朝日小学生新聞に、「おしえて!○○○のしごと」というコーナーがある。
小学生にあまり知られていない仕事を紹介する記事である。
どの仕事にも、やりがいを感じて頑張って働いている人が登場し、子どもたちが将来に希望を持てる素敵な記事である。
小学生の将来なりたい仕事というと、サッカー選手やユーチューバーのような楽しくて儲かる憧れの仕事か、先生や電車の運転士のような身近でなじみのある仕事が定番である。
世の中には実に様々な仕事があり、それぞれの立場で世の中を支えているのだが、小学生にはあまり知られていない。
そんな仕事を、「おしえて!○○○のしごと」は紹介してくれる。
以前の記事では、左官の仕事を紹介していた。
将来左官屋さんになりたい、という小学生はほとんどいないと思うが、実は高度な技術と美的センスを要するかっこいい仕事である。
記事を読んで、なりたい!、と思った小学生もいるかもしれない。
こういう仕事にどんどん光を当てて欲しい。
今日(25日)は、消防音楽隊の仕事を紹介していた。
東京消防庁総務部総務課音楽隊に属し、消防の式典、春と秋の火災予防運動、地域のイベントなどで演奏活動を行う仕事である。
紹介されていた鈴木詩織さんは、クラリネットを担当している。
この仕事に就いた経緯がおもしろい。
父親の仕事が消防官で、子供のころからかっこいいと思っていて、大学卒業後に2年間自衛隊で働いたあと東京消防庁に入庁した。
消防学校と消防署での、それぞれ6か月の初任教育を修了したあと、江戸川消防署に配属された。
つまり、普通の消防署員として就職したのである。
入庁の4年後、異動で音楽隊に配属された。
中学と大学時代に吹奏楽部で活動していた経験により抜擢されたのである。
そもそも、消防音楽隊というのは不思議な仕事である。
消防士を目指している人は、消防署で音楽を演奏したいとは思わないだろう。
音楽家になりたい人は、消防署で働こうとは思わないだろう。
音楽経験者が消防署に採用されて、成り行きで就いたような仕事である。
鈴木詩織さんも、「人を守る仕事をしたい」と思って消防署に就職したが、現在、火災現場で消火や救助の仕事をすることはない。
それでも、消防音楽隊という仕事に誇りをもって働いている。
普通の消防士になっていたら、小学生新聞で採り上げられることもなかっただろう。
仕事というのは、そういうものである。
子どものころになりたいと思っていた仕事に、大人になって就ける人はごく一部である。
夢見た仕事に就けても、それが幸せだとも限らない。
大部分の人は、目指していた仕事には就けない。
しかし、成り行きで就いた仕事にやりがいを見つけ、世の中の役に立ち、自分を輝かせることもあるのである。
子どものうちは、自分の何が将来の役に立つかなんてわからない。
鈴木詩織さんだって、中学生で始めたクラリネットが消防署での仕事につながるとは思っていなかったであろう。
子どものうちはいろいろな可能性の種をたくさん蒔いておくのがよいようだ。
習い事でも部活でも遊びでも、その経験が自分の財産になる。
子どもは可能性の塊である。
その可能性の芽をつぶすことがないように、力を添えてあげるのが、大人の役割である。
わたしの教室の生徒たちは、将来どんな大人になって輝いてくれるか、楽しみである。