側澤洞道前編のつづき
近づいてみる。
土砂は柔らかく、踏むそばから崩れていく。
コンクリート巻の状態はいい。こんなに人里近いのにいたずら書きもないのも珍しいな。
奥の砂山をよいしょと登り、隧道内に入る。
これは砂山の上からコンクリアーチを見下ろした写真。本当に土砂が柔らかい。この後アーチの上にも登ったけど、うっかりすると私がこの隧道にトドメを差しかねないほど、ばんばん崩れてくる。
砂山をおりて、見上げてみる。
さて、東側はどうなっているのか。やたら暗いし、見ない様にしてたけど、それでは終われない。恐るおそる振り返る。
暗いけど明るい!(どっちだ)
完全閉塞はしてない・・・!?
・・・と、言っていいんだよね?坑口は終わってるっぽいけど・・・西側と同じく、坑口の上に穴が開いてしまっている。
東側も土砂はふわふわだ。現在進行形でこの穴からも土砂は流れ込み、崩れ続けている。
坑口は…暗い。これが実際に私が見てるもの。
まっくらに感じるけど、少しちかちかしてる気もするなぁと、カメラをいじくる。ああ、カメラのテクニックなんてなくってよ。自動運転の自動車よりも全部自動でやってくれるカメラが出来てほしい。なんというか、念じたところにピントが合って、想像した明るさで撮れるやつ。
外からも確認してみようと、上部の穴からよじよじと這い出る。
やばい。これはやばい。本当にトドメさしそう。自分が動くと、そのたびに自分の体積の倍くらいの土砂が動くのだ。ひえー。
↑これはなんとか這い出たところ。外から見ると思いのほか穴が目立たない。
そして、またカメラの色が変ですが(汗)この写真の真ん中あたりが坑口の明り部分だと思われる。外からみたら、わかんないなこりゃ。
そして、隧道から少し離れて。
・・・隧道どこ?
パッと見では隧道はもう確認できない。
通行止めの看板も空しい。
隧道内に戻ってきた。
真ん中に立って、左右の坑口を眺めてみた。
かすかに流れる風は130年前、ここに側澤洞道が開鑿されてから吹くようになった風。きっともうすぐ風は止まる。
ちょっと寂しいけど、この風を味わえてよかったな、とそう思った。
おわり。
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今尾恵介責任編集 地図と鉄道
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