「おいっしーーーい!」
「ほんとだー!いろんな味するー!あ、こっちきいろだー!!」
「わーほんと!まるでチーズケーキとショートケーキともんぶらんを足したみたいな味だなぁ~!」
「え?んーっ、確かにそう言われてみれば…」
「もんぶらんてなに?」
こ、コノヤロウ!
あのレシート!!
そのまんま読み上げてるだけじゃねーか!!
「んふふ、櫻井さんが上手に作ってくれたからね~?複雑な味で美味しいよね!色々な材料を混ぜるとこんな味になるんだね!」
「「うん!おいしー!!」」
大野さんがニコニコフォローしてくれたおかげで、何とか話は流れる。
よかった。
バカで。←
♪
「あ!ケータイ、さとちゃんの!」
いれてもらった紅茶を啜りながら、雅紀の指さすテーブルの上の光るディプレイを見る。
「あ、ほんとだ。誰だろ…あ、旬くん。」
「ぶっ?!!」
「ちょっ…あっちー!きたない!翔ちゃん!!!」
「わ、悪い雅紀!」
盛大に吹いてしまい雅紀の手にかかった。
慌てて拭きんで手を拭うと、大野さんも同じように雅紀の手を拭いてくれる。
「だ、大丈夫でした?」
「これくらいなら火傷もないと思います。雅紀くん大丈夫?」
「うん!ありがとねさとちゃん!」
「あ、いや…良かった。ごめんな?で、小栗さんは…。」
「あぁ!なんでもない内容でした(笑)」
はい、と見せられた画面には、
『ケーキ美味しく出来ましたか?俺も今度大野さんの手作り料理食べてみたいなぁ。いつでも泊まりに来てくださいね。ベッドはキングサイズなので、遠慮なく!まぁ、その際は寝かせませんけどね?(笑)なーんて(笑)とにかくいつでも遊びに来てくださいね!』
と書かれている。
泊まりにって、同じベッドかよ?!
どんだけ本気で狙ってんだよこいつは?!
「冗談お好きなんですね~(笑)」
多分、多分だけど、こいつ冗談言ってない。
大野さんしっかりしてくれ!
「ていうかいつの間に連絡先…」
俺だって知らないんだぞ~っ!!
何だかんだで聞きそびれてんだよっ!!!
「あぁ、昨日…ほら、生クリーム、買い出し行った時に偶然会って」
後半こそっと耳打ちされる。
ふわりと、ケーキとは違う何か甘い匂い。
あ~そういうこと。
ていうか俺の、耳打ちされた位でピクっとすんな!
免疫ないと距離感ないと反応するのか…?
そして小栗め…
やっぱあいつ侮れない…
…マジで気をつけないと、大野さん平気でついて行ってしまって襲われんじゃねーか。。
「遊びに行くんですか?」
「え?いや、別にそんな予定は無いですけど…」
あ~よかった!!
こっそり安堵の息をつく。
♪
「あ、また…」
「また小栗ですかっ?!」
「いえ。スーパーの方です。仲良くなって。」
「スっ…」
スーパーの方?!?!!
何だその新キャラは?!?
「それ、男…?」
「はい。菅田さんっていう大学生のバイトさんです。ほら、1番近いスーパーのレジしてる子です。」
ふ、ふ~~~ん。
知らない。知らないぞ。
つーか買い物してたけどレジの奴と世間話したことないぞ!!
あ、いや、女に逆ナンされたことはあるけど…
ま、男なんだし、別に他意はないか。
「さとちゃんのことだーいすきって言ってたよね!」
げっほぉ。
なんですと?
「すだくん、まーくんと同じなまえでねぇ、えーと、うん…うん……」
ちらりと和を見ると、「ウンメイ。」と短く不機嫌そうに答える。
「そぉ!ウンメイってゆってた!だからデンワバンゴーおしえてって!」
潤が得意げに言う。
う…運命だってぇ?!
大野さんと雅紀となんの関係もねーぞ!!
「そ、そいつが何て?」
「スーパーの特売とか教えてくれるんです。丁寧なスーパーですね!助かる~。」
違う、絶対違う!
それスーパーのサービスじゃない!!!
「他は…?最近連絡先聞かれた人とかいないんですか…?」
何故か声が震えてしまう。
「え…?侑李くんのパパとか。幼稚園の帰りに話しかけられて。」
ゆーーうーーーりーーーー?!?
驚いて和を見ると、(和に頼りすぎだって?仕方ねーじゃん俺帰りの幼稚園事情わかんねーし!!)
外人のジェスチャーのように肩を竦ませ溜息をつく。
「侑李に最新のゲームをかりてるあいだに…まったくユダンもスキもないんだから。」
いやいやいや油断と隙がありすぎじゃありませんか和さん?
侑李が黒い笑みを浮かべてる姿が目に浮かぶんですけど!?
「な、何か言われますか?!」
「いえ、別に…毎日侑李くんの写メが送られてきますけど、それだけですよ?侑李くんが送れって言ってるそうです(笑)自分を見て欲しいなんて、可愛いですよね(笑)」
可愛くねーーーーーーーっ
父親まで使うなよ!!
アイツどこまで本気で大野さん狙ってんだ?!
5歳児だけど…アイツが一番怖いのはなんでだろう?!
「あ、そん時のぞむせんせーにも聞かれてたよねっ。」
雅紀がニコニコ報告する。
「あ、はい。連絡網、櫻井さんよりおいらの方がいいだろうからって。」
マジか?!
そういや俺姉貴から引き継いでから一度も連絡先聞かれてねーぞ?!
♪
ま、また…!!
「んふふ、今日は朝からたくさん来ますね、すみません。」
「だ、だ、だ、誰ですかッ」
「先輩です。あ…たまに食べに来るって言ってた。家に行ったらおいらがいないから食べものないって怒ってます(笑)」
あ~~~そんな話してた~~~っ!!!
どんだけいるんだよ~~~~~~~っ!!
くっそ、どいつもこいつも腹立つ!
誰だこんなくだらねー精密機器を開発した輩は!!!
いっそあのスマホ、事故を装って水浸しにしてしまおうか……。
「あ、、そういえば、櫻井さんの連絡先も聞いておいていいですか?」
「ふエっ?!あ、はい!」
こ、声が裏返った…!!!!
「早く帰れそうな日とか連絡してくださいね!皆で食べましょー?」
「は…はい…。」
…やべぇ。
なんか
くっっっっっそ嬉しい。
Thank you so much、開発者!
なんてsmartなphoneなんだっ!!!!
ありがとう文明っ!!!!
…和!!
お前はなんでそんな蔑みのcold eyesしてんだよ!!!!(?)
「翔ちゃん、さとちゃんのでんわばんごーまだ知らなかったのー?」
雅紀が不思議そうにキッズ携帯を取り出す。
…ん?てことは…
雅紀がピ、ピ、と操作し、耳に当てる。
~♪
「はい、もしもし雅紀くん?」
「さとちゃーん♡今日ねー餃子がいい!」
「んふふ、分かった。包むの手伝ってくれる?」
「はーい!」
隣に居るのに携帯で話す2人を呆然と見つめる。
「因みに、ボクらのおまもりケータイにも智の番号トーロクしてありますからね。」
「ここ!ここおすとね、智につながるんだよ?すごいでしょ。智、ボクも手伝うからね!」
「ふふ、ありがとー!」
え、何それ?
知らなかったの俺だけ?
「というわけで、今日は餃子です!出来たら早く帰ってきてくださいね♪」
「はーい…」
す…すげぇ疎外感………。