【MV考察】ISSUES / 『The Realest』 | 超個人的音楽のススメ。

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アトランタ出身のPHCバンドISSUESが待望の2ndフルレングス『Headscape』を
5月20日に海外リリースする事を明らかにした。
それに伴い、今作のリードトラックである「The Realest」のMusic Videoも公開。


<※ここからは少し長いおさらいです。>
シーンにとって革新的一枚であった1stフル『ISSUES』より約2年振りのリリースとなる今作。
そもそも彼等はこの前作である『ISSUES』でメタルコアをベースにR&B、ファンク、ヒップホップ等の
ブラックミュージックやダブステップ、EDM由来のエレクトロをDJプレイによって高次元でマッシュアップする事で
生み出した唯一無二のサウンドでメタルコアシーンひいてはニューメタルシーンにまで金字塔を打ち立て、
時代の最先端へと躍り出たわけだが、まぁこういった情報は前作が出た時に散々言及されているので、
改めて言うまでも無い事なので。

とにかく彼等はデビュー作において、シーンそのものを根本から更新してみせたのだ。
海外シーンにおいてはリバイバルに重きを置かれるため、古き良きものを今の感覚で鳴らす事が
素晴らしいという感覚なのでここまで革新的なアプローチは珍しいのである。


更に昨年は、以前より親睦を深めていたOK ONE ROCKのツアーにも参加し、幾度どとなく来日を
果たし、ここ日本でも次回作である2ndフルでブレイク必至!と期待が高まっていた中でまさかの
DJ・Scoutの脱退がアナウンスされた事は記憶に新しいだろう。

ISSUES最大の武器の一つであるDJプレイを担っていた彼の脱退は実に衝撃的で、
このアナウンスは2ndアルバム以降におけるマッシュアップ感(ISSUESっぽさ)の実質的な消滅を意味していた。
私は当時すごく落ち込んだ。

しかし蓋を開けてみればそもそもプロデューサーとして参加予定だったScoutにTylerが懇願する形で一時的に
メンバーとして参加していたという事が続報で告げられ、更にはツアーには参加しないが制作には
これまで通り関わっていく旨がアナウンスされた。
「なんだそうだったのかぁ、いやいや!でも抜ける事には変わりないんじゃないか?」
とそれがサウンドにどう影響していくかこの時点では全くの不明だったのである。

そんな経緯もあり、世界中のファンは今作における彼らのサウンドの方向性の着地点という所で、
不安と期待が入り混じったような何とも言い難いクラス替え後に初めて教室に入る様な心持ちで
続報を待ち続け、ようやくリリース情報とリードシングルのMusic Videoが届いたわけである。



<※ここからが本編>
正直な感想を言わせて頂くと、私の不安は全くの杞憂として終わった。
更なる革新に満ちた素晴らしいシングルが届いた。ISSUES最高。

前作までの、全方位爆撃のような初期衝動に満ちたデジタル感やマッシュアップ感は確かに殆ど無い。
その代わりに楽器隊が本来持ち得ていたバンドアンサンブルが顕著に浮き彫りになっているのだ。
イントロのギターとベースの鳴り方やフレーズ、そしてラップ調のスクリームやメロディーまで歌い出した
スクリーマーMichaelのボーカルアプローチの変移も含めマイナーチェンジであるが全てが革新的に進化している。

特にMichaelのクリーン、この1フレーズが曲構成的にど真ん中と言える2サビのド頭に搭載されている事で
曲の印象がグッと良くなっている。使うべき武器を使うべき場所で使える嗅覚は流石である。


思い返せば前作と今作の間にリリースされたアコースティックEPでは、デジタルエフェクトを完全に脱ぎ去り、
高次のバンドアンサンブルにより本来のメロディーラインの美しさと、楽器隊の屈指のアレンジ力を
ISSUES流アコースティックとして再提示してみせた。あの流れが今作のバンドサウンドに的確な形で
フィードバックされていると考えれば、成程、理にかなった進化である。


そしてISSUES最大の切り札であるTyler Carterのクリーンが有する説得力も増していて、
以前のR&Bシンガー然としたスタンスには無い力強さが感じられる。
(Adeleのカバーをした経験値ゆえだろうか)
しかしながらプレイヤーからプロデューサーへと腰を据えたScoutのアレンジセンスは変わらず随所で光っていて、
Djentのビート感やリフ、そして確信犯的に差し込まれるシンセやスクラッチ等のエフェクト音
が曲に彩を添えている。。


とにもかくにも、この一曲で長々と語ってしまったが、アルバムの中にはカントリー調の曲もあるらしく
最早メタルコアでもなければ、日本でいう所のミクスチャーでもなく,ISSUESという「解釈」で
音を鳴らし始めた彼らのニューアルバムがもう素晴らしくないはずがない。

私は今から期待しかしていない。