予想最高気温が37℃の日曜日、自虐的に外を歩こうと思い付いて朝食後ほどなく自宅を出た。
福島市の市街地を広々と流れる阿武隈川であるが、ちょっと南の上流では「阿武隈渓」と呼ばれる渓谷となっており、そこに「蓬莱岩」と呼ばれる美しい奇岩がある。
20年近くその姿を見ていなかったので、散歩がてら見に行くこととした。
自宅から車で15分程度の上蓬莱橋の近くにある駐車場から遊歩道が整備されていたことを覚えていたのでそこからスタート。
こちらが入口に立っていた遊歩道の地図看板。終点から反対岸に蓬莱岩が見れるようだ。
総延長2,100m、高低差40m。暑さの中であるがちょうどいい運動であろう。
歩き始めてすぐに意外な掲示物が目に入った。
「木橋が破損しているため一部区間は通行できません。」とある。
これだけでは詳しいことは分からないが、せっかく来たので行けるところまででもというつもりで歩き出した。
一気に降りて川沿いに歩くものだと勝手にイメージしていたのだが、そうではなかった。
登ったり降りたり、登山っぽいのようなルートである。すぐに汗が噴き出してきた。
ほどなく木の橋が登場。ここは通れるようだ。
前後の川が確かに渓流っぽく視覚的には少し涼しい気分になった。
橋を過ぎると景色が一変、竹林の中の道を進むのである。
このあたりは坂道も緩やかで、身体の負担があまりないまま青くスラっと伸びた竹に囲まれた景観をしばし進むことになった。
何種類かの蝶がたくさん飛んでいたのが印象的であった。
また景色が変わる。今度は杉林で、杉の葉越の太陽の光が強烈である。
ここで不思議な看板を発見。
森の中は、フィトンチッドで一杯です。深呼吸してみましょう。
はて?フィトンチッドとはなんぞや。
唐突な言葉の登場に、杉林の中で混乱してしまう。なんのひっかかりもない、意味を想像すら出来ない単語である。
あまりに謎なのでスマートフォンで検索、Wikipediaによると、
フィトンチッド(phytoncide)とは、微生物の活動を抑制する作用をもつ、樹木などが発散する化学物質。植物が傷つけられた際に放出し、殺菌力を持つ揮発性物質のことを指す。
森林浴はこれに接して健康を維持する方法だが、健康だけでなく癒やしや安らぎを与える効果もある。フィトンチッドはその殺菌性や森林の香りの成分であるということから良いイメージがあり、森林浴の効能を紹介する際に良く用いられている。
深く呼吸をしてその化学物質を吸うことが森林浴の一つということか。
素直に大きく深呼吸をしてから先に進む。
出発から30分ほど歩き、続いて現れた木橋も無事通ることが出来、
残り400mという案内看板を過ぎて安堵したところで唐突に道は遮られた。
木橋破損のため、当面の間、利用できません。
なんだ、やっぱりダメなのか。残念だがロープを張っているのであきらめることにした。
とはいえ変化の多い自然の景色を楽しめ、十分に汗もかけたのである程度満足感を持って同じ道を戻る。
渓谷の景色を見ながら歩くことを期待していたのだが、ずっと木々の中を歩く遊歩道であった。一か所だけ、ちらと渓谷が見えたのがこの写真。
汗がしたたり落ちて来たので、飛び込みたくなる景色である。
駐車場の近くに畑があって、男性が畑でじゃがいもを掘っているところに遭遇。
挨拶すると「2~3個持って帰るといい」と声をかけていただいたので遠慮なく頂戴し、お土産まで出来た。
目にすることが出来なかった、目的の蓬莱岩は対岸にある村上薬師堂というところから眺めさせてもらった。
真ん中でとがっているのがそれである。
水墨画に描かれていそうな象徴的な岩だ。
YouTubeにドローンで撮影された蓬莱岩が投稿されていたので、関心のある方はぜひに。
こんなすばらしい景観が見れる遊歩道、早期の復旧をしていただきたいものである。