現在の福岡の代表的な定期観光バスと言いますと、西鉄バスが運行します「FUKUOKA OPEN TOP BUS(福岡オープントップバス)」が最も知られた定期観光バスである事はご存知の事と思います。
この「福岡オープントップバス」も、トラック(日野プロフィア)を改造している事もありまして(形式、LKG-FW1EYBJ)、天井が開いていると言う事で、悪天候時には利用しにくいと言う点はありますが、それでも観光客などが利用されておりまして、2台の車(赤・0010、青・0011)によって福岡市内を運行されております。
そんな私自身も、以前妻と乗車歴がありましたが、やはり上からの迫力が印象的であった事を覚えております。ただ悔やまれるのは、こういったときに限ってカメラを持って行っていなかった事、また夜間であった事からスマホでの画像もいい画像が収められなかった事、これは最も悔やまれる所ではありました・・・。
そんな西鉄バスには、これまでも観光客に向けました循環バスが運行されておりまして、定期観光バスが廃止されましてから「福岡オープントップバス」が運行されるまでの4年間、さらに並行しての2年間の計6年間このバスが運行されておりました。今回は、その観光循環バスに関しまして皆様にご紹介してまいります。
その循環バスが、福岡シティループバス「ぐりーん」でありまして、平成20年から26年までの6年にわたりまして運行されていたものでありまして、福岡市内の観光地を回ります周遊バスとして平成20年より運行を開始しまして、国内・海外の観光客が延べ約35万名もの方々がこの「ぐりーん」を利用しておりました。
この「ぐりーん」の運賃は、初乗りが260円(~平成26年3月末まで250円)でありましたが、「ぐりーんパス」を使用しますと700円で「ぐりーん」及びエリア内の一般路線バスに乗り放題でありましたし、エリア内の施設の割引もできるなど、「ぐりーん」乗車に関しましての特典もついていたのが特徴でありました。
そんな「ぐりーん」は運行当初は以下のルートが存在しておりまして、ルートの中には都市高速経由で運行されておりました(停車地名称は運行当時です)。
博多駅~キャナルシティ~櫛田神社~天神(昭和通り・歴史資料館)~(都市高速・天神北RP~百道RP)~福岡タワー~ヤフードーム~唐人町~西公園~平和台~天神(渡辺通り・天神コア)~柳橋~住吉神社~博多駅
その後、平成23年の改正によりまして「ぐりーん」は複数のルートに改められておりまして、通常の日中のルートであります「美術館ルート」では都市高速を通らなくなるルートに改められておりました。それでも、夜間運行します「ナイトルート」では都市高速経由でありましたので、運行区間にあります「荒津大橋」からの夜景はよかったのではないかとさえも思ったほどでした(停車地名称は運行当時です)。
【美術館ルート(主な停車地)】
博多バスターミナル→キャナルシティ博多前→櫛田神社・博多町家ふるさと館前→博多座・福岡アジア美術館前→天神・新天町入口→平和台・鴻臚館前→大濠公園前→福岡市博物館・防災センター前→福岡タワー・マリゾン南口→シーホークホテル・ヤフードーム入口→ホークスタウン前→福岡城址・福岡市美術館東口→護国神社・NHK放送センター入口→天神・警固神社・三越前→中洲大通南口・南新地→博多バスターミナル
【ナイトルート(主な停車地)】~都市高速経由
博多バスターミナル→キャナルシティ博多前→中洲大通南口・南新地→西鉄福岡(天神)駅・ソラリアステージ前→ベイサイドプレイス博多・ポートタワー前→福岡タワー・マリゾン南口→シーホークホテル・ヤフードーム入口→天神コア前→中洲大通南口・南新地→博多バスターミナル
博多バスターミナル→キャナルシティ博多前→櫛田神社・博多町家ふるさと館前→博多座・福岡アジア美術館前→天神・新天町入口→平和台・鴻臚館前→大濠公園前→福岡市博物館・防災センター前→福岡タワー・マリゾン南口→シーホークホテル・ヤフードーム入口→ホークスタウン前→福岡城址・福岡市美術館東口→護国神社・NHK放送センター入口→天神・警固神社・三越前→中洲大通南口・南新地→博多バスターミナル
【ナイトルート(主な停車地)】~都市高速経由
博多バスターミナル→キャナルシティ博多前→中洲大通南口・南新地→西鉄福岡(天神)駅・ソラリアステージ前→ベイサイドプレイス博多・ポートタワー前→福岡タワー・マリゾン南口→シーホークホテル・ヤフードーム入口→天神コア前→中洲大通南口・南新地→博多バスターミナル
しかし、平成24年より運行を開始しました、「福岡オープントップバス」の運行開始以降、利用者は低迷しまして、平成25年の改正よりこれまで運行されておりました都市高速経由のルートは廃止されましたし、「美術館ルート」の一部を変更しまして、その結果以下にあります1つのルートのみに改められました(停車地名称は運行当時です)。
【平成25年改正のルート】
博多バスターミナル→住吉神社→キャナルシティ博多前→櫛田神社・博多町家ふるさと館前→博多座・福岡アジア美術館前→天神コア前→天神・警固神社→護国神社・NHK放送センター入口→福岡城址・福岡市美術館東口→大濠公園前→唐人町→ホークスタウン前→ヒルトン福岡シーホーク→福岡タワー・マリゾン南口→福岡市博物館・防災センター前→大濠公園前→平和台・鴻臚館前→西鉄グランドホテル前→天神福銀本店→博多座・福岡アジア美術館前→祇園町→博多バスターミナル
博多バスターミナル→住吉神社→キャナルシティ博多前→櫛田神社・博多町家ふるさと館前→博多座・福岡アジア美術館前→天神コア前→天神・警固神社→護国神社・NHK放送センター入口→福岡城址・福岡市美術館東口→大濠公園前→唐人町→ホークスタウン前→ヒルトン福岡シーホーク→福岡タワー・マリゾン南口→福岡市博物館・防災センター前→大濠公園前→平和台・鴻臚館前→西鉄グランドホテル前→天神福銀本店→博多座・福岡アジア美術館前→祇園町→博多バスターミナル
けれども、それでも歯止めはかからず、結局平成26年9月に運行を終了しまして、6年にわたります「ぐりーん」の運行は終了へと至ってしまっておりました。
この「ぐりーん」に使用されておりました専用車は、百道浜営業所(当初は千代営業所→博多営業所→)に所属しておりました平成14年式の日産ディーゼルスペースランナーRM4台が交互に運行されておりまして、画像にありますように、白地に緑のラインや葉をあしらった車体となっているのが特徴でありまして、後述の車内のデザインとともに、デザイン自体はJR九州の車両などのデザインを手がけております、水戸岡鋭治氏によるデザインでありました。
その「ぐりーん」の車内であります。車体が緑をあしらっている事もありまして、座席は木製の座席・床を使用しているのが特徴であります。このような形はJR九州など鉄道会社の車両でも見られるような座席ではありますが、やはりデザインを手がけました水戸岡氏らしさも伺わせるようにも感じさせられます。
(車内全体)
(座席)
さて、これからご紹介します画像が、平成26年9月の運行終了前に撮影しました「ぐりーん」であります。この撮影時も、始発であります博多バスターミナル1階11番ホームでは「ぐりーんバス」を表す表示がしっかりと照らされている姿が見られておりました。
その1階11番ホームでは、「ぐりーん」の案内や時刻、運行経路図などの表示が窓ガラスの所において掲示されておりました。そこには、「ぐりーん」の停車地内にあります福岡市内の名所や「ぐりーんパス」に関しましての案内、さらには運行カレンダーも表示されておりましたが、その運行カレンダーも9月28日以降はありませんでしたので、こういった所も運行終了なのかなと言う所が伺えるようでした。
「ぐりーん」の時刻です。運行本数は全13便、運行間隔は30~60分おきでありますが、所要時間は約1時間25分で停車地を回る形となっておりました。その詳しい停車地・経路に関しましては、上の表にもあります停車地・経路ではありますが、その停車地を見ましても市内の様々な名所を回っている事も伺えるのではないかとも思う所ではあります。
この撮影時、博多バスターミナルのバス駐車場には、発車を待ちます「ぐりーん」の姿がありました。この時の便は、運行を担当します百道浜営業所所属の5719(日産デKK-RM252GSN)でありましたが、先述のように緑のラインに葉をあしらっているのが特徴であります車体が何とも目立ってていいのではないかと思う所でした。
この「ぐりーん」の大きな特徴と言いますと、西鉄バスの従来の一般路線車と違いまして、バスの乗り方ではなかったかと思います。画像を見ていただければわかりますように、従来は「中(後)乗り・前降り」なのに対しまして、この車は「前乗り・中降り」となっていたのが特徴でありまして、料金も前払いとなっておりました。やはり、普段が「中(後)乗り・前降り」でありましたので、東京など各地で見られるような形態であったのには、まさに珍しい所であったと言えるのではなかったでしょうか。
また、LED行先でも前乗りである事を記されておりました。こういった表示がありますとわかりやすくてよかったのではないかとも思う所でありましたでしょうか。
さて、「ぐりーん」は博多バスターミナル11番ホームに入線してまいりました。しかし、この時の利用者は数名程度でありまして、この撮影以降乗車される方はいらっしゃいませんでした。そのために、画像のようにターミナルのドアも閉じられておりまして、まさに利用者自体が少なくなっていた事、そして運行終了につながっていた事も伺わせているような姿ではなかったかと思います。
こうして、わずか数名の乗客を乗せました「ぐりーん」が博多バスターミナルを発車しました。こうして見ましても緑地の車体が従来の「スマートループ塗装」や「赤バス」とは一見違っている事を伺わせるようにも思いました。それにしても、その下の画像にもありますようにあまり乗客が乗っていない姿は、運行終了が近いとはいえ見ていて寂しい印象さえも感じられる所でもあったように思います。
(車内の姿)~この便の乗客は後方に座られていたようです。
その後、ご紹介しておりますように、「ぐりーん」の運行は終了しまして、福岡市内都心の循環バスは現在は「100円循環バス」でもあります「キャナルシティライン」が現在博多駅~キャナルシティ博多~天神方面の循環で運行されております。
こちらの画像は、令和元年9月の那珂川市で行われましたバスイベント時に撮影しました、那珂川営業所に置かれております「ぐりーん」のバス停でありまして、キャナルシティ博多前バス停であったものであります。実際に、平成26年9月の運行終了まで使用されていたものであった訳ですが、それがこんな場所にポツンと置かれてあったのには正直驚きではあった事を覚えております。
そして、使用されていた車両に関しましても、各地へ貸し出される姿が見られておりまして、5719~5721が「柳川さげもんバス」などで西鉄バス久留米大川支社へ貸し出された事もありましたが、5718が西鉄バス宗像新宮支社(→新宮営業所)に転属しまして「志賀島ぐりーん」として運行されておりましたが、平成30年に廃車となっております。
また、他の3台も末期は能古島の路線としても使用されておりまして、所属先の愛宕浜営業所に籍がありまして、既存の中型車両とともに運行されておりましたが、令和3年に廃車となっております。こちらは令和2年に私が能古島に行く際に収めました5721でしたが、この時ちょうど姪浜の渡船場にてフェリーから上陸しまして、渡船場向かいの愛宕浜営業所に向かう貴重な姿を収めていたものでありまして、車体には錆が見られていたのが印象的でもありました・・・。
今回はかつて運行されておりました西鉄バスの福岡シティループバス「ぐりーん」に関しましてご紹介しましたが、私自身も、この「ぐりーん」には都心部で何度かお世話になっておりました。確かに初乗りは250円~260円ではありましたが、それでも長く乗るには元は取れてはいた分、乗りやすかった印象であった事を覚えております。ただ、運行終了後には残念ながら乗車する機会・収める機会はありませんでしたが、上の画像の末期の姿を収めた際は本当に痛々しい印象であった事が残念でなかったかと思います。ご覧の皆様も、存じなかった方はこうしたバスが存在していた事を存じていただければと思います。