ドラゴンゲート後楽園大会
ふと思ったのだが、ドラゲーと橋田寿賀子のドラマには、ひとつ共通点がある。とってもセリフが多いのである。「渡る世間は鬼ばかり」を見ている方にはお分かりだろうが、とにかく橋田ドラマでは登場人物がよくしゃべる。で、ドラゲーもよくしゃべるのである。本日もいきなり初っ端からこれ←である。
青いTシャツの「帰ってきたベテラン軍」が本日のメーンイベント、5vs5のイルミネーションマッチにたいする抱負と意気込みを語り、相手の「マッド・ブランキー」を呼び込む。このイルミネーションマッチは最初1vs1から始まり、90秒ごとに交互にそれぞれのコーナーから選手が登場するのだが、どう考えても「先攻側」が得である。で、その先攻後攻を決めるために、腕相撲を行ったのだが、「マッド・ブランキー」の怪力ブラックマン、ウーハー・ネーションに対したのは、ハリウッド・ストーカー市川とドラゴン・キッドの小兵コンビ。2対1ではいくらなんでも勝てよう、とおもったのに、秒殺されてしまったのが、ご覧の場面である。わかりにくくてごめんね。
てな風に、笑いの要素を交えつつ、懇切丁寧にこれまでの流れと本日の興行のキモを説明してくれるのが、ドラゲーのスタイル、なのである。まあねえ。橋田先生は「視聴者の想像力を信用しないからこそ、すべての事象をせりふで語る」って言われてるからねえ。ドラゲーも「観客の想像力をあてにしていない」のかもしれまへんな。
まあ、ドラゲーがそうなるのも、客席を見れば少しわかるんだけどね。
フル仕様の後楽園は超満員、照明も目いっぱい使って、とっても明るく見やすいのだけど、何しろ女子率が高い。「どこに出しても恥ずかしい」プロレスファンはあまり見当たらないのである。つまり、ドラゲーだけでなく、プロレスそのものを見慣れていない人のために、とりあえずポイントポイントで「解説」というか「啓蒙」というか、「説明」をする必要があるわけ。
とりあえず、アタマから見ていると、ドラゲー初心者でも「どう見れば楽しいか」がわかるようになっている今の作りは、そういうところを意識しているんだろうからねえ。ヘビーな後楽園ウオッチャーの我々が文句を言う筋合いではないかもしれない、と最近は思っている。あ、今大会の詳細は、こちらの公式サイト(http://www.gaora.co.jp/dragongate/ )を見ておくんなさいまし。
で、話を戻そう。ドラゲーの魅力は「細マッチョの肉体美」と「アクロバティックな飛行技」と「スピード」である。
日本のプロレスはイノキの「闘魂」だろうが、ミサワの「四天王プロレス」だろうが、相手の技を受けたおす「意地」とそのうえで精神、肉体ともに相手を上回る「気合い」で今までできていたのだけど、ドラゲーは「根本が違う」のである。
「空飛ぶホスト集団」と揶揄する声もあるけど、あくまでスポーティーにカッコよく見た目鮮やかなワザを決め続ける。まあ、もっともそれでは旧来の男性プロレスファンはついてこないので、「団体抗争」を持ち込んだりしているが、根っこにある「思想」は、そうだ。だからファン層も他団体とかなり違っている。新日本、全日本、ノアに続く「第四のメジャー」と言われるまで大きくなった団体なのだけど、「独自の戦い」である。その一例が、「多人数タッグ」だ。
前から思っているんだけど、ドラゲーの真の魅力は、6人タッグとか8人タッグとか、多人数でのタッグマッチに現れるんですよ。
なにしろスピーディーに試合が展開し、隙あれば飛びまくり、次から次へと状況が変わる。さっき書いた「ドラゲー3原則」がプラスに働く状況なのだから。本日も全7試合中、3試合が多人数試合だった。いきなり「6人タッグ」の第一試合、「キャプテンフォールマッチ」のセミファイナル、メーンのイルミネーションマッチも最終的には5vs5のタッグになる。
「キャプテンフォールマッチ」ってのは、多人数タッグのそれぞれのチームでキャプテンを決めておき、どちらかのキャプテンが負けるまで勝負がつかない、という試合形式。メキシコでよくある形である。ルチャの流れを引くドラゲーは多人数タッグについてのノウハウも豊富である。
この日も、その魅力は十分に表れた。開幕試合は、コント・ユートピア的ゴムパッチンなどを取り入れた「楽しいプロレス」、セミは若手2人をキャプテンにして、スピード感あふれる試合を組み立てた。イルミネーションマッチでは、オーバーザトップロープ・ルールをうまく使いながら、最後はパワー満点のウーハー・ネーションと小柄ながら技の切れ味鋭いドラゴン・キッドの対決へと導いていく。カラフルに色が変わる試合の数々を楽しみましたですよ。
ただね、「スピーディー」で「アクロバティック」な「細マッチョ」にも、弱点はあるわけで--。
どうしてもシングルが軽いんですよねえ。
この日も、残り4試合はシングルだったのだけど、2試合は「ネタ」。第2試合、菊タローセンセイvs斎藤ジミー了は「オープン・ザ・お笑いゲート選手権」で、「試合の勝ち負けでなく、面白かった方がチャンピオンになる」と最初から宣言されてたからね。第4試合、ドン・フジイ、ジミー・カゲトラ、リッチ・スワンの3ウェイマッチは、「プロレス・のど自慢・アルコール3本勝負」が売り物。3人が得意な歌を歌いながら登場し、持参した酒を飲みながら戦う。酒を飲み干すか、相手2人を倒したら勝ち、というルール。
活躍したのはこちら→スワン君で、ドン・フジイの持ち込んだイモ焼酎に手を付けて、「中身はオレンジジュースだ」と“不正”を摘発してみたり、得意の「その場飛びファイヤーバード」をやろうとしたら酔いが回ってずっこけてみたり。
最後は、カゲトラにローリング・クレイドルをかけられて、バケツにゲーゲーやってたからねえ。
ということになるのも、「重さ」と「強さ」を単体で表現できる選手が、あまり見当たらない、からななのかもしれない。しいて言えば、第5試合にK-NESSとシングルをやった鷹木信悟、ゴムパッチンに出たサイバーコング、メーンのウーハー・ネーションあたりが「パワー派」なのだけど、彼らだって他団体、特にノアみたいに大きい人が多いところにいくと、ジュニア・ヘビーの扱いだろうからね。そうは言っても、ヘビー級をそろえると、ジェットコースターのような面白さの多人数タッグは維持できないだろうしね。矛と盾の命題みたいなもので、ある意味仕方がない、とは思うんですよ。
現在の新日本プロレスは、ドラゲーよりも少しヘビーによった形で、「細マッチョ」なプロレスをやろうとしているけど、あそこはものすごく層が厚い団体だからねえ。
パワー派の鷹木でもこんなこと←ができるドラゲーは、やっぱりワン&オンリーの団体だし、「重さ」なんてあまり意識せず、バンバンアクロバティックなプロレスを見せてほしいんだけど、個人的には。メーンイベント、ウーハー・ネーションがドラゴン・キッドを沈めた決め技は、その場飛びのシューティング・スタープレス2連発だったわけで。ジュニア系の技の切れ、試合のレベルの高さはハンパない。このまま行っていい、と思うんだけどなあ。別に「重い試合」なんて、他団体に任せておけばいいじゃない。
まあ、余計なことを言っちゃったから蛇足ついでにもう一つ、注文を出しましょう。「丁寧な説明もいいけど、興行時間は短めに」。午後6時半スタートの興行が終了したら9時半を軽く回ってたからね。ドームや武道館などのオオバコはともかく、後楽園は2時間半で終わらせてほしいものだ、と思ったワタクシでありました。
ZERO1「ZERO1_TWELVE」12周年 Steve-K
チャン・マメルトンさんにお誘い頂き、初めてのZERO1観戦。
今回はZERO1旗揚げ12周年記念大会ということで豪華メンバーが参戦。
さぞや後楽園ホールも押すな押すなの人だかりと思っていたのですが
チケット席種がS席とA席のみで、閑散としてます。
会場内に入ったら、南側を使わない「コンパクトスタイル」
ほぼ満員で男性が9割、年齢層が高い客層。
しかし、温かい目でZERO1を応援しているので
館内の熱気はアツいのですが常連ばかり。
カードと結果はこちらから
☆絵本プロレス 30分1本勝負
ドラゴン・ジョージ&とびだせ!チンタマン VS ゴキブリマスク&どくとるブレイン
子供向け絵本の登場人物が試合をするというコンセプトで
以前ノアで行ったムシキングテリーのようなスタイル。
ドラゴン・ジョージは若鷹ジェット信介で、90%棚橋10%潮崎というキャラクターになっていました。
既にパッケージでイオンのイベントなどでやっていると思いますが、幼稚園児や小学生には受けます。
1、横山佳和 VS 那須晃太郎
ゴツゴツとした一戦。
ZERO1の若手を体現している横山が回転式のキャメルクラッチで勝利。
2,菅原拓也&藤田峰雄&佐藤悠己 VS マイバッハβ&スティーブン・ウォルター&ジャック・アンソニー
この試合を持っていったのはジャック・アンソニー。
色白でボブ・バックランドとマーチン・ジョーンズとブライアン・ダニエルソン(ダニエル・ブライアン)
を足して割ったような風貌。
妙なクネクネした動きで幻惑をしますが、急所攻撃に悶絶に観客は大喜び。
WWWFでバックランドがゲイに愛されたと同じく、アンソニーは「ゲイキャラ」で
ZERO1以外でも戦わせたい逸材です、間違いなく。
小柄なKAIENTAI-DOJOの佐藤が、マイバッハβフロムロシアのパワーに翻弄され
ツームストンでピン負け。
3,佐藤耕平&KAMIKAZE VS 植田使徒&小幡優作
チョップ合戦、エルボー合戦、植田&小幡のチャレンジマッチの様相となりましたが
最後はKAMIKAZEのムーンサルトで植田をピン。
かなり攻め込まれていました、佐藤&KAMIKAZE。
KAMIKAZEは三沢&川田の後輩(足利工業大学附属高等学校)でSPWF退団後
全日本プロレスに入団を直訴しましたが、馬場より「新弟子扱いだ」と言われ
新婚だったKAMIKAZEは入団を断念したと、当時の週刊ファイトに書いてありました。
もし、あの時全日に入団していたらどうなっていたのでしょう。
ふと考えてしまいました。
4,日高郁人&丸藤正道 VS 高岩竜一&フジタjrハヤト
![$熱闘!後楽園](https://stat.ameba.jp/user_images/20130307/21/kourakuen55/f3/59/j/o0800060012447960633.jpg?caw=800)
丸藤とハヤトの絡みというか、意地の張り合いが最高。
これが初遭遇でした。
最初のコンタクトで丸藤が「お前なんてまだ小僧だよ」といなした所
ハヤトが「ナメんじゃない」とやり返し、かわしていく展開。
丸藤は「意識していない」態度だけど、思いっきり意識していて楽しんでいるのがよくわかります。
2人に日高が加わりハイスパの攻防中、高岩が「俺を忘れるな」とパワーファイト。
最後は、丸藤がハヤトに不知火、日高が高岩にミスティフリップと同じ技の共演。
試合後、日高が丸藤に握手を求めた瞬間、丸藤不知火を仕掛ようとしてスッとリングを後にする。
「おまえ、俺の技を使うんじゃないぞ」という、無言のアピール。
アピールする日高の横で、丸藤を指さし睨みつけるフジタjrハヤト。
良い物を見せてもらいました。
休憩後、リングに橋本大地が登場。
復帰に向かって肉体改造中との事、身体に厚みが増してきました。
1つ疑問、どうしてプロレスラーは襟足を長くするのでしょうか。
ZERO1では横山・植田・橋本、そしてレフェリーまで襟足が長いのにはビックリ。
ロックンロール・エクスプレスやファンタスティックスのオマージュかと
思ったけど、幾ら何でも「田舎のアンちゃん」にしか見えないのです。
顧客ターゲットに合わせたヘアスタイルなのでしょうかねぇ。
5,崔 領二&KENSO VS ジェームス・ライディーン&×ゼウス
KENSOはやはり千両役者です、登場しただけでリングが光輝きます。
張り手一発で空気を変えて、アピール一つで場内を沸かす「華がある」のです。
![$熱闘!後楽園](https://stat.ameba.jp/user_images/20130307/21/kourakuen55/af/15/j/o0800060012447960632.jpg?caw=800)
三冠時代の秋山が「KENSOお前はダメだ」と言ったのは
ファイトスタイルのありますが、世界を変える力があるってことだと
私は捉えます。
ライディーンは有望だけど、他の2人はプロレスが下手。
ゼウスは劣化版アルティメット・ウォリアーにも到達しないボディビルダーのプロレスごっこ。
崔は一発の蹴りや投げ技の力強さはあるけど、すべて「点」の攻撃です。
これは耕平にも言えます。
本来、崔と耕平がZERO1のスターになるポジションのはずなのに
今ひとつパッとしないのは、プロレスの流れがなくブツ切りだからです。
プロレスになっていないから、格闘家が中途半端にプロレスをやっている印象をうけます。
6、大谷晋二郎&田中将斗&大仁田厚 VS 曙&関本大介&大森隆男
豪華メンバーの6人タッグマッチ。
まずは曙が大仁田の毒霧で赤鬼になりゴング。
![$熱闘!後楽園](https://stat.ameba.jp/user_images/20130307/21/kourakuen55/d4/b9/j/o0800060012447960631.jpg?caw=800)
リングで動けないコンディションの大仁田は、場外乱闘中心でも館内熱狂。
田中と関本のハードヒット合戦もイイ!
大仁田と大森の絡みは、大森が実にやりにくそうでしたが
しっかりと存在感を見せました。
驚いたのは曙の速さ。
最近減量して180キロになったとのことで絶好調のよう。
試合運びに緩急をつけ、たたみかけるエルボーやタックルの速さは実に素晴らしい。
「少年時代、ニックのAWAベルトに憧れていた」と本人が語っているように
曙本人がプロレスが大好きなのが全身から伝わってきます。
あの大きさであの瞬発力は驚異、もっとレスラー曙は評価されるべき。
大晦日のボブ・サップ戦が無ければ。。。。
最後は曙のボディプレスで大谷がフォール負け。
最後に大谷が
「プロレスの教科書、523ページ。
かっこ悪くたって、情けなくたって、
そんな経験をした人間が、本当の勇気を与えられるんだ!
ありがとうございました!」と締めました。
![$熱闘!後楽園](https://stat.ameba.jp/user_images/20130307/21/kourakuen55/6d/eb/j/o0800060012447960993.jpg?caw=800)
ZERO1は大谷を中心に熱い団体で
試合内容もゴツゴツしていて
熱狂的ファンもついています。
また、NPO活動やイオンでのプロレスなど
独自な道を歩んでいます。
今日の興行も「12周年記念」なので大々的に開催するべきなのに
堅実に「コンパクトサイズ」でホールを使用したという事は
「無理に外に響かせる必要はない、判ってくれる人に響けばいい」
という気持ちの現われでしょう。
ファンは敏感ですから、「内輪受け」を敬遠しているのではないでしょうか。
また、新日・全日のようにメジャー感はないし
大日・DDTのようにインディーズの自由がなく
大谷・田中・日高のスリートップと
崔と耕平とKAMIKAZEの差が広く
若手の植田・横山・小幡がスマートでなく
全体的にレスラーが地味すぎるところがある。
「ひたむきさ」や「ガムシャラさ」が
時には格好悪くなるときがあります。
だから、今日のKENSOが眩しかったわけで
KENSOの定期参戦がカラーを変えるかもしれませんね。