私は「negotiation」が苦手だ。
ジーニアス英和辞典によると「negotiation」は
〔…との/…間の/…のことでの〕
交渉、話し合い、折衝、談判
とある。
私自身、「交渉」なんていう言葉を意識したのは、社会人になってからだったように思う。
ただ海外に行けば、「値引き交渉をしよう!」なんてガイドブックに書いてあるくらい普通のことであるとは知っていた。
もちろん国や地域、お店のスタイルによるけれど。
だからと言って、みんながみんな値引き交渉を楽しめるかというと、そんなことはない。
私のような臆病者は、「discount」のひとことすら言うのに勇気が必要だ。
それはつまり
お店側にとって私は上客というわけ!
だって少し強く出れば、客が折れてくれるわけだから。
思い返せば大学の卒業旅行で友人のMとバリ島に行ったとき。
彼女はマーケットでいきなりそこに出ている価格の10%をふっかけた。
はああああっ?!
あっけにとられる私。
いくらなんでもやりすぎなんじゃないの?
相手が怒るんじゃない?!
ハラハラする私をよそに、彼女は淡々と交渉を繰り返した。
最終的にいくらになったか、正確には忘れてしまったけれど、確かそもそもの価格の半額にも満たなかったように記憶している。
ぬぬぬ…
やり手だ…
決して普段、強さを感じさせるわけではない彼女は、すごく強さを秘めた女性だった。
さて、そんな交渉術を練習しようと、メキシコ人のKさんと英語でロールプレイをしていた。
「そんな価格じゃもっとお金を持ってるってバレるよ。
もう少し低い価格から交渉しないと!」
そう言われて再び挑戦すると…
「ふっかけすぎ!ドキドキした…
やりすぎると『もういいわ。他の店に行って』って言われるよ!」
わ…わからない…
「ちょうどいい加減の交渉価格」がわからない…
途方に暮れる私。
やっぱり苦手だ。
すると彼女が言った。
「実は私も苦手なの。だからすぐに『OK…』って言って払っちゃう…」
悲しそうな顔で。
メキシコは日本と違い、お店での交渉が当たり前の国。
そんな国で生まれ育った彼女でもそうなんだ…
目からウロコが落ちるとともに、ますます親近感がわいたのだった。
>『デパートという認識』に、微妙につづく