君を描いてく4 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


今日はいちご狩りに行くから、早めに上げときたいの…
なのになかなか終わらない…(笑)(笑)













「出来た…!!!」



顔を見合せ、ハイタッチする。


3ヶ月費やし、ついに完成した。


おいら達の初めての漫画。


翔くん(て呼ばないと頑なに返事しないんだもん…)がある程度作ってあったプロットの中から、気になったやつをおいらが選び、もはや異次元のネームと向き合いながら何とか仕上げたそれ。


昼休みは何故だか4人で食べることが恒例化してしまったから、放課後やら土日やら、どちらかの家に引きこもって仕上げた。


と言っても翔くんが引く位に不器用でトーンもベタも出来ず、絵はほとんどおいら1人でやったけど…。


因みに写植やらパソコンで出来る処理は、翔くん担当。


これである程度均衡が取れている気がする。


「じゃ、行こう!」


「へ?何処へ?」


「そんなの、決まってる!」



・・・



「こーこ♪」


そう翔くんがにっこり指さした大きなビルは、見上げると首が痛くなるほどの大きさ。


「………山風社……って、超有名な編集社じゃん!!」



翔くんに連れてこられたのは漫画界で一番有名な編集社だ。


週刊も月刊も、少年誌から女性誌まで…。


幅広い種類と膨大な数の漫画を輩出する、漫画家を目指す人間だけでなく殆どの日本人が知っているその名前。


「漫画家になるならここって決めてたんだよね。」


「意識高すぎ高杉くんかお前は。」※CMです。


「何それ?」


「…何でもない…。」


翔くんはテレビをほとんど見ない。


部屋には参考書だらけ。


肝心の漫画が少なくてビックリした。


別の場所にあるんだよ、と教えてくれたけど。


金持ちみたいだし、別邸でもあるのかな…。


ほんと、謎な人だよなぁとしみじみ思う。


「じゃ、持ち込み行こう?」


「えっ、いや、待ってよ心の準備が、」


「もう漫画は出来てんだから一緒でしょ(笑)」


ぱっと手を繋がれて驚いたけど、手くらい繋いでないと緊張して入れそうにもないから、そのまま振りほどかずに従った。



受付で持ち込みであることを説明すると、「お約束はございますか?」と聞かれて固まる。


翔くんが約束などないことを伝えると、少々お待ち下さい、と受付嬢が電話をかけ始めた。


繋いだ手に少し力が入ったのを感じる。


電話一本入れとくべきだったかな、と不安になっていると、


「…えーと…君達は?」


突然背後から男の声がして振り返る。


しげしげと観察されるような目を向けられ、慌てて翔くんの手を離す。


「あ、あの、漫画の持ち込みで来ました。俺ら2人で作ったんです。」


翔くんが漫画の入った封筒を出す。


「ああ、そういうこと…いいよ。今暇だから見てあげる。」


その男はにっこりと、胡散臭い顔で笑った。




「…ふーん、結構面白いね。」


男は顎に手を当ててざっと目を通した。


パーテーションのある簡易的な個室の打ち合わせルームだ。


どこからか、持ち込みだろう、ボロクソに言われる声が聞こえていてさっきから腹がキリキリと痛い。


「…もしかして、初めての漫画?」


「あ、はい、そうです!俺がプロット書いて、彼が絵を。」


「へぇ。最近多いからね。いいんじゃないかな、話に絵が合ってるし一人でやった割に丁寧だから。」


「…!あ、ありがとうございます…。」


褒められるとは思ってなくて、思わず頬が緩む。


翔くんと目を合わし、お互い笑みが漏れる。


それを嘲笑うかのように、男は言い放った。



「だけど…未熟だ。」



そこからは、ダメ出しの嵐で。


話の構成の作り方、


文字が多すぎるとの指摘、


余白の使い方、


全てのコマに背景を描きすぎてごちゃごちゃして見づらいこと、


恋愛ネタを軽く入れたけどあまりにリアリティがないこと…



色んなことを言われて、


ショックだけど、何より悔しくて。


多分…翔くんも同じで。


膝の上で固く結ばれた拳が、ぎゅっと力が入るのを視界の端で捉えた。



「…ま、こんなもんかな。厳しく言ったけど…正直、君らには素質があると思うよ、俺は。ストーリーも面白いし絵も上手いのは事実だからね。…上手くなりたい?」


男が両肘をテーブルにつき、合わせた指の背に顎を乗せて笑う。


「「なりたいです!」」


間髪入れずに言った言葉が、翔くんとかぶる。



いつの間にこんなに夢見てたんだろう、と自分で自分に苦笑する。


翔くんに誘われなければ、漫画家になりたいだなんて一切思ってなかったのに…。


今は、上手くなりたくて仕方がない。


これを仕事にしたい。


デビューだってしたい。


この話を、1人でも多くの人に読んで欲しい。


こうやって、たくさん話を作っていきたい。



翔くんと、漫画家に…なりたい。



「…じゃ、次の土日、連載してる漫画家さんに弟子入りしようか。俺の担当なんだけど。空いてる?」


お互い顔を見合せ、頷く。


「「よろしくお願いします…!」」


良かったよ、と笑いながら、男は携帯を取り出す。



「…あ、和…先生?俺です。見つかりましたよ。次の土日、2人行きます。高校生で…ええ、……」



男が電話で話している間、翔くんがおいらの手をぎゅっと握ってきた。


おいらは、小さく握り返した。