【Side 潤】
「松本っ!!!!」
「何、ビビるわ静かに開けてよ。」
勢いよくスライドさせてガターンッとドアを鳴らしたのは言うまでもなく翔くんだ。
「悪い!今から俺会議なんだ!抜けられねーんだよ!!頼むから二宮達を阻止してくれ!!」
「はぁ??」
「いいから!ハンバーグ食いに行くっつってたから、アイツらの行動範囲で行きそうなところピックアップしといた!ここ見て回ってくれ!」
汚い字で書かれたメモを受け取る。
裏を見ると、女生徒からのラブレターらしきものの切れ端。
おいおい……。
「…何で?」
「智が危ないんだよ!頼む!!!お前しか頼れる奴いねぇんだ!!!うわっやべもう始まる!じゃぁな!!」
いや、何で俺に頼ってんの?って意味なんだけど…
バタバタと飛び出していったなで肩の背中を呆然と見つめる。
翔くんが大野を俺に任せるって…ありえなくね?
まぁ……
俺にとっては美味しいことこの上ない状況だ。
「…任せといてよ。」
ニヤリと呟く俺を、翔くんは知る由もないわけで。
「うわー、松本先生のお部屋も広いねぇ。」
「思ったよりはいいとこ住んでんじゃん。」
「お前は一言余計なんだよ!」
二宮の頭をべちんと殴る。
校内暴力!と騒ぐ二宮を無視して紅茶を用意する。
「ダージリン平気?」
「…?」
「ちょっと苦めの紅茶。」
「おいらね、苦くないのが好き…。」
「了解(笑)」
「ごめんね先生〜…」
ダージリンをしまい、アッサムの缶を取り出す。
少し考え、冷蔵庫を開け牛乳のパックを手に取る。
仕方ない、可愛いおこちゃま大野には特別にロイヤルミルクティーにしてやるか。
「あ、俺も。ミルクティーじゃなくて、ロイヤルミルクティーね。」
俺の手に持つ牛乳を見て二宮も便乗してきた。
ったく!
お前は牛乳割りでも飲んでりゃいいのに!
…ってわけにもいかず。
溜息をつきながら、小鍋にトクトクと牛乳を注いだ。
まぁ別に、もてなす行為は嫌いじゃない。
「お待たせ~。」
カチャ、とソーサーごとテーブルに置くと、大野がにっこり「ありがとう」と笑った。
「…いー匂い♪」
うん、今日も変わらず可愛い…。
「あざーす。つーかこれノリタケ?男の一人暮らしに普通ティーカップのセット置いてある?引くわー(笑)」
うん、いつにも増して憎たらしい…。
「…で?何でキスの練習とかわけわかんないこと計画してんの?」
「おいら、ちゅーのプロになりたいの!」
「これの一点張りなんだよ。」
二宮がズ、と啜りながらため息をつく。
因みに大野は熱いからスプーンでふーふーしながら飲んでいる。
ほんと、子どものようだ。
「大野は…上手になりたいんだね?」
「そう!おいらすごく上手になりたいの。」
「俺も。ブラッシュアップしたい!」
キスのブラッシュアップって何だよ、と心でツッコミを入れる。
しかし…何かよくわかんねーけど、これは大きなチャンスじゃないか?
まさか大野側からねだってくるなんて、願ってもないことだ。
携帯の電源をこっそり落とす。
誰かに邪魔されたくはない。
「じゃまず…どっちからする?」
「おいr「俺!!!」
大野を押し退けるように二宮が手を上げる。
そう来ると思ったよ。
思わずニヤリと笑う。
俺はさ、好物は後に取っとくタイプなんだ。
「じゃぁ、おいら見とくね!」
「え、そこで?(笑)」
じーーーっと俺らの間で観察する大野の距離感が可笑しくて、笑ってしまう。
ちけぇよ。
気になるわ。(笑)
「まずね、最初は短いキス。」
ちゅ、と二宮の唇に軽く当てる。
ビクッと肩が跳ね、目を強く瞑っている。
ちらりと下を見ると、正座して拳を握りしめて微かに震えている。
…緊張し過ぎじゃね?
「相手が緊張してる時はね、大野。」
「し、してねぇ…んっ?!」
後頭部を両手で支え、長めに押し当てる。
決して舌は入れず、少しずつ角度を変えながら、柔らかさを堪能するだけのようなキスを続ける。
「───ッ」
最初こそ手をバタバタとさせ抵抗していた二宮も、諦めたようにだらりと力を抜く。
な?と言わんばかりに大野にウィンクすると、目をキラキラさせながら「おぉー…」と小さく呟いた。
「相手の状況によって変えることは大事だよ。」
「勉強になる!」
二宮はぐったりしている。
はええっつーの。
「次はもうひと段階進んでみようか。」
「えっ!?」
「うん!!」
二宮と大野が同時に声を上げ、顔を見合わせる。
「ディープ キス。」
舌をべ、と出してみせると、二宮がごくりと生唾を飲み込む。
大野は…相変わらず楽しそうに目を輝かせている。
こっからだ…
一気に俺の空気に飲み込んでやる。
「二宮、目ぇ瞑って……。」
半開きの 口のまま、ゆっくりと近付く。
案の定横一文字に結ばれた唇と、ぎゅっと固く閉じられた目。
こいつ…ぜってぇ童 貞。(笑)
「…っ!」
唇ごと 食むと、二宮が驚いて跳ねる。
角度を変えながら、そして少しずつ 舌 を使いながら音も立てていく。
ちゅっ、 く ちゅ、ちゅ……。
ちらりと横を見ると大野がガン見しているわけで。
「ふ…っ、ん…、……っ」
二宮も、完全に勃 ってるし。
あ、やべぇ。
俺まで結構興奮 してきちゃったな…。
いっそ3人で……?
いいね、嫌いじゃない。
二宮さえオトせば、いける気がする…。
自然に上がる口角を隠し、こっそり笑った。
初めて末ズ…(笑)