福島県の南会津地方・下郷町に大内宿というところがある。
http://outdoor.geocities.jp/hpmonda/aizu_ouchijyuku_1.html
茅葺屋根の昔ながらの宿場町の姿が残されていて、年に110万人以上の観光客が訪れる、県内でも屈指の観光地だ。
ここは観光地ではあるが、実際にその集落に普段から人が生活している。
日中はそれぞれの建物でお土産を売ったり食事を出したりしているが、いわゆるテーマパークのようにわざわざ建設したものではなく、まさにそこで生活している集落そのままの姿なのだ。
自分の家が観光地の一部ということになる。
この大内宿の集落のリーダーである吉村徳男さんの話を聞く機会があった。
吉村さんはこの大内地区在住で、もともとは下郷町役場の職員だったが、大内宿の顔とも言える「茅葺屋根」の後継者が地元にいなくなることを危惧して45歳で役場を辞め、茅葺職人に弟子入りし、地域の伝統保存のための人生に転換された。
すごい決断だったと思う。
吉村さんは、とにかく地元の伝統行事や技術を徹底的に残す取組みをしているという。
「今の合理的な考えだと、そんなことはやめたり、業者に任せればいい、と思われることも、この大内地区の住民と協力し合って伝統を継承しているのです」
とおっしゃっていた。
大内宿の伝統行事は、正月の朝、その家を流れる用水からその年一番の「若水」を汲むところから始まる。
米と塩を供え、松と餅を昆布で縛ったヒシャクで「なに汲む米汲む黄金の柄杓で宝水汲む」と唱えて水を汲み、汲んだ水でお茶に沸かして戴くところから一年がスタートする。
現代社会では、わざわざやる必要のないことかもしれない。
わずか約50世帯で、以降一年間さまざまな伝統行事・地域活動を運営するわけで、年中大忙しだそうだ。
↓↓こちら参照
http://komeyasoba.com/komeya/index.html
「私たちは面倒臭いことをちゃんとやるという姿勢を、大切にしています」と吉村さんはおっしゃっていた。
その気持ちが地域にしっかり根付いているからこそ、年々観光客が増えていると実感しているようだ。
昔ながらの日本が残っていることこそが大内宿の魅力なので、それを履き違えてお金儲けばかりに走ってしまうと全然違う姿になりそうだが、吉村さんを中心に「面倒臭い」ことをしっかり実践して地域の伝統を残している姿が、多くの観光客に伝わるのだと思う。
あまりにの観光客の多さに、あの家の売上げがどうしたこうしたと微妙な関係になった時期もあったようだが、こうした伝統行事をしっかり継承することで今は地区の絆がとても深くなったのだそうだ。
若い人たちもちゃんと地元に残っている。
時代に踊らされず、やるべきことはきちんとやって、お客さんの求めることにきちんと応えていくことの大事さを実感した。