「遅いよ。」(AN)2 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


「きょうはちちのひだから」

「お、おう(どうしたんだ…ドキドキ)」

「ひぃばーばかいたのよ!」

笑ったw

顎には多分周りに流されてつけた髭があったww

















そして、誕生日当日。

 

今日は日曜日だ。

 

え?そっちでは日曜じゃないの?

 

へぇ、世界線が違うんじゃない?←

 

だってそうでしょ?

 

普通の世界に、『入れ替わり』なんておかしな案件あるはずないじゃない。

 

それとも…ああ、これ読んでるあなたの暦は今何年?

 

へぇ、こっちと違うんだね。

 

だから、誰が何と言おうと今日は日曜日なんだよ。←


 

…というわけで、日曜日。(言い訳長い)


 

 

 

「男2人が誕生日会……想像以上に辛い…」

 

「まぁまぁ、そう言うなって。」

 

風間が家まで車で迎えに来てくれた。

 

風間のくせに黒いスモークのついたワンボックスカーはだいぶ生意気だ。

 

ま、相葉ちゃんと3人で遊びに行く時とかアシになってくれて助かってんだけど。

 

「お前、松本さんと2人で過ごさなくてよかったのかよ?」

 

「はっ?な、な、何で松本さん?!」

 

どもりすぎだろ。

 

「別にいいけどさぁ。俺が言うのもなんだけど、もうそろそろ素直になれば?」

 

「はぁ?素直って何だよ!」

 

あれから数回2人で出掛けたらしい。

 

欠伸が出そうだもん、俺。展開遅すぎて。


最初の街の周りをずっとグルグルしてるようなもんじゃん、行こうよ次の街。


スライムと戦うのもそろそろ飽きたっしょ?


レベルだってさ、自然に上がってるはずじゃん。

 

力づくでもさっさと食っちまえばいいのに、と本気で思う。

 

…それが出来てりゃ俺なんか買ってなかったと思うけどね。

 

 

「んで、この馬車はどこ連れてってくれるわけ?めでたい誕生日の男2人を。」

 

窓の外を流れる景色は高層ビルに囲まれていて、切り取られた空は狭い。

 

それに、隣を走る車が近いし速い。

 

首都高のくねった道でのそれはちょっとしたスリルを感じる。

 

車なんて乗る機会がなかったから、最初はその狭さに驚いたっけ。


一番最初に乗った高速が先輩の車だったから。(そーいやどうしてんのかなあの人ら)

 

「それはやっぱ、思い出の地じゃない?」

 

思い出の地って…

 

「いやないわ!誕生日に職場に遊びに行くのはないだろ!!」

 

ぜってぇ笑われんじゃん!

 

風間と俺が誕生日シールつけて2人で歩いてるのとか!!←シールつける気満々

 

「ははは、いいから寝てなよ。昨日相葉ちゃん寝かせてくれなかったんでしょ?本番は相葉ちゃんと合流してからなんだから、今の内に寝ときなよ。」

 

くすくす笑われて、あまりの恥ずかしさにカァッと顔に血が集合する。

 

その通りだと俺の目の下のクマが肯定しているようで。

 

遅く帰った相葉ちゃんが、日付を変わるまで待っていてくれて…その瞬間に祝いの言葉を言ってくれた。

 

そしてそのまま……ごにょごにょ。

 

あの絶 倫バカ、精 力どうなってんだよ。

 

仕事で疲れてんのに…あれか、疲れ マ ラか。

 

俺の方が絶対人数も回数も経験値あんのに…


『隠さないで…?』

 

軋む 腰を 左手でそっと撫でる。

 

『カズのカラダは…誰よりも綺麗だよ。ほら、こんなに…。』

 

……記憶の中の優しい笑顔にきゅんとしたのは、胸か腰奥か……。

 

「…寝るっ。」

 

「ええ、どーぞ。」

 

風間がするりと右手を滑らせ、カチカチとウィンカーを出した。

 

本当に寝不足で…間もなく俺の意識は遠のいた。

 

 

 

「おーい、着いたよ。」

 

風間の間延びした声で起こされる。

 

「あ、ごめ、マジで寝て…」

 

た。

 

最後の1文字を言わずして、息を呑む。

 

「ここ…」

 

「俺らの思い出の場所は、ここもでしょ?」

 

風間が口角上げて笑いながら車を降りる。

 

それに続き外へ出る。

 

ざあっと風に載ってきたのは、塩気の混じった懐かしい匂い。

 

 

「…3年ぶり…。」

 

相葉ちゃんと風間と…ひと夏、過ごした街。

 

 

「色々回らない?折角だし、歩こうよ。相葉ちゃんの仕事終わるまで結構時間あるしさ。」

 

風間が眩しそうに片手を陽に翳す。

 

梅雨とは思えない、眩しい日差しの降り注ぐ日。

 

潮の匂い。

 

揺れる草の擦れた音。

 

海のさざなみ。

 

小鳥のさえずり。


揃ったカエルの鳴く声。

 

3年前に来た時はそんな余裕なかったけど。

 

どれをとっても都会とは違うそれに心の奥がじんとする。

 

ノスタルジーに浸る程『俺』はここへ来ていない。

 

それでもどこか泣きそうになる感情と記憶が、あれは現実だったと教えてくれる。

 

言うなれば体験をしていないけど、経験を手に入れたようなもので。

 

「ねぇ、車停めといてちょっと歩かない?折角天気いいしさ。」

 

朝降ったのか、地面は少し濡れているけど、風は穏やかで心地いい。

 

俺らは何かを噛み締めるよう、ゆっくりと歩きだした。

 

 

 

「まずは…やっぱここ?」

 

風間に連れられてきたのは智の家。

 

櫻井さんと一緒に来た時、この見た目にぞっとしたっけ。

 

その時よりまた草が伸びてるけど、一応住めない程ではない。


雨戸も開いているし、原さんが手入れしてくれてるんだろう。

 

ここで短い間、俺はじいちゃんと暮らした。

 

…元気かな。

 

相葉ちゃん曰く、フランスで再婚したらしいけど。

 

俺や智より先に結婚とか何なのあの人。

 

意味わかんないよ。

 

でも…

 

元気なのであれば何だっていい。

 

いつか、金が貯まったら会いに行ってもいいだろうか。

 

向こうからしたら誰だお前って感じだと思うけど。

 

俺にとっちゃ勝手に家族みたいなもんだから。

 

 

「じゃ~次は~…オソイヨかな?」

 

風間は何が楽しいのかにこにこと前を歩く。

 

智の家と学校の間位にある細井商店。

 

そうだ、相葉ちゃんに海老シュー買ってってやろうかな。

 

俺はまぁ、一口もらえればいいかな。

 

きっと喜ぶぞ…とワクワクしていたら。

 

 

「…閉店…?」

 

閉められたシャッター前に貼られた張り紙には、

 

細井のじーちゃんが身体を壊し、それをきっかけに店を閉じてしまった旨が書かれている。

 

「あ、知らなかったんだ。てことは相葉ちゃんも知らないのかな。ちょうど一年前に腰やって倒れたんだよ。でも、会いに行ったら元気そうだったよ。『いいきっかけになった』って笑ってた位。」

 

風間は少し複雑そうに目を細める。

 

そもそも海老シューは製造すら中止されてしまったらしい。

 

そうなってしまえばまた食いたくなるのが天邪鬼。



…そっか。


なくなったんだ…この世のどこにも……。

 

 

なぁ智

 

知ってるか?

 

あの夕焼け色の怪しいクリームは、もう、無いんだってよ。

 

 

……時代は変わってくよ。

 

変わらないこともあるけど、圧倒的に変わってくものの方が多いんだ。

 

そんな中で、変わらない笑顔に変わらない想いを抱けることは幸せだよな。

 

 

…お前にも。

 

ずっと、想ってるよ。

 

幸せになって欲しい、って。

 

笑顔でいて欲しい…って。



あの日から



ずっと。