「高熱隧道」(吉村昭/新潮文庫)
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高熱隧道 (1967年)
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日本電力黒部川第三発電所建設を描いたノンフィクション小説。
最高温度165度という岩盤にトンネル(隧道)を建設するという、壮絶な仕事の記録である。
犠牲者300人以上。壮絶とは、こういう仕事をいうのではあるまいか。
300ページにも満たない一見薄い文庫本であるが、わずか80年前の出来事とは思えぬ世界がそこにある。
これ以上の解説は不要で、読んでいただく他はない。
また、この本の中には、本格ミステリもびっくりのすごい事件が登場する。
「志合谷宿舎消失事件」、とでも名付けたいとんでもない実話である。
黒部渓谷に建った4階建ての作業員宿舎の3、4階部分が、中で寝ていた100名近い人とともに突然消失するのだ。
これもぜひ知っていただきたい。
本で描かれているのは黒部川第3発電所工事だが、その約20年後に世紀の難工事と呼ばれた黒部川第4発電所工事の際、やはり高熱地帯のトンネル掘削(新黒部川第3発電所への水路)を担当したのが私の祖父らであった。
その工事を含め、その他あらゆる難工事を死者1名も出さずに完成させ、大きな信頼を得たことで、次に福島でのトンネル工事に導かれる。
これが当社のスタートである。
以下画像は、文庫本の装丁。この絵もたまらなく好きだ。