very very ロンドン | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

私が初めて海外に1人で旅立ったのは25歳のとき。

英語なんてまったく話せず、当然聞き取りもできやしない。
勉強したのは大学2年次の授業までとはいっても、中学高校とすでに英語に挫折感を覚えていた私は、授業に出ていただけだった。

そんな私が「自分の世界は狭すぎる!」と思い立ち、無謀にも何の準備もせずにいきなりイギリスに飛び立った。
ロンドンでの2週間のホームステイ&語学学校と、シュールズベリーでの1週間のファームステイ。

そりゃもう、わけがわからなかった。
機内アナウンスなんて、まったく聞き取れずに泣きそうだった。

それでもなんとか2週間乗り切り、ロンドンを旅立つ日。
ホストファーザーに訊かれた。

 「2週間、どうだった?」

戸惑いながらもなんとか授業を受けられたこと。
仲良くなった友達ができたこと。
あちこち見て回れたこと。
また来たいと思っていること。

私の中にはいろいろな思いがあった。
でも私は、自分の中にあるものを表現する言葉も術ももっていなかった。

どう伝えればいいんだろう。
体の中から振り絞った私は、こう答えた。

 「very very London」

我ながら、なんだそりゃ?!な表現だ。
でも、パパは「うん」と大きくうなずいて返してくれた。

 「うん。very very Londonだね。よくわかるよ」

細かく説明するよりも、彼には通じたようだった。
涙がこぼれた。

つたない言葉の方が、コアが伝わることがある。
これは、そんな体験の中でも大人になって私が意識した、初めてのもの。