昨年正月から読んだ「ひかりの魔女」3部作がとても面白くて奥が深い、よい物語で、
ひかりの魔女 | 寿建設 社長ブログ (ameblo.jp)
その後も著者である山本甲士さんの小説は結構読ませていただいている。
「ひかりの魔女」は一気に読んでしまったのだが、次はもったいぶりながら昨年中に間を空けながらやはり3部作をすべて読んだのが「迷犬マジック」というシリーズ。
短編集なのだが、それぞれの物語の主人公はなんとなく人生に行き詰まっていたり何らかの問題を抱えた日々を送っている。
そこにこの表紙に描かれた風体の犬がいつのまにか現れて、言葉は交わせないのだが導くかのようにプラスの方向に変えていってくれる、というのが大枠の内容だ。
まさにその名の通り、「マジック」のように。
過激な事件とか、とんでもないサイコパスが出てくるような、決して激しい物語ではない。
だが一つひとつのエピソードや登場人物の行動、そしてその中で変わっていく考え方などがとても自然であり、共感できるのが著者の特徴だと私は認識している。前にも書いたがそこに積極臭さや傲慢さもまったく感じない。
特に「3」では、それぞれの話の主人公の人生が交錯したりするのもまた面白かった。
誰かの行動を厳しく批判したり、攻撃したりする言動があまりにもネットニュースで飛び交っている。あまり見たくはない内容でも、パソコンを開いているとなんとなく目に飛び込んでくる。
もちろん意思をもって声を上げたり、反論することはまったく悪いことではないが、そのような言葉が全体の中を占めすぎていると気持ちがよいものではない。
この物語のような、人間の心をほっこりさせる刺激は少ないが良質なも話も時々頭の中に織り交ぜていかないと、感覚のバランスがおかしくなるような気がする。
今後「豊さ」を目指すなら、そうした積み重ねがとても大事に思えてならない。