11月に入ると、降雨量が増える「出水期」(6~10月)から川の水が少ない「渇水期」と呼ばれる期間を迎える。
公共工事においては出水期には河川の水位に影響を受ける作業は出来るだけ避けて渇水期の施工となるようなルールがあって、工程も時期に応じて計画される。
振り返ると今年は6月や7月頃にゲリラ豪雨での増水がたびたびあったが、それ以降は恒例ともいえる台風接近による増水がまったくなかった。3年前の台風19号の被害や対応を思いだすと大雨の被害はもうコリゴリだが、気温の上下はあったものの大雨のリスクは不思議なほどなかった。
「渇水期」となる11月を迎えるともう安心、と思いがちだがそうとも言い切れない。
自然はいつでも予想外な事象を招くことを、この10年何度経験したことだろう。
私が社長になって間もない2006年12月の年の瀬、関東から東北にかけて冬の大雨があった。
インターネットで当時の記録を調べると、茨城県日立市では12月の1日の降水量としては観測開始以来最も多い降水量98.0mmを記録していたそうである。
福島市の中心を流れる阿武隈川も増水し、当時河川の中で施工中だった橋脚補強工事であわや水没の事態になった。
そして時に最大の影響を受けたのが、埼玉県春日部市で施工していた外郭放水路のトンネル覆工工事。
「外郭放水路」とはまさに増水による水害を軽減するために中小河川の洪水を地下に取り込んで江戸川へと流すトンネルで、
https://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/gaikaku/
仕上げのコンクリートを打設する仕事を施工中であった。
渇水期のうちにすべての施工を終えるためかなり厳しい工程計画の中、セントル(移動式型枠)をセットしていよいよコンクリートを打設というタイミングでこの大雨となったのだ。
河川水位が上昇したため、洪水を防ぐために巨額のお金を投じて造られたこの施設を使わぬわけにはいかず、施工中の状態のまま現場から全員引き上がり、溢れそうな川の水が坑内に投じられセントルを含め現場はすべて水没した。
これにより渇水期の施工は不可能となって急遽中断(その代わり解体や清掃作業を実施)、作業は翌年に繰り越されることになった。当社にとって忘れられない出来事である。