ロイター通信の記事に載っていたアラブの超高層ビル。
述べ12,000人の人が建設に関わったというそれは、オープニングの日まで高さが公表されなかったらしい。
「建設中に公表しちゃうと、それより少し高いビルを建てようという人がすぐに出てくるからじゃない?」
とはイギリス人のTさん談。
なるほど。
それからしばし、世界の有名な高層ビルやタワーの高さについて2人で話していた。
「きっとエッフェル塔の方が東京タワーより高いよね?」
「ううん、確か東京タワーの方が高いよ。333m」
「本当だ!」
そんな話の流れから、思い浮かぶのは東京スカイツリー。
「東京スカイツリーはね、634mなんだけど。
これは日本語だと『ム・サ・シ』って読めるのね。
武蔵は東京にある地域の名前でね…」
本当は武蔵“野”台地だし、地域というよりは関東平野西部の台地を広く指す。
東京の西エリアで生まれ育てば身近な名前。
特に私は武蔵野市出身なのでこの名前への思い入れはひとしおだ。
しかし日本語を話さないTさんにわかりやすく話すには、私の英語力だと若干の語弊が生まれてしまう。
まぁそれは今は置いておくとして。
その話をした時、Tさんが不思議なことを言った。
「日本語の『difficult』…」
ん?
「『difficult』と似てない…?」
何が??
首を傾げる私。
Tさんがポツリと呟いた。
「ムズカシイ…?」
ああ!!
まさにTさんの言いたいことが I got it!という感じ。
「ムサシ」と「ムズカシイ」
拍数(音の数)も違うし、「ム」しか一緒じゃないけれど、イギリス人の彼には似た音に聞こえたらしい。
こういう、ネイティブじゃない人の感じる、言葉の音に対する感覚って面白い。
「なるほど~」と笑いながら、私は数十分前の自分を思い出した。
それはアメリカ人のBさんと話していたときのこと。
「『revenue』?『revenue』って何?」
「『revenue』っていいうのは企業の…」
「あ!『street』?!」
「それは『avenue』だね」
「Oh…」
思わず顔を覆った。
ようはあれと似たようなことだ。
そういえば…
連鎖して記憶が蘇る。
アフリカのガボンから来た2人に
「『mariage』と『fromage』って似てるよね。
フランス語には『~age』っていう音が多くない?」
と言いたかった時のこと。
(残念ながら私のフランス語力では全然伝わらなかったのだけれど)
ネイティブには「なんのこっちゃ?」なことが、世紀の大発見のように感じる言葉が紡ぐ音の不思議。
生粋の日本人の私にとって、ムサシとムズカシイは混同することの方がムズカシイ(笑)