お気に入りのカフェで
これまたお気に入りの珈琲ゼリーパフェをいただいていた。
ふと気になって手に取った雑誌の特集テーマは
『北欧の家具と器』。
私は何となく、北へと…そして過去へと思いを馳せた。
北欧のデザインは素晴らしい。
洗練されているというだけではない何かがある。
ただ実は、何かがあるのは何となくわかるのだけれど
自分がそれに惹かれているのかどうなのかは
ずっとわからないままきていた。
北欧デザインが好きとか北欧家具が好きとかいう友人と話すと
何故だか感じる違和感。
あれ?
私、そんなに好きじゃないのかな?
なんて思ったり。
私は北欧というといつも、シチューのCMのような
家の窓からもれるあたたかい白熱球の色を思い浮かべる。
あの中で、何がが生み出されている。
そんなイメージ。
思えば家具や照明だけでなく、
優れた文学も芸術も、北の国から生まれることが多い。
カラーセラピーも、システムが生まれたのは
イギリスやカナダなど、北に位置する国々だ。
雪に閉ざされる期間が長いからこそ、想像を膨らませたり憧れたり。
そこから色彩豊かなモノが生み出される。
北の大地にはそんな力があると聞いたのはいつのことだっただろう?
確かに、南は想像しなくてもそこにある。
色彩豊かな自然が。
だから人間は開放される。
オープンになる。
さて、手に取ったこの雑誌。
ページをめくっていると、ある名前が目についた。
思わず手が止まる。
大学時代にお世話になった教授だ。
そういえば先生は、日本で初めて北欧に留学した方。
世界に名だたるデザイナーたちと交流をお持ちだった。
本や作品でしか目にしない有名デザイナー達の名前を
次々と先生の口から 友人として 生きた人間の話として
聞いていたあの頃。
私はあまりに遠い世界のことで、よく理解できなかった。
世界と、目の前にいらっしゃる教授を介して自分が繋がらない。
そんな先生のコトバが、誌面に綴られていた。
『デザイナーも企業家も、共有しているのは生活体験。
北欧デザインは北欧の心でつくられたもの。
過去を知らない人間は未来を語れない』
あの頃、私は教授の話を聞くのが好きだった。
でも思えば、好きだったのはデザインの話ではなく
しつらいや文化、人の暮らしそのもの。
そんな話を耳にするとき、私の心はワクワク躍った。
今私は、様々な国の人達と出会い、交流し
また様々なコトバに触れている。
興味あるのは人間そのもの。
人間そのもののココロとカラダ。
人と人のつながり。
だから選んだのであろう、この仕事。
たった1ページに綴られた先生のコトバが、
私が抱えてきた北欧への不可思議な想いと今の自分を
繋いでくださったような気がした。
『デザイナーも企業家も、共有しているのは生活体験。
北欧デザインは北欧の心でつくられたもの。
過去を知らない人間は未来を語れない』
ヒトがいて、生活があって、モノは生まれる。
ヒトがいて、家族がいるから、人間はつながっていく。
そういえば先生、留学したときは
どんなコトバで北欧のデザイナー達と語り合っていらしたのだろう?
英語?
デンマーク語?
スウェーデン語?
フィンランド語?
ノルウェー語?
学生時代から不思議に思っていたことを思い出した。
デザインよりも何よりも
私が一番関心を寄せていたのはそんなことだった。
なんだ私、変わってないな…(笑)