フランス語はかんたーん! | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

私が日本語以外の言語に興味を持ったのは4歳のときだ。
父の仕事の関係で、1ヶ月ほどベルギーに行くことになった。

一足先に旅立った父を見送った後の1ヶ月、
母は“サンジョウの部屋”に篭って英語の勉強をしていた。
テープを聴いてはリピートしていた光景は、今も脳裏に焼きついている。

ちなみにサンジョウの部屋とは、当時我家にあった3畳ほどの父の書斎だ。

部屋が一部斜めだったため、それを三角形と勘違いした私は、
だから“サンジョウ”と呼ばれているのだと思っていた。

でも実際は『サンジョウ=3畳』だった。
これに気づいたのはずいぶん大きくなってからだったけれど。

音から入ると、人は時に面白いほど大きな勘違いをしたまま突き進む。



さて、母は毎日英語のテープを聞いていたけれど、
ベルギーの公用語はフランス語とフラマン語(オランダ語系)だ。

なのに彼女は英語の勉強をしている。
それが当時の私には不思議で不思議でたまらなかった。

だって英語よりフランス語の方が簡単なのに!

現地に行ってからも、困ったとき、母は必ずこう言って声をかけていた。
「Can you speak English?」

どうして?
どうして英語を話そうとするの?
フランス語の国だし、フランス語の方が簡単なのに!!

不思議でたまらなかった私は、母が英語を話すたびに問いかけた。
そしてその都度、母は答えてくれた。

「お母さんにとっては英語の方が簡単なの」


ふーん…

ちなみに、当時私が話せたフランス語は
「Bonjour,mademoiselle!(ボンジュール マドモアゼール!)」
「s'il vous plait.(シルヴプレ)」
「Merci Beaucoup.(メルシーボークー)」
「Je vous en prie.(ジュヴザンプリ)」
の4つだ。

4歳の私は、これで自信満々。
フランス語はかんたーん!!と思っていたというわけ。


さて、これをどう見ますか?
「何言ってるの。ただの子どもの自己満足じゃん」
と見るのか
「そこからコミュニケーションが広がっていくことを子どもは無意識にわかっている」
と見るのか。


私はここに、コミュニケーションの原点があると思っている。
そして言語の育つ原点も、あると思っている。