年末30日にPCR検査で陽性の診断を受け、ちょうど購入していた故・中村哲先生の関連本にどっぷり浸かったのだが、
その中で特に多くを占めたのが、先生が事務所に置いてスタッフに読むのを勧めていたという白土三平さんの漫画「カムイ伝」全15巻であった。
以下、参考動画。
漫画とはいえ、内容がびっしりと濃い作品なので、読み進めるのに小説並に時間がかかるが、非常に面白く、考えさせながら読ませていただいた。
全15巻、このボリューム。あえて例えるなら、スターウォーズシリーズ全9作を連続して観た以上のスケールと濃厚さがあったと私は感じた。
この漫画、一言でいうならいったいどう説明すればよいのだろう。
Amazonの紹介文は、
江戸時代の厳しい差別社会の中で、自由を求めて戦う人々を描いた大作!
Wikipediaでは
江戸時代の様々な階級の人間の視点から重層的に紡ぎ上げられた物語となっている。
とある。
江戸時代といえば私の中では平和で華やかな時代というイメージが強いのだが、この漫画を読み始めるとすぐに強烈な差別社会でもあったことがよく分る。
特に「非人」とよばれる階級にいる方々の生活に強いスポットを当てて、激しい差別の中で生き方を模索していく様子をそれはそれは生々しく描かれているのだ。
万物平等という考えの現代とは恐ろしいほど異なった時代だが、その時代の成立の理由を納得せざるを得ない、というか受けとめるしかない物語とでもいおうか。
それでも人はわずかな可能性を突破してでも幸せを求めるのである。その執念に圧倒されるものを感じた。
戦争、干ばつ、貧困など平和からはほど遠いアフガニスタンという国の状況を正面から受け止めて何とかしようとしていた中村先生が、この本を関係者に勧めていたのは納得できるし、先生が水路づくりのヒントになったのではと思わせる場面もあったのが印象的であった。
長時間に亘って全15巻を読み終え、早くも半月が過ぎたが、今もなお「自分にはいったい何が出来るのだろう」という自問自答が続いている。
それがまだ未消化で、続きである「第二部」「外伝」にはまだ手をつけられない。
名シーン、名セリフ多数ある中、私が思わずスマートフォンで写真を撮ったのがこの言葉。
だが問題はどうなるかではなくどうするかだ……
ご近所でご希望の方がいらっしゃれば、中村先生と同じ思いを持ってお貸しいたします。