またお話が先に進められないよぉ | 寝ぼけ眼のヴァイオリン 寿弾人kotobuki-hibito

すみません。ただの愚痴です。

 

作っている小説が三つ目のエピソードに入るところで、また小休止です。

今度書くのは、娘に性的虐待をしていた父親、というモンスターなのですが、この人が銀行員なんです。

なんで銀行員なのか、といったら、うちの兄が昔、銀行員だったし、私もかつて就活で銀行に内定もらったことあるし、お堅くて世間体がよくてストレス溜まる職場って、モンスターが真面目な顔して潜んでいそう、という実に適当な決め方。

 

もちろん、まったく違う設定にすることもできました。例えば、悲惨な子供時代を送って、物心つく頃にはグレていて、補導されたり少年院にも行ったりしたことがあって、自暴自棄に生きる30代とか40代の無職の男。こういう人のなかに、児童虐待する人が紛れているケースもあると思う。

でもそれって、想像しやすいから、魅力感じないんですよね。だっていかにも、だもん。

短気で弱いものに暴力ふるって、仕事も長続きせず、妻は暴力で支配。それで娘にも手を伸ばす。

いかにも、ありそう。

 

児童虐待はそういう分かりやすいパターンばかりじゃないよ、っていうのを主張したかったんだよな。

 

で、たまたまお堅い、メガバンクの行員。

キャリア官僚なんかでもよかったんだけどさ。

 

で、小休止と言うのは、いま銀行員についてもう一度知識を仕入れていて、書く作業がストップしているのです。

 

「人間学」からすると、結構、その人の仕事のキャリアっていろんなことを語りかけてくる。

特に昇進とかキャリアから見えてくるものというのはおろそかにできないと思う。

 

もし、この性的虐待モンスターが、超エリートな出世街道まっしぐらのキャリアを持っているなら、これはタイプとしては完全なサイコパスです。感情的な他者への共感力などまったくないくせに、人の心を見透かし、操り、支配することに喜びを感じる男。その技量で会社でも優秀な成績を残してきたけれど、人を「自分のおもちゃ」にしか思えないので、家庭でも子供を自分のおもちゃにする。その結果の性的虐待。

でも、こういう人はあまりいない。なぜなら、優秀なサイコパスはリスクにも敏感なので、おもちゃにすることが大きなリスクになるなら、そうすることへの興味を失う。またサイコパスであっても感情が豊かであれば、人をおもちゃにはしない。

ということで、こういうケースは希少種だと思う。悪役としては華がありますけどね。

 

で、社会的なエリート風情で、一番ありそうなのが、屈折して心に闇を抱えているケース。

大きな会社にはいろんな人がいます。

メガバンクの名刺を出して「自分は社会のエリートなのだ」と虚栄心を満たしていても、会社内では熾烈な競争があって、たいていの人間はむごい挫折感をいくつも持っています。

例えば、銀行は出世競争が分かりやすい職場なんですよね。40代に入ると、出世競争のもうラストスパート。この辺で支店長になれないと、もうそれ以上の出世はない。50歳になる前に、肩を叩かれて関連会社や取引先に出向やら転籍やら、「肩たたき」が始まる。

40代も後半になれば、自分の支店の支店長が自分よりも後輩、ということもざらにあるわけで、なかなか大変なのです。

だいたい昭和、平成世代の大きな会社のサラリーマンは社畜です。そして有名な自分の会社の肩書の名刺で(要は自分が飼われている有名農場の肩書で)、取引先やご近所、飲み屋、キャバクラなどで偉そうな顔をして自分の自尊心を満たすわけですが、自分の所属する会社では、たいてい卑屈な奴隷なのです。

 

こういうなか、もっとも屈折した心の闇を抱えそうな人がどんな人か、勝手に想像してみましょう。

まずナルシストで自己愛が強すぎて、自分への客観的評価ができない。そのくせ小心者で要領よく立ち回ろうとするので、周囲の様子を見ながら長い物には巻かれる行動をとる。しかしナルシストでプライドも高いので、自分に対する批判や叱責には拒絶どころか憎しみを抱く。会社組織の自分に対するマイナス評価が受け入れられず、会社組織に対しても不信を持っている。

こういう人の社会に対するストレスは結構なものがあります。しかし小心者なのでそのストレスを発散する方法は、限りなく安全なものを選びます。つまり明らかに自分より弱い人間を攻撃したり、支配することで、自己全能感を得ようとします。

大学を出て教養があって、立派な肩書があっても、こうした方は、幼児への性的暴行、力の弱い女性への暴力、それから自分よりも学歴やキャリアの劣る人間をくさすことなどに欲望を感じます。

こういう方が例えば、お人形のように支配されることを自ら望む女性とくっつくと最悪なことになります。暴力を振るわない代わりに、人格否定やあざけりなどのモラルハラスメントで相手を支配し、その全能感の喜びに味をしめることで、その人の歪んだ心の闇はどんどん拡大していきます。こうした肥大した心の闇の行きつく先が、娘への性的虐待であったりするのだと思います。

はっきり言うと、こうしたものは、ただの精神的な甘え、なんですけどね。本人はそれが自覚できず、「俺はやはり優秀な男なんだ」なんて思っている。

 

で、こうした人間が会社でどうかというと、どう見ても仕事はできない。できても平凡。

なぜかというと、新しいことや知らなかった価値観を認める人間的な器がそもそもないわけなので(新たなことを吸収するにはいつでも古い自分を大胆に否定する必要があります)、仕事上でも大きな成長が見られない。

 

この物語のモンスターは、メガバンクに勤める中規模支店の業務課長。47歳。

47歳なので、本来なら、「自分は支店長になれない」と理解した時点で(つまりこれ以上の出世はできないということ)、何度か打診があった「肩たたき」に応じていてもおかしくないのですが、「俺は優秀だ。俺は本来は支店長くらいになっていておかしくないのに」と思っているので、意固地になって転籍や出向を拒否してこのポジションにいるわけです。

業務課長というのは、窓口業務の派遣社員やパートの女性スタッフを束ねる役席です。要は我々庶民の個人口座の手続きなどをまとめる仕事ですね。

銀行では新人のうちはすべての業務を一通り学びますが、その後、優秀な人は融資、もしくは取引先窓口に回されます。これらはビジネスとしては大型案件だからです。それに比べて、個人を相手にする業務課は地道なお仕事です。

銀行はいま、IT化を猛烈な勢いで進めていて、個人手続きの窓口業務をいかに無くしていくかが課題です。この登場人物は、本部から「不器用で使い勝手の悪い行員」と思われているので、とりあえず業務課長。ただし支店長には「窓口の数を減らしてIT口座に移行すべし」という本部からの命令が下されていて、この登場人物にその計画も託すのですが、この男は旧態依然が好きなのであまり積極的でなく、若い支店長はイライラしています。

しかも自分の与えられた裁量には自分で陶酔してしまう人なので、配下の女性スタッフでお気に入りの子には甘やかし、どうでもいい女性スタッフには馬鹿にした発言をするなど、実は女性スタッフからの評判もあまりよくなく、この人の監督下のスタッフの離職率も高くなっています。

 

まあ、どこにでもいそうなキモイおやじ、なんですけどね。

そういうのが、とんでもないモンスターっていうのが物語でやりたいこと。

 

銀行については、自分の資産運用のさいにいろいろと業務を覗く機会があり、同時に結構、いろんな書籍で学んできたので、とっとと書けるかなと思っていたのですが、この登場人物の日常で何を表現するかを突き詰めて考えるには、まだもうちょっと熟成が必要なようです。

本当、具体的に登場人物が勝手に動くようにするには、くだらないことも含めて、かなりの理解が必要なんです。特に私はそんなに器用でなく、賢くもないから、かもしれませんが。

たとえば日常で言うと、銀行員は自分のデスクに余計なものを入れられないとか、離籍するときはカギをかけていなくてはいけないとか、書類は持ち帰ってはいけないとか、時折、副支店長による抜き打ちの持ち物検査があるとか、朝礼はどういうものかとか、支店でもセキュリティの観点から必ず食堂を内部に作っているとか、そういうくだらない日常の規則なども改めて頭に入れたうえで、納得のいくシチュエーションが浮かぶのを待つわけです。

飲み会なども興味がありますね。この登場人物、飲み会が好きだけど、自慢話と人を蔑む説教が多いから、若い行員もみんな行きたがらないだろうなあ、とかね。

 

そんなこんなで、物語を書く作業って、順風満帆ではないんですよね。

まあ、自分の能力からしたら仕方ない。

だって、まだ作家見習い、だもの。

またしばらく小休止なのです。