮明であっても 今、現に輝いている生の姿を観ているのだ。これはまた別の感動と価値があると思う。手持ちの小口径(100mm以上ね)で土星などを見ると、あの輪っかが見えて感動する事間違いなし。一生に一度、生の木星や土星を見るべきだと強くお勧めする。

 

 では次にJWSTの構造や軌道に関する簡単な情報を紹介する。