「飼う人」とサナギ | 寿建設 社長ブログ

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柳美里さんの小説「飼う人」を読んだ。

「イボタガ」

「ウーパールーパー」

「イエアメガエル」

「ツマグロヒョウモン」

という4種の生物がタイトルの連作小説集で、それぞれ複雑な背景を持つ主人公の人生や心理と、飼っている生物の生態が微妙にリンクしたり影響したりしていくという、今まで感じたことのない不思議な味わいのする物語であった。

 

生態を丁寧に丁寧に表現する柳さんの文章と暗い影の強い物語を通して、自分自身のことも考えさせられた。

動物行動学者の岡ノ谷一夫さんという方が書いた解説に「どのような生き物であれ、飼うことは自分を見つめることである。」という一文があったが、なるほどと納得。

私自身は生き物を飼った経験がほとんどないので特に新鮮な読感であったのだろう。

 

ウーパールーパー以外は知らない生き物だったので、ネットで検索して容姿のイメージをしながら読み進めた。

最後の話で、タイトルの「ツマグロヒョウモン」という蛾が、幼虫→サナギ→羽化と姿を変えていく様子を美しい文章で綴っているのだが、どうしても実物が見たくなってYouTubeを検索したらあった。

特にサナギに姿を変えていく様子は、小説でも息を飲んだシーンだったが、実物もすごい。

「変態」というとあられもないことを思い浮かべてしまいがちだが、この姿は正しい「変態」である。

 

作者である柳美里さんが経営している「フルハウス」という書店で購入した本なのでサイン入りなのだが、そこに書かれた「生き物の声を傍受せよ」という言葉が沁みた。

私も蛾の幼虫を飼ってみたい。考え方に影響があるに違いない。