1文字の略語 ――街のB級言葉図鑑から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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 今日(20日)の朝日新聞土曜版be on Saturdayの、「街のB級言葉図鑑」は、1文字の略語を採り上げていた。

 飯間浩明氏が渋谷の駐車場で見た「ハチポ」という看板について、この「ポ」がすぐに「ポイント」だと分かったことが不思議だという。

 飯間氏は、「ポ」1文字でポイントを表す例がいつの間にか増え、おなじみになっていた、と述べ、同様の例を挙げている。

 東京メトロの「メトポ」、東武グループの「トブポ」、三鷹市の「みたポ」、泉佐野市の「さのぽ」、広島広域都市圏の「としポ」などである。

 カタカナ1文字で表す略語として、「パーティー」「パ」があることも指摘している。

 「タコパ」(たこやきパーティー)、「ピザパ」「ギョーザパ」など。

 

 言われてみれば、1文字まで縮めても元の言葉が分かるのは不思議である。

 「パ」に関しては、「パフォーマンス」の略の場合もある。

 「コスパ」「コストパフォーマンス」の略、「タイパ」「タイムパフォーマンス」の略であるが、「パーティー」と間違えることはない。(注:日本大学アメフト部の寮では、「タイパ」は「大麻パーティー」の略である。)

 なぜ1文字で通じるのか。

 1文字に省略できる語彙に法則性がないか、考察してみた。

 以下はわたしの考察である。

 

 「カード」は、「カ」と省略できる。「クレカ」(クレジットカード)、「テレカ」(テレフォンカード)など。

 「ペーパー」は、「カンニングペーパー」「カンペ」と略されるが、「トイレットペーパー」「トイぺ」とは略さない。

 

 パ行の音は、1文字に略されることが多い。

 「ブラッド・ピット」(アメリカの俳優)→「ブラピ」

 「オーケストラピット」「オケピ」

 「コピー&ペースト」「コピペ」

 ※「プ」と略される言葉は思いつかなかった。「算数プリント」「算プリ」「誕生日プレゼント」「誕プレ」と略すが、「算プ」「誕プ」とは言わない。「クリスマスプレゼント」は、「クリプレ」とさえ言わない。

 

 地名は、1文字に略されるものと略されないものがある。

 「南アフリカ」「南ア」と略されるが、「南フランス」「南アメリカ」はそれぞれ、「南仏」「南米」である。

 「南浦和」「南う」「南浦」とは言わないし、「南越谷」「南こ」「南こし」とも言わない。

 

 「ポテトチップス」「ポテチ」と略されるが、「ポテトサラダ」「ポテサ」ではなく「ポテサラ」である。

 「ファミリーマート」「ファミマ」と略されるが、「ファミリーマートのチキン」「ファミチ」ではなく「ファミチキ」である。

 ※ローソンのチキンは「からあげクン」である。「ローチキ」とは言わない。

 

 「大学入試共通テスト」「共テ」と呼ばれているが、「センター試験」「セン試」「センタ試」とは呼ばれなかった。

 

 思いつくものを挙げてみた。

 こうして見てみると、1文字に省略する語彙に法則性はなさそうである。

 飯間浩明氏が言うように、「おなじみになっていた」と考えるのが適当である。