懲 戒 処 分
懲戒処分とは、会社が秩序を維持していく為、定めたルールに違反した従業員に対して行われる処分の事です。懲戒処分を行う為には「客観的に合理的な理由があること」、「社会通念上相当であること」が求められます(労契法15条)。懲戒処分が適正であるかを判断するためにはいくつかの原則があります。【罪刑法定主義の原則の類推】懲戒処分を受ける行為と、どのような懲戒処分を受けるのかについて、事前に就業規則に明記しなければ懲戒処分を行うことができないという原則。【適正手続の原則】懲戒処分を受ける行為があったと考えられる場合には、事実関係を調査し、処分の対象者に弁明の機会を与えなければならないという原則。【相当性の原則】処分対象とした行為について機械的に処分するのではなく、行為に至った経緯や反省の程度等を総合的に考慮して、妥当な懲戒処分を行うべきであるという原則。【平等取扱いの原則】過去の事例と比較して、同程度の懲戒処分を行うべきであり、処分の重さが大きく異なってはならないという原則。【個人責任の原則】懲戒処分を受けるのは、対象となる行為をした者だけであり、同じ部署に所属している等の理由で無関係な者を処分してはならないという原則。【二重処罰の禁止の原則】1つの行為に対して懲戒処分を行った場合には、同一の行為に対して再び懲戒処分を行ってはならないという原則。【不遡及の原則】就業規則に新たに設けた規定により、その規定を設ける前になされた行為に対する懲戒処分を行ってはならないという原則。会社はこれまでに組合員に対して4回の懲戒処分(出勤停止)を行いました。会社が組合員に行った懲戒処分理由は下記のとおりです。【懲戒処分1】令和5年5月12日当社は、当社就業規則第59条の定めにより、貴殿を下記のとおり懲戒処分に付します。本書受領後7日以内に本件についての始末書を提出してください。1 処分理由(1)令和5年5月8日、当社から取引先である新日本物流株式会社様(東京都立川市曙町2-37-7コアシティ立川12階所在)を訪問しないよう指示したにもかかわらず、これに違反して、4名で新日本物流株式会社様本社を訪問した。(2)上記訪問時、同社の代表取締役社長 松山正一様に「手紙を渡してほしい」「いるのであれば、話を通してほしい」などと述べたうえ、当社取締役社長 坂本雄二が「三郷で手紙を受け取るから」「三郷で話してほしい」などと指示したにもかかわらず、新日本物流株式会社様の出入ロドア付近に15分以上滞在して話を続け、同社の業務を妨げた。2 懲戒該当事項就業規則第59条11号、第16号、第18号及び第24号3 処分の程度令和5年5月15~19日までの5日間の出勤停止処分【懲戒処分2】令和5年5月19日当社は、当社就業規則第59条の定めにより、貴殿を下記のとおり懲戒処分に付します。本書受領後7日以内に本件についての始末書を提出してください。1 処分理由令和5年5月12日、当社は貴殿に対して、始末書の提出を命じるとともに、令和5年5月15日から同月19日までの間、出勤停止とする処分を通知したにもかかわらず、組合を通じて通告書、抗議文を提出するなど、反省の意を示すことなく、提出期限である令和5年5月19日までに始末書を提出しなかった。2 懲戒該当事項就業規則第59条22号及び同第24号3 処分の程度令和5年5月22~27日までの6日間の出勤停止処分【懲戒処分3】令和5年5月29日当社は、当社就業規則第59条の定めにより、貴殿を下記のとおり懲戒処分に付します。本書受領後7日以内に本件についての始末書を提出してください。1 処分理由当社は貴殿に対して、令和5年5月22日から同月27日までの間、出勤停止とする処分を通知していたにもかかわらず、令和5年5月27日に三郷市文化会館にて開催された当社全体会議に際し、会館入口付近で社員に対して足止めをしてビラを配布する行為等に及び、吉川警察署の警察官が出動、警察官とも問答をする事態に発展し、全体会議の開催時刻を30分以上遅延させた。2 懲戒該当事項就業規則第59条8号及び同第24号3 処分の程度令和5年5月29日~同年6月2日、令和5年6月5日~6日までの7日間の出勤停止処分【懲戒処分4】令和5年6月6日当社は、当社就業規則第59条の定めにより、貴殿を下記のとおり懲戒処分に付します。本書受領後7日以内に本件についての始末書を提出してください。1 処分理由令和5年5月29日、当社は貴殿に対して、始末書の提出を命じるとともに、令和5年5月29日から令和5年6月2日まで、令和5年6月5日から同月6日までの間、出勤停止とする処分を通知したにもかかわらず、組合を通じて抗議文を提出するなど、反省の意を示すことなく、提出期限である令和5年6月4日までに始末書を提出しなかった。2 懲戒該当事項就業規則第59条第22号及び同第24号3 処分の程度令和5年6月7日~同月9日まで、令和5年6月12日~同月15日までの7日間の出勤停止処分上記懲戒処分について、組合員の行為は組合活動による行動であり、処分の対象には当らないと考えています。しかし、仮に万が一組合員の行為が処分の対象になるとしても、会社の行った懲戒処分は適切な手順のもとに下された処分ではありません。本来、会社が懲戒処分を行う際には「事実関係を把握するための調査を行う」→「当事者に弁明の機会を与える」→「懲罰について検討する」→「処分の決定と告知を行う」などの手順を踏み慎重を重ねたうえで処分を行うのが一般的です。何故なら、懲戒処分は罰則であり、判断を誤れば労働者に対して損害賠償義務が発生する可能性があるからです。故に、会社は法律上に定められた懲戒処分を行う基準について把握し、対象者に対して適切に処分する必要があります。今回、会社が組合員に行った全ての懲戒処分は【適正手続の原則】【相当性の原則】に反しており、事実関係の調査や当事者からの聞き取り等を行うことなく、一方的に懲戒処分(出勤停止)を行いました。また、始末書を提出しないとの理由により【二重処罰の禁止の原則】にも反しています。更に、【懲戒処分3】に対しては、就業規則には組合員が行った行為についての規定がないことから【罪刑法定主義の原則の類推】に無理やり抵触させるため、事実にない懲戒該当事項を捏造した上で処分を行っており、極めて悪質です。上記事実により、現在埼玉県労働委員会には不当労働行為救済申し立てを行い、埼玉地方裁判所には損害賠償請求を行っています。2023年9月22日(金) 14:00~埼玉県労働委員会にて不当労働行為救済の審問を傍聴できます。場所:埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号第三庁舎4階