ある日、朝起きるとLがすごく真面目な顔をしていました。


「? らっくんおはよー」


「おはようママ……あのね、らっくんね、ちょっとおそらにいなくなるの」


「……え? ……っていう嘘でしょ?w もー、ほら、ご飯食べよ?」


「んーん。らっくんおそらいってくるの」


……え」




 Lは天使として生きないと自ら決めた子です。

 それでも1年に2回は「空から呼ばれる」らしいのですが、今まではみんなでその召集を蹴ってきました。つまり本人の意志で行くか行かないか選べるということ。

 今回はL自身が「行く」と決めたということです。




「え、なんでなんでらっくんいつも行かないのに無理しなくていいってことりもいつも言って……(Lが自分で決めたんだから無理してるわけがないと気づいた。ことりの意見を押し付けちゃいけない)……ごめんね。どうして行こうと思ったの?」


「え、えっとね、うんとね……うー」


 説明は難しくてできないのか、Lは助けを求めるようにTの方を見ました。

 スマホを弄っていたTはチラとこちらを見ると(スマホ持ってたんだ初めて見た)、またスマホに目を戻しつつ1枚の紙を取り出しました。


「1週間お試しで仕事を体験できるって企画のチラシが来て。お試しだから記憶も消されないんだけど、それならやってみたいってらっくんが言うから予約した〜」

(天使の仕事を始めると育てた家族たちの記憶が消えるシステム)


「もう予約してるんかい。でもそれなら納得だわ。ほんとごめんねらっくん、やりたいから言ったんだもんね」


「いいよー」


「ありがとう。……この時間に言うってことは、もう始まる感じ?」


「うん、7時からだね」


「マジでもうすぐじゃん(現在6:30)。よし、やるって言ったからにはちゃんとやってくるんよ! 頑張れ、はちょっと無責任な言葉だけど……ずーっと応援してる、ずーっとらっくんのこと考えて、らっくんが帰ってくるの待ってるからね!」


「うん! らっくんもママと、パパと、おじさんと、えと……あ、Mのこともかんがえてる!」


w

「あれ、忘れかけられてた?」


「頑張っておいでね」


「うん!」


「じゃ、いってらっしゃい!」


「う……そのまえにみんなとぎゅーしたい……」


「うん、ママもしたかったw


 1人ひとりとハグをしてからLは家を出ました。




「これから1週間らっくん無しで生きてけるのかなあ」


「そこは頑張れよ。らっくんも頑張ってるんだから」


「はあ……まあそうだね、頑張るかあ」






 Lがいなくなって1日経過。


「あーそうだったらっくんいないんだった あーあーあー!!!」


「www だいじょぶそ?」


Tはまだ平気なんね」


「うん、だって永遠の別れってわけでもないし。らっくんの世話なんて仕事のサブクエみたいなものだったし」


「それはごめん」


「いいんよ〜。だから1週間待つくらいなんとも〜」






 Lがいなくなって2日経過。


 Tと目が合って出た言葉。



「2人落ちたな」


「だって……逆になんで平気なんだよお前は! 血も涙もねえのか!」


「あるわ。けどたった2日会わないだけでそこまでなるか普通?」


「2日も、だよ!」


「そーだよこんだけ長くらっくんに会わないことなんてなかったもん!」



「……」






 Lがいなくなって3日経過。



3日目でこれって……7日目どうなっちゃうんだろ……」


「ほんとにね……」


「壊れてるんじゃね?」


「壊れーかけのーことりー♪ あはははは!」


「あはははははは!」


「もう手遅れか……」






 4日経過。

 ふと見ると寂しそうな顔で体育座りをした Lがいました。

 でもLがここにいるわけない。そもそもなんとなく雰囲気が違う。


……T?」


「せえかーい(笑顔&低い声)」


「えー久しぶりに変身してるの見たー」


「うん、もうね、長らくらっくん吸えてないのに耐えられなくて」


「あー……そんな猫を吸うみたいに」


「自分で(らっくんに)なって紛らわそうとしたんだけどね〜……無理だったわ」(元の姿に戻る)


「まあ本物がいないことにはねえ……Tが先に限界来たな」






 5日経過。


すーはー すうううううはあああ


T? 何吸ってんの?」


「あ、ことりも吸う? この、」


 Tが持っていたのは白い糸の束みたいなもの。


「らっくんの抜け毛」


「まじかよお前。吸うけど。てからっくんも髪の毛抜けるんだ……(すーはー)


「いつも髪梳かしてると数本抜けるよ? ことりだってそうでしょ? それをなんとなーく集めてたんだけど、まさかこんな使い方をする日が来るとはね。集めててよかった」(すーはー)


「集めてるってやばい奴じゃん。でも今はありがとうとしか思えん」(すーはー)


「いえいえ〜。抜けた髪でも神聖オーラはちょっとあるから売るなり掃除に使うなりしようと思ってたんだけどねえ、こんだけ吸ってたら効果なくなるだろーね。まあ緊急事態だからしゃーなし」(すーはー)


「ですな」(すーはー)


「おい変態ども他所でやれ」






 6日経過。



「限界突破してんな」



「え」


「もういちいち反応する元気すら消えてるわ……」


「……(虚無)」


「お、おう……でも、ほらあれだよな。こうやってあれこれ心配して寂しくなってるのは親だけで、子どもは案外元気にやってたり……」


「あー、そうだろうね」


「……(虚無)」


「……修学旅行 行ってるみたいなもんだろ? 親がそんな顔してちゃあ らっくんこれからどこにも行けねえぞ?」


「……(虚無)」


(TMが珍しくTLの親って言ったのに無反応だな。いつもなら「じゃあ俺らを夫婦って認めるんだー?w」とか言うのに……そこまで気が回せてないのか……)






 7日経過。


「よっしゃあと1日でLと会えるぞー!」


「いやっほおおおい!」


「よかったな」


「ねーねーKー! あと1日だよー! あと1日でLと会えるよー!」


「くく、そうだな、楽しみだ」


「やったっ! やったっ! やったっ!」


「あ〜〜〜早く会いた〜い!!!」


「会いた〜〜〜い!!!」


 つづく