当ブログでは、番外におきまして、広島電鉄650形電車に関しましてご紹介しまして、特に652号に関しましては乗車時の模様や千田車庫出区シーンに関しましてご紹介しておりました。
この650形電車は、戦時中の昭和17年に広島電鉄で自社発注の上導入された電車でありまして、昭和20年8月6日に発生しました原爆でも被害を受けましたが、それでもこの652号を含めまして修理の上現役復帰しておりました。そして、原爆及び戦後から73年となろうとしている今でも650形電車は651~653号で現役(うち営業用は651・652号のみ)となっておりまして、「被爆電車」として語られながらも、広島市内で活躍を続けております。
本当に、車内では木造となっている部分もあるなど、古さは否めない650形電車ではありますが、それでも近代化改造を施しまして、冷房化や行先方向幕取り付け、さらには以下画像のようにICカード「PASPY」対応の運賃箱取り付けなど、新しい機器も取り付けられておりますので、製造から76年にはなりますが、引き続き広島市内を元気に走っていただきたいものであります。
さて、今回の訪問時には、この650形電車652号の千田車庫出区後に、その652号よりも古い電車が出区しようとしておりました。今回は、その電車の出区シーンを収めておりましたので、皆様にご紹介してまいります。
以下画像が、その電車であります。この電車は、570形電車の現在はこの1両しか残っておりません582号でありまして、1924(大正13)年製でもあります。
この電車は、元は神戸市交通局(神戸市電)でありまして、550形電車として557号を名乗っておりまして、鋼製車両として導入されておりました。以来神戸市内を運行しておりまして、神戸市民の足として活躍しておりましたが、この間には、戦争によります空襲で同僚の車両が廃車となってしまっておりましたが、それでも活躍を続けておりました。
昭和30年代に、この電車は車両更新を行いまして、外板などが新たな形となりましたが、それでも鋼体はそのまま製造時であります大正13年当時の姿を残しておりました。この更新によりまして、車番も557号から592号に改番を行いまして、以来廃止まで活躍を続けておりました。
そして、昭和46年の神戸市電全線廃止に伴いまして、この電車は他の車とともに広島電鉄に移籍しまして、広島電鉄では570形電車582号として広島市内を運行されておりますが、この間には大型の行先方向幕取り付け・冷房化など近代化改造が行われまして現在に至っております。尚、昭和60年からこの僚車は廃車されておりましたが、現在もこの582号のみが活躍を続けておりまして、そう言った事から「現役鉄道車両最古の冷房車両」として現在に至っております。
さて、582号が千田車庫を出区しました。この電車は、13.4メートルと上の画像1・2の650形電車よりも約1メートル(約12.4メートルのため)長く、乗車定員も88名となっておりまして、「単車」とはいえ大型の分類に入る電車でもあります。カラーも緑と薄緑のツートンカラーとなっておりまして、そう言った所からも古さを感じさせられます。
扉は、進行方向左側は前方と中央2箇所、画像の右側となりますと逆に中央と後方2箇所となっておりまして、左側の運賃収受に対応している事がお分かりいただけます。尚、車内には自動両替機・チャージ対応の運賃箱に更新されておりまして、そう言った事から「PASPY」をはじめ、相互利用の「ICOCA」や「Suica」などのICカードにも対応しております。
(本線へ引き上げ)
この582号は、出区後は千田車庫に隣接します広電本社前電停より広島港(宇品)行きとして運行される事になっておりました。したがって、上の画像・以下画像のように本線上で引き上げまして、最後の画像にありますように広電本社前電停より客扱いを行いまして広島港(宇品)電停へと向かう事にもなりますが、画像の582号の姿を見ましても古さを感じさせられるのではないかとは思います。それでも、天井に乗っております冷房装置や広電独特の大型の行先表示器、そして「582」の上にあります「PASPY」の表示が、近代化された電車である事を伺わせております。
所で、出区シーンに戻りますが、出区シーンでは全ての電車とも職員の誘導によりまして出区する事になりますし、入区する際にも同様に職員の誘導で入る事にもなります。と言いますのも、この千田車庫ではポイント交換は手動の転轍機で行っておりますので、そう言った事から職員の手が必要である事が伺える所ではないかとも思います。
(千田車庫内にあります手動の転轍機)~平成26年撮影、奥には古い電車(しかも現在もほとんど現役)の姿があります
私自身も、今回「被爆電車」の652号を収めるためのつもりで千田車庫で構えておりましたが、まさかの新製から90年以上経過しました現役鉄道車両最古参の冷房車両にお会いするとは思わなかっただけに驚きました。この電車自体も、大正時代より、昭和・平成と渡り歩いて来ておりますが、さらに来年には新たな元号へと移る事にもなりますので、新たな元号になりましてからもさらに運行していただきたいですし、かつ大切にしていただきたいと切に願う所でもあります。