に…日本語だったんだ… | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

初めての海外一人旅は12年前。
行き先はイギリスとイタリアだった。

イギリスではロンドンでホームステイをした後
シュールズベリーでファームステイ。

当時の私は英語がまったく話せず、
tooとveryとsoの違いもわからなかった。

よくもまぁ、あんなに思い切った決断ができたものだと思う。

でもとにかく自分の世界の狭さに「このままじゃダメだ!」と思っていた。
モノを知らなさすぎる!
こんな自分がクリエイティブな仕事なんてできない!!

そう強く思っていた。

といっても、当時の私はぽーーーんと1人で海外に行けるような人間ではなく
行くことを決断したときは、友人に「え?そんな子だったっけ??」と驚かれた。

でもまぁ、行けばなんとかなる。

イギリスで3週間過ごした後、私はイタリアへ渡った。
英語はあやふやながらも、何となく耳も慣れ、
度胸だけはついていた。

ある日、ミラノのジェラート屋さんに入った。

必死に注文する私に、店員さんがひとこと。

「に?」


 え?

 『に』?

 『に』って何??!


聞いたことのない音にパニック。


 そんな英単語あったっけ?

 え?イタリア訛り?

 それともイタリア語??

 カンタンな英語なら何とかなるけど、イタリア語はわからないよ~!!


「わからない!イタリア語はわからないの!」

必死に伝える私。


 どうしよう、どうしよう…

 ジェラートひとつ、まともに買えない…


すると店員さんが、Vサインのように指を2本出して再度言った。

「に?」


 え…

 え?!

 『に』!?

 『に』って、『2』ーーーっ?!!


衝撃だった。

に…日本語だったのかーーーっ!!


店員のおねえさんは、親切にも日本語で言ってくれていたのだ。

『2』…つまり、ダブルにするかって聞いてくれていたというわけだ。


わからなかった…

全っ然、わからなかった…


日本語でアイスの二段重ねのことを『に』とは言わない。
私たちは普通『ダブル』と表現している。

ネイティブジャパニーズとしては、決して使わない言い回しだ。

しかも私はイタリアの地で、まさか日本語で伝えようとしてくれる人がいるとは
夢にも思っていなかった。

この地には、イタリア語と英語しか存在しないと思い込んでいた。


まさかの日本語。

まさかの『に』。


気づいたとき、その親切心に感動したのは事実。

でもきっと、イタリア語で『Due』と言ってもらった方が
よっぽど理解できただろうな~(笑)
なんて、思ったりもしちゃう私なのだった…。