松山高校新聞部 ――朝日新聞から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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 昨日(20日)の朝日新聞の教育面「キャンパス発」に、埼玉県立松山高校新聞部が紹介されていた。

 松山高校新聞部は、全国高校総合文化祭で、2年連続最優秀賞を獲得している。

 号外も含め年間約100号の新聞を発行している。

 

 この高校新聞部界の頂点に立つ松山高校新聞部は、2019年には部員がゼロになり廃部の危機にあった。

 21年に顧問に就いた矢野悠季教諭が自ら勧誘して部を立て直し、現在の部員数は130人を超える。

 

 記事によると、矢野教諭はなぜこんなに人気なのか「よくわからないんです」と語っている。

 生徒を惹きつける魅力がどこにあるのか知りたくて、インターネットで調べてみた。

 松山高校新聞部の大躍進はテレビニュースなどでも採り上げられていた。

 矢野教諭が部を再興するために考えたことが、二つあった。

 

 ひとつは、役割分担をすること。

 部員は、取材班ライター班写真班編集班の4つの班による分業制をとっている。

 生徒ひとりひとりが、自分の得意分野で力を発揮できるのである。

 

 もうひとつは、生徒自身の興味にまかせること。

 学校新聞というと、普通は学校行事の紹介に偏りがちだが、松山高校新聞松山高校と全然関係のないスポーツ選手や作家にも取材して記事にしている。

 生徒たちは、自分の興味関心に従って、高校新聞部員の立場を利用してさまざまな外部の世界を取材できる。

 松山教諭は、生徒が興味を持って取材することに決して反対しないという。

 

 読んでいて、うらやましくなった。

 わたしの高校時代にこんな新聞部があったら、わたしは絶対に入部していただろう。

 

 この新聞部には、高校部活動の理想がすべて詰め込まれているように思える。

 生徒たちは、大人に指示されるのではなく、自分たちの主体性で行動している。

 取材の過程で、普通の高校生が知ることのできない、大人の世界を知ることができる。

 自分の伝えたいことを、自分の言葉で伝えることができる。

 自分たちの努力の成果が、全国大会最優秀賞という形で評価される。

 

 世間では新聞離れが進んでいる。

 情報はインターネットで簡単に手に入るし、自分が伝えたいこともSNSでいくらでも書くことができる。

 新聞の存在価値を知らない人が多い。

 

 しかし、インターネットでシャワーのように浴びせかけられる情報と、自分で取材した情報とでは信頼性が違う。

 SNS上に無批判無制限に垂れ流される情報と、新聞で多くの人の手と目を経て公表される情報とでは信頼性が違う。

 新聞好きのわたしは、新聞がインターネットにその役割を奪われつつある現状を、非常に危惧している。

 松山高校新聞部の活躍に、希望の光が見えた。

 

 しかし、この松山高校新聞部の活躍は、埼玉県内でもあまり知られていない。

 新聞を作りたいから松山高校に行きたい、という生徒を聞いたことがない。

 もったいないことである。

 機会があれば中学生の生徒たちに教えてあげようと思う。

 受験案内などが採り上げない、このような学校の魅力をもっと知ってもらいたい。

 というわけで、このブログでも紹介してみた。

 

 子どもたちが新聞に触れる機会が少しでも増えて欲しい。

 新聞部の活動が、日本中のすべての学校で盛んになることを期待している。