さとやんですニコニコ


50年続いたお店をたたむ
文字にすればたった
それだけのことなのに…


母は圧迫骨折をする86才まで
小さな居酒屋のような
スナックのようなお店を
たった1人で営んでいた


あの日から4年…
お店を開けることのないまま
家賃を払い続けている母

「もったいないやろ〜」

「ええねん!お店がなくな
るんは寂しいから嫌やねん!
払えるんやからええねん!!」


わかるで…寂しいのは
よ〜くわかるけど
「今やらんでいつやるねん!」
母の寂しいという呟きに
胸を痛めつつも心の中で
そう叫んだ


そして、ようやく
「あんたに迷惑かけられ
へんし…ぼちぼち片付けな
あかんな」と腹をくくった母

くくったのはいいが…

90才になる母の半世紀分の
思い出と巨大な荷物の山を
目の前にして途方に暮れた

どこから手をつけて
いいのやら…

「これ、捨てるで!」
「あかん!勝手な事しな!」
母とのバトルを繰り広げ
とりあえず普通ゴミに
出せるものは手当り次第
袋に入れて出す
お店まわりの植木を片付ける
ここまでに数ヶ月も
かかってしまった
なにしろ私は日曜日しか
動けないのだから

焦りと使命感で頑張っては
いたが、私のキャパシティは
もう限界突破していた


大型家具と食器類の撤去は
20万ほどで業者さんに
お願いした。


大型家具をトラックで
運び出す当日
50年の思い出たちを
二人で静かに見送った


空っぽになった店内に
夕日が差し込んでいる


ウソみたいに広くなった店内
壁に残ったシミ
長年使っていたカウンターの
すり減った角


思えば50年前
思い立ったように自分の
貯金と600万円を借りて
お店を開いた母


母はこの場所でのれんを守り
借金を返しながら私を養い
街の人と笑いあってきた
頑固さも、物持ちの良さも
全部この店を守ってきた
母の誇りだったのだろう


役所関係への手続きは
50年お世話になった
行政書士のオジサンが
「全部こっちでしといたる
から大丈夫!お金はええよ」
と言ってくれた
そのオジサンも94才になると
いうからスゴい


ライフラインの解約
大家さんの立ち会い
鍵を返却して
長い長い戦いがようやく
終わりを告げた


「もうお店の鍵を開ける
こともないねんなあ…」
ポツリと呟く母の背中が
いちだんと小さく見えた




ほんまに終わったんやなあ…
戦いすんで日が暮れて…


お母ちゃん50年
ほんまにお疲れさんでした
ほんま、ようやったなあ
ほんま、ありがとう


久しぶりに藤山直美さんの
人間くさ〜い芝居が
見たなってきたなあ…