オーストラリア滞在中、私はいくつかの家庭でホームステイをした。
中でも一番お世話になったのは当時メルボルンで一人暮らしをしていたDawn。
彼女は私の滞在中に、50歳の誕生日を迎えた。
本人主催で大がかりなパーティが催され、出席者は数十名。
南アフリカからの移民である彼女。
1人のゲストのスピーチが心を打った。
「南アメリカから移住してきたとき、彼女を知っている人間は僕たちだけだった。
でも今日ここには、彼女がオーストラリアに来てからできた友人たちがたくさんいる。
いかに彼女が愛されているかがわかるよね」
私も手巻き寿司コーナーを設けて精一杯彼女を祝う。
自分がその場にいられることが奇跡のようだと思った。
愛されている彼女は、その後親友一家との旅行に私を連れて行ってくれた。
マリンビュラという、海の美しい地域だ。
そこでは、本人には内緒でサプライズ・パーティが企画されていた。
「ひろこ、ここにメッセージを書いて」
寄せ書きになっているカードを手渡される。
そこは当然のごとく、彼女の大切な人たちからのあたたかいメッセージが溢れていた。
どうしよう…
お祝いしたい気持ちはある。
でも難しいことは書けない。
いい回しも単語も、わからない。
だから私は私の精一杯で、書いた。
『Happy birthday!!
I like your food, I like your house, I like your car,
I like your Zac, I like your voice, I like your family,
and I love you.』
正確ではないけれど、こんな感じ。
(ちなみにZacというのは、彼女の家にいた犬の名前)
このメッセージを読んで、同行していた女の子が私のところにやってきた。
「素敵なメッセージね。私、好きだな!」
嬉しかった。
難しいことは書けないし、言えない。
でも「おめでとう」とか「ありがとう」とか「大好きよ」とか、伝えたい気持ちはいつだってとてもシンプルだ。
だからそれを伝えれば、伝わるんだなって。
本人だけではなくまわりにも、私の「大好き」は伝わっていた。