今日も日曜日の朝日歌壇からです。
「人は死ぬ」と病死事故死もあるけれど戦死はあんたのせいだプーチン
茨城県 樫村好則
ここにも、歌の力を感じます。
朝日新聞の記事では、「戦死はあんたのせいだプーチン」とは絶対に書けません。短歌ならではです。
この日の朝日歌壇には、ロシアの戦争を詠んだ歌が7首ありました。
暗き部屋に老女が独り寒いの、と震えておりぬ これが戦争
松戸市 遠山絢子
こんな歌を読むと、ウクライナの人々のために何もできない自分がもどかしくなります。着々と戦争に向かって準備を進める自分の国に苛立ちを覚えます。何とかしなければならない。
戦争の悲惨さや愚かさを31文字で伝える短歌は、立派な反戦運動です。
同じ短歌欄に、こんな歌もありました。
幾人が拘束さるる罰さるるかの国なれば今朝の歌壇は
松山市 宇和上正
今のところ、わたしの国では「あんたのせいだプーチン」と詠んでも拘束されることも罰されることもありません。
「かの国」の人が、言いたいことを言えるようになるために、言いたいことが言える国に住んでいるわたしたちは、声を上げていかなければならない。黙っていたら、この国もかつてのように、言いたいことが言えない国になってしまうかもしれません。
宇和上正さんの歌に対する評で、選者の永田和宏氏は言っています。
宇和上さん、「かの国」では朝日歌壇など格好の餌食になるだろう。でも心配無用、まず選者が拘束される筈。
朝日歌壇には、選者にも投稿者にも強い覚悟があります。
わたしも、傍観者でいるわけにはいきません。
言葉が力を失わないように。国語に携わる身として、わたしにはまだまだやらなければならないことがあります。