イタリアとフランス、どっちが好き? | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

インターネットは世界中とつながっている。
おかげで物理的に会えない人と出会え、語り合えるのは本当におもしろい。

ある日、アメリカで暮らすイタリア人女性を中心に、
アメリカ在住フランス人の男の子と3人でイタリア語会話を楽しんでいた。

「じゃあ質問タイム!」
リードしていた彼女に言われ、彼が私に尋ねてくる。


 「イタリアとフランス、どっちが好き?」


こらこらこら…

そんなのどっちとも答えられるわけがない。
だって相手はイタリア人とフランス人。
どっちを答えたとしても場が険悪になるではないの!

それに正直、私の中に優劣は存在していなかった。


 「えー…難しい質問だよ、それは」

そう答える私に、彼女が言った。

 「じゃあピザとクレープはどっちが好き?」

その時、私はお恥ずかしながら『フランス=クレープ』という認識がなかった。
『イタリア=ピザ』という認識はあったのだけれど。

とはいえこれは結局、似たような質問だ。
私はコンマ何秒で頭をフル回転させて答えた。

 「Mi piace più la crepe che la pizza, ma mi piace il gelato.」
  (ピザよりクレープが好き。でもジェラートも好き!!)

我ながらなかなか適切な回答だったと思う。

 「Brava! Hiro!!」

拍手喝采の彼女。
「ははは…」と笑い声を届けてくれる彼。
見えない顔は、苦笑いだったんじゃないかな~?と思えたけれど。
(ちなみに彼女の顔は見えているけれど、彼の顔は見えていない)

いやはや、彼らは自国に対する愛がはっきりしている。

私だったら、例えばイタリア人相手に
「日本と韓国、どっちが好き?」とは聞かないし、
「じゃあ寿司とキムチだったら?」とも聞かない。

どう答えられても嬉しくない。

でもそんなこと、全然考えないまま質問してくるんだろうな…

ここにもひとつ、文化の違いがあった。