近い世界の高い壁 | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

英語が苦手という日本人は多い。

韓流ブームが起こり
英語の次に世界で話されている言語はスペイン語だと言われ
中国の急激な成長によって「これからは中国語だ!」と叫ばれ
さらに今、企業のアジア進出はベトナムに向いている。

そんな現代であっても、大多数の日本人にとっては未だ
 『外国語=英語』

そしてそれ以外の言語を少し話せたり読めたり知っていたりする人と出会うと
「わかるの?!」
「話せるの?!」
「すごーーーい!!」
と、まるで異次元の人を見るかのような賞賛を贈る。

これは単言語国家である日本が長らく苦しんできた
「うまくいかなかった外国語教育」によって
植え付けられたコンプレックスによる要素が大きいように思える。

先日も、「何だろう、これ?」「どこの商品かな?」と手にしている女性たちの輪の中で
「タイ語だねぇ…」
と呟いたら途端に数人から反応が返ってきた。

「タイ語なんだ!えっ!読めるの?」
「タイ語わかるの?」
「タイ語が話せるの?!」

「いやいやいや…それがタイ語っていうのがわかるだけよ」

いくつかのあいさつと自己紹介、
この文字はタイ語で使われているものである
ということくらいしか私は知らない。

それでも日本人にとって、
日本語以外の言葉が少しでもわかるのは “とてもすごいこと” なのだ。
改めて、日本という国の、日本語以外の言語に対する耐性のなさを感じさせられる出来事だった。

アジアからの観光客が増え、街中の大きな店舗では複数言語でのアナウンスが流れている。

でも一方で、日本国内で普通に暮らす私たちにとっては
仕事で必要とされない限り
「日本語以外の言語を話せなきゃ困る」
という状況には陥らない。

これぞ『海に囲まれた島国 日本』。

ITの発達で、世界はとても近くなった。
飛行機と、信頼度の高い日本という国のおかげで
物理的にも容易に海外に出て行けるようになった。

なのに多くの日本人にとって、言葉の壁は高い。


スラスラと話せなくてもいい。
カタコトでもいい。

まず一歩。

目を向ける。
見渡してみる。
踏み出してみる。

それだけで世界はつながっていることを私たちは体感できる。


「タイ語わかるの?!」と聞いてきた女性が言っていた。

 「コップンカ~♪」

あなただって、タイ語知ってるじゃない!