珍しく携帯が震え、時計を見ると22時。
ゲームの手を止め、通知を確認する。
大野さん?
慌てて開く。
『俺は言ったぞ。次はお前の番な。』
酔ってるのか、頬の赤い翔ちゃんとのツーショットの添付。
これは…部屋?インテリア的に翔ちゃんの家っぽい。
にしても大野さんの微妙に引きつった顔も気になるけど、この翔ちゃんのにやけ顔…。
まさか、成功ってことですか?
「まじかよ…」
何をショック受けてんだか。
俺、ちっちぇーなぁ。
『了解。えっち、下手くそだったら戻っといで。』
手早く打って送信する。
ま、こんくらいはね?
意地悪言ってもいいでしょ?
俺なりの祝福だよ。
おめでとう智。
幸せになって。
少し考えて、相葉さんの連絡先を探す。
『明日、相葉さんち行っていい?』
親指が送信ボタンの上で止まる。
笑える。
指先がちょっと震えんの。
こんな何百回も言ってきたセリフなのに。
思い切って画面にそっと降ろす。
俺の躊躇いなんて知らないように、すぐに送信済みとなる表示。
気持ちを落ち着かせるため、ゲームの世界に戻った。
しばらくして、今度は着信音。
まさかと思って慌てて手に取ると、そこには見慣れた四文字。
妙に緊張してしまうけど、出ないわけにはいかない。
「…はい。」
「ねぇー、いつも電話なのに何でメールなわけー?!」
開口一番何だそれ?
間延びした声に思わず笑って緊張が解ける。
「電話する気分じゃなかったのかもとか思わねぇのかよ、お前は?」
「そーなの?ならますます電話しなきゃね!」
「はぁ?俺の言ったこと聞いてた?」
「うん!電話する気分じゃないって、落ち込んでるってことでしょ?だったら元気にしてあげないとね!ニノ専用、元気印の相葉くんが!」
ああ、もう、このバカは。
何でこんなに可愛いんだろう。
何でこんなに愛おしいんだろう。
この人は俺の心をこうやって鷲掴みにする。
きっと、本人は無自覚だけど。
「…じゃ、元気にしてよ。」
「うん、してあげる。」
そう言うや否や、部屋に鳴り響くチャイム。
誰だ?
インターフォンを見るとエントランスじゃなく部屋の前のようだ。
端に服だけ映ってるから、誰かはわからないけど…合鍵を持ってる人ってことになるわけで。
まさか…大野さん?
「あ…ごめん、誰か来た。」
「いいよいいよ、そっち出てあげて。またね。」
「はーい、また…。」
後ろ髪を引かれる想いで電話を切り、足早に玄関に向かう。
ガチャっとドアを開けると、会いたくてたまらない大好きな人がいて、俺は息を飲んだ。