「さーとしくぅーん」
間延びする大きな声に、教室中の視線が注がれ、一瞬考えたクラスメイトが櫻井くんの視界を辿りおいらのことだと理解して、ざわっとどよめく。
「ばっ………!」
ばかやろーーーっ!
昨日の今日で皆の前で呼ぶとか!
こいつマジで有り得ねぇ!!!!!
「えーっ、大ちゃん、翔ちゃんと名前で呼び合う仲になったの?」
「なってない!!」
慌てて否定するも、櫻井くんはニコニコ教室に入ってくる。
あれから翌日の昼休み。
皆弁当食べようとしてたのに、突然の有名人の登場に色めきたつ。
…そして現在、おいらなんかの名前を呼ぶからどよめきたっている。
「よぉ、雅紀!」
「翔ちゃん!いつの間に大ちゃんと?」
「昨日ね。友達になったんだよね、智くん!」
「はぁ?!」
友達とか…!
そ、そんな大きい声で言うなっ!!!
皆が白い目で見てるじゃん…!!!
「友達かぁ~くふふ、まだまだだね~♪」
「うるせ(笑)」
まだまだって、何の話だよ!!
2人は何を企んでるんだよ~っ!!!
「大野く~…ん、って、あれ?櫻井先輩。…何の用です?」
1年の松潤が教室に入りかけて、ジッと睨む。
あーーーややこしいのがまたきたーーーー!
松潤はよく昼休みにおいらを一緒に食べようと誘いに来るんだけど…
ちゅーか、何だその喧嘩腰?!
相手は櫻井翔だぞ?!
「何の用…って。お前こそ何の用?ここ2年の教室だけど。」
ええーっ、櫻井くんなんかめっちゃ感じ悪くない?!
ドス黒いオーラ出てるんだけど?!
「俺は大野くんとご飯食べようと思って来ただけですよ。」
「へぇ、先輩の所に来ないと食べられないの?ボッチ?(笑)」
「櫻井先輩は早く取り巻きの五月蝿いギャルの所に戻ったらどうです?俺はあんな香水や化粧臭い女達、真っ平御免ですけど…櫻井先輩にはピッタリじゃないですか。お似合いですよ、中身がない同士。」
「はは、お前の空っぽの頭とその節穴の目じゃ分かんねぇかな?俺は今智くんと飯食おうと思って来てんだよね。邪魔だから早く相応の場所に帰ってくんね?」
ああぁ、何故おいらを挟んでこんな喧嘩になってるの?ヽ(;▽;)ノ
相葉ちゃんが近くにいるだけでかなり視線が痛いのに、学校のキラキラトップ3が俺の机の周りに…
そして何故かめっちゃドス黒オーラ出まくりで言い争ってるし…
勘弁して~~~っ(泣)
「くふふ、大ちゃん、大丈夫だよ?この2人同中(おなちゅー/同じ中学出身)なんだよ。」
相葉ちゃんが耳打ちする。
「え、そうなの?」
「うん。よく口喧嘩してるけど仲良い証拠だし、問題なし!ということで~っ!」
パン!と相葉ちゃんが手を叩く。
松潤と櫻井くんが驚いて相葉ちゃんを見る。
クラスメイトは…元々ガン見してる……。
「喧嘩りょーせーばい!さっ、皆で仲良く食べよ♡」
…というわけで、何故か中庭で相葉ちゃん、櫻井くん、松潤と、そしておいらで弁当を広げている。
………何でこんなことに………_| ̄|○
ああ、皆がチラチラ見てくる…
キラキラ3人組を見てキャッキャしてる…
うぅぅ、居心地最悪……。
「で?翔ちゃんはどうやって大ちゃんと念願のお友達になったの?」
相葉ちゃんが唐揚げをもぐもぐ頬張りながら櫻井くんに訊ねる。
念願って…
あ~おいらを観察するため相葉ちゃんに話しかけに来てるって言ってたな。。
「どうって…普通に友達になろって言ったんだよ。ね、智くん?」
え…?
櫻井くんを見ると、話を合わせてって顔してて…。
「あ…うん。そう。」
おいらの同調に、櫻井くんがほっと息をつく。
そういや、『口の固い奴を探してる』って言ってたっけ。
漫画家の件は内緒にしときたいんだな、と悟り、口を噤むことを決める。
「何で大野くん?先輩たくさん友達いるでしょ。」
松潤が立派な眉を顰めて櫻井くんを睨む。
櫻井翔を睨めるの、この学校で多分お前位だからな?!
「…興味があって。つーか智くんのことくん付けで呼んでんじゃねぇよ。後輩だろ。」
「大野くんがいいって言ったんだからいいでしょ。口うるさい先輩には敬語使ってるんで、貴方に指図される覚えはないと思いますけど。」
「お前相変わらずくそ生意気だな、いい加減にしねぇとキレるぞ。」
「え、敬語使ってるのにキレられるんですか?あー怖。生徒会長様ってそんな偉いんですねぇ~。」
「てめぇな……」
「あーーーーっ!ストップ!!やめてくれ!!弁当が不味くなる!!」
慌てて止めると、櫻井くんの口が尖る。
「だぁって、智くん、こいつが…」
「松潤に『先輩』要らないって言ったのはおいらだよ!だからいいの!松潤も!そんな喧嘩腰に喋んな!分かった?!」
「「…はぁい。」」
拗ね気味に被る2人の返事に、相葉ちゃんが、うひゃひゃ…!と笑い出す。
「は~マジうける(笑)大ちゃん、お母さんみたい!大変だね!(笑)」
「大変だと思うなら助けろやぁ…」
「俺、カノジョと約束してんの!痴話喧嘩に横槍入れるとろくなことにならないから気をつけろって(笑)」
「「痴話喧嘩じゃねぇー!!!」」
相葉ちゃんのカノジョっていうのは、社会人の、しかも男の人だ。
同性愛のカミングアウトをしてくれたのは、仲良くなってまもなくだった。
多分、本人はあんまりそういうの気にしてない。
おいらも最初はビックリしたけど、そういうとこも含めて相葉ちゃんっぽくて。
どっちがどうとか…その、そういうのは…聞いたことがないけど、相葉ちゃんはカノジョっていうから…そういうことなのかな?って。
まぁ…下世話だから聞いてないけど。
「とにかく、俺は大野くん諦めませんからね。」
えぇ…絵のモデルの話、まだ諦めてないの~?←
おいら松潤の真っ直ぐな目を見てるの、恥ずかしくって…断ったのになぁ…。
「ふーん…。まぁ…せいぜい頑張れば?お前はお前なりのやり方で。俺は俺なりのやり方がある。」
…え?
櫻井くんもモデル頼むつもり?!
ふと思い出すのは、昨日の壁ドンで…。
……絶対無理!!!
松潤の目ヂカラも相当だけど、櫻井くんのつぶらな瞳も絶対恥ずかしくなるやつ!!
「2人とも!おいらモデルは取らないからね?!」
声を上げると、「「…何の話?」」と訝しげな顔でまたハモってきた。
相葉ちゃんはケラケラ笑うし……
こっちこそ、何の話?????