珠洲市の原発計画 ――朝日歌壇から―― | ことのは学舎通信 ---朝霞台の小さな国語教室から---

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 朝日歌壇では、能登半島地震を詠んだ歌が毎週数多く掲載されている。

 その中で、今週わたしの目を引いたのは、馬場あき子氏選第4席の、この歌である。

 

この珠洲に原発すすめいし国に伏して詫びよと能登びと言わず

                  (水戸市 中原千絵子)

 

 1975年に北陸電力珠洲市原発建設を打診した。

 翌76年、北陸電力中部電力関西電力が合同で出力1000万kWの大規模原発を計画していることが発表された。

 通商産業省資源エネルギー庁地質調査を開始した。

 翌年、「地盤が相当固く、原発立地には別段の支障がない」という調査結果が市長に報告された。

 80年代から反対運動が盛んに行われたが、市長選では毎回推進派が当選した。

 2003年12月、電力3社は市に計画の凍結を申し入れた。

 以上が、珠洲市原発計画のおおまかな経緯である。

 

 能登半島では2007年3月にマグニチュード6.9(珠洲市、震度5強)、2022年6月にマグニチュード5.4(珠洲市、震度6弱)、2023年5月にマグニチュード7.6(珠洲市、震度6強)の地震が発生している。

 そして今年の元日のマグニチュード7.6(珠洲市、震度6強)の地震である。

 今回、輪島市西岸では4mの隆起250mの海岸線の移動が見られた。

 原発を建設していたら、フクシマに並ぶ大惨事になっていたかもしれない。

 

 現在、新聞やテレビなどのメディアでこの原発計画を採り上げているものはほとんどないようである。

 すでに過去のことなのであろう。

 まだ復興も進んでいないのに、過去の話を蒸し返す必要もない。まずは復興である。

 しかし、今回大きな被害を受けた珠洲市について、かつて通商産業省資源エネルギー庁「地盤が相当固く、原発立地には別段の支障がない」という報告を出していたことを、わたしたち日本の主権者は記憶にとどめておくべきである。

 フクシマの過ちは、繰り返してはならない。

 

 この中原千絵子さんの歌がなければ、わたしは珠洲市原発計画があったことすら知らなかった。

 朝日歌壇の読者でよかった。

 朝日歌壇には、反戦反核反原発反体制など、社会批判の歌が多い。

 文芸面でありながら、ときには社会面や国際面よりもジャーナリスティックである。

 朝日歌壇投稿者の方々の世の中を見る目を、わたしはとても頼もしく思っている。