イエローペアン2 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


ブラックペアン観たことない方が読んでくださる可能性を、メッセージ頂くまで全く考えてなくてですね…
血が苦手な方もいらっしゃるだろうし、事情はそれぞれですもんね、全然頭回らず知ってる体で書き進めてしまいましたすみません(´;ω;`)
ということで慌てて色々情報調べて書き足しました。
そしたら山のとこまで辿り着かないまま文字数結構使っちゃったw
折角アンケート答えて頂いたのに申し訳ありませんm(_ _)m
山は次で出します。

これでわかりますかね…?
文章にすると余計にややこしい気がしていますw
そして私の解釈間違ってたらすみません(小声)


あと、高階大野はどうしても口調が難しい…!
難しい言葉ばっかり喋ってるから高階になっちゃう。(難しい言葉喋らないという大野さんのイメージ。笑)
成瀬さんあたりを脳裏においてお読みくださいませ…ごめんなさい…。






「最後に、紹介しよう。昨日付で我が東城大学医学部心臓血管外科の講師に着任された先生がいらっしゃる。さ、入って。」


定例の説明会(患者の容態や手術日程、処置の共有会議)の後、松本が後ろの扉へ手を伸ばす。


がちゃりとドアを開く音がカンファレンスルームに響く。


数十人の医師の視線が一斉に注がれる。


コツ、コツ、と歩くその男は、颯爽と白衣を翻す。


手には黒いジュラルミンケース。


「え、あの人…?」


「帝華大から?ウチに??」



その男は、帝華大学の医師だ。


何故ここの医師が男を帝華の医師だと一目見て分かったかと言うと、先日手術の見学に来たからだ。


国立の超一流大学病院の櫻井教授が先日、地方の私立病院へわざわざ足を運んできたのだ。


成功率のかなり低い手術の日をどこからか嗅ぎつけて、敵情視察に櫻井教授がその男を連れてやってきた。


目の前で失敗するところを見に来たのだろうが、それを松本教授が受けてたち、見事に手術を成功させたのだ。



二つの大学がこんなにも敵対する理由は、教授選にある。


帝華大の櫻井教授。


東城大の松本教授。


この二人が今、教授選で一騎打ちとなっている。


半年後に開催される、日本総合外科学会の理事長選。


全国4万人のトップに立つポストを争うわけだ。



理事長選はインパクトファクターという指標のポイント数で争う。


医師は学術誌に論文を載せることで、インパクトファクターを獲得することが出来る。


そのインパクトファクターは現在、松本教授が77、櫻井教授が71と、松本教授が6ポイントリードしている。


その櫻井教授の一番弟子が東城大へ講師として東城大へ来ることはすなわち、スパイ、もしくは松本教授の妨害だと疑われても仕方の無いことだ。



ザワつく室内で歩みを進める男は、壇上に向かいながらちらりと二宮を見る。


先日訪れた際、大野がこっそり覗いたオペ室のモニタールームで、失敗して慌てる医師の元に突然現れ、大金を要求して松本式をやってのけた『オペ室の悪魔』…。


品定めをするかのように半笑いで二宮はその男を見上げる。


その視線にザワっとした気持ちを覚えつつ、男は壇上へ登る。



「本日からお世話になります。僕は帝華大の、大野と申します。よろしくお願い致します。」


ぺこりと頭を下げると再度ザワつく室内。


そんなこと聞こえもしないというかのように、大野はおもむろにジュラルミンケースを開く。


「先日は松本教授の素晴らしい手術を見学させて頂き、ありがとうございました。お返しというわけではありませんが…今日はお土産を持ってきました。」


ケースの中からカチャリ、と持ち上げたそれは、大きな拳銃のような形状だ。


銀色に輝く先端は、細く、長い。


「スナイプです。」


にっこりと大野は笑う。



「な…何かあの形やらしいですね?」


相葉がコソッと隣の二宮に耳打ちする。


二宮は心底気持ち悪そうな顔で相葉をチラ見する。


「お前…死ねマジで。」


「生きます!」


相葉がポジティブに返し二宮が大きく溜息をついている間も、大野は続ける。



「この大学には松本教授がいらっしゃって。松本式でしか救えない命がたくさんある。ですよね?松本教授。」


「まぁ、ね。」


松本は顎を触りながら、満足そうに笑う。


二宮は身体の向きからそっぽを向き、欠伸をしている。


「しかし…救える命に限度がある。このスナイプは、僧帽弁手術の為にアメリカで開発された、素晴らしい手術道具です。これまでの手術よりずっと精密で、開胸もしないから患者への負担が少ない…しかも手術時間が松本式の3分の1。そして、誰にでも使えるんです。」


「つまり…それがあれば、松本式は必要ない、って?」


松本の皮肉を含む声に、大野は困ったように笑い、そして「まぁ。」と曖昧に返す。


ざわ、とその場の空気が最悪なものに変わる。


「ふざけんな!必要ないなんておかしいだろ!松本式がどれだけの偉業か分かってんのか!」


立ち上がり声を上げた医師に、大野は柔らかく笑う。


「あ、いえ、必要ないだなんて思ってはいません。松本教授の腕は素晴らしい。


ただこれを使えば、あなたでも、僕でも…低リスクで、時短で。僧帽弁手術を行えるというわけです。…少しでも早く、そして少しでも多くの命を…救いたいんです。わかってもらえませんか…?」


「……っ」


大野のふにゃっとした笑い方に毒気を抜かれたように、医師が頬を染めて座る。



「そんなの、松本教授への愚弄だ!」


他の医師が再度抗議する。


そうだそうだ、と続く声に、大野は柔らかく尋ねる。


「松本式が使えるのは、教授以外、この世で誰がいますか?」


ちらっと大野は二宮を見る。


隣に座る相葉も、二宮を見ている。


この男が先日松本式をやってのけたのは…恐らく殆どの者は知らない。


そういう空気だと、大野は察知する。


「……松本教授、だけですよね。」


大野の、男にしては綺麗な指が、揃って松本へ向く。


「1人にしか出来ない術式に何の意味があるんですか?少しでも多くの人を救う、それが一番大切なこと。でしょう?このスナイプならより正確に、より負担が少なく手術を行うことが出来ます。」


大野が誇らしげにそれを掲げる。


『松本式』は必要ないと暗に…いや、明確に言われている。


松本は心底面白くなさそうに眉を寄せている。


二宮はそれと逆に、先程と打って変わって、予想外の展開に楽しくて仕方ない様子だ。



そんなにも素晴らしい道具なのであれば、スナイプを帝華大で思う存分使えばいいと思うかもしれない。


しかしスナイプは、大野がアメリカから持ち込んだもので、日本ではまだ症例がなく、国からの認可は下りていない。


なので国立の帝華大では自由に使えないのだ。


私立病院ならば、その病院の倫理委員会と患者が許可すれば使用が許される。


つまり…


「つまり大野くんは…スナイプを使える実験場所を確保しつつ、俺の救うはずの患者を根こそぎかっさらいに来たってことかな?」


松本がのろりと立ち上がり、微笑を携えゆっくりと口を開く。


「いえ、そんな。あなたの負担を減らしに来たんですよ。2ヶ月先まで詰まっている松本教授の手術待ちされてる患者様を、救える道具なんですから。」


大野は何度目かの笑顔を松本に向けた。