分子栄養学入門-26、カルシウムが蓄積して起こる痛み

 カルシウムとマグネシウムのバランスが悪くなると、さまざまな症状が出てきます。尿路結石、腎結石は耐えがたいほどの痛みをともなう病気ですが、これもカルシウム過剰かつマグネシウム不足が原因です。
 結石はシュウ酸とカルシウムが結合してつくられます。マグネシウムは結石の生成を抑制する働きを持っているのですが、これが不足すると結石の生成が進んでしまうのです。そのため結石の予防や治療薬として、マグネシウム製剤が使われています。
 結石については、かつてビタミンCの摂り過ぎが原因などといわれていました。ビタミンCを摂ると代謝産物の一部であるシュウ酸が尿中に増えることから、勘違いが起きていました。実際は尿中のカルシウムはビタミンCと結合しますので、シュウ酸と結合するカルシウムの量は減少することとなります。ビタミンCはむしろ結石生成のリスクを減らしていたのです。
 またカルシウム過剰によって痛みが起きる、肩関節石灰沈着症という症状があります。中高年の方に多い症状で、肩などに急激な痛みを感じて、「肩こりか、五十肩か」と整形外科を受診されます。病院では痛み止めの注射、鎮痛剤や湿布をもらうだけで、なかなか改善しません。あるいは病院で首を伸ばすストレッチをしたり、患部を温めたりしても、なかなか治らないのが現状でしょう。
 こうした痛みもマグネシウム不足が原因です。
 骨の中では必要なカルシウムを維持するため、血中にもカルシウム濃度を保とうとする働きがあります。不要なカルシウムは尿とともに排出されるのですが、年齢とともに尿から排出しきれなかったカルシウムが、血管壁や関節内の腱、靭帯などに蓄積してしまうのです。
 蓄積されるだけなら痛みはありませんが、些細なことをきっかけに異物反応が発生すると、体の防衛機能でカルシウムを一挙に攻撃し、関節内では炎症による激痛が発生してしまいます。
 サプリメントでマグネシウムをしっかり摂り、痛い部分に塩化マグネシウムを擦り込んでみてください。とくに経皮から吸収されたマグネシウムは沈着したカルシウムを取り去ってくれるため、痛みが和らいていきます。患部に直接擦り込むことで、即効性も期待できます。痛み止めを飲んでやり過ごしていても、何の改善もしませんし、鎮痛剤の種類によっては胃腸を悪くします。
 カルシウムの沈着が血管壁で起こるとどうなるでしょうか。血管が固くなり、高血圧や動脈硬化の原因になります。マグネシウムは高血圧や動脈硬化の予防にもなるのです。
 また、偏頭痛もカルシウムイオンが血管の収縮を強くしていることが原因のひとつです。偏頭痛の予防と治療にはマグネシウムが有効です。もし偏頭痛の発作が起きたら、早めにマグネシウムのサプリメントを摂取し、痛い部分を冷やしながら安静にすることで痛みが治まります。
 そして、ふくらはぎの筋肉が激しく収縮を起こす、こむら返り。あの激痛は耐えがたいものですが、こむら返りの原因もミネラルバランスが関係しています。血管と同じく筋肉においても、カルシウムは収縮、マグネシウムはその調整と弛緩の役割を担っています。  
双方のバランスが取れてはじめて、筋肉をスムーズに動かすことができます。しかし体内に蓄えられている量は、カルシウムがマグネシウムより圧倒的に多いため、発汗などによってミネラルが失われると、すぐにマグネシウムが不足することになり、筋肉が収縮から回復できず「足がつる」状態になってしまうのです。
 スポーツ好きでよく汗をかく人、汗かきの人、ミネラルの消化吸収が低下している高齢者は、マグネシウムが不足しがちです。
 カルシウムが蓄積されるからといって、何もカルシウムの摂取を極端に制限する必要はありません。本書ではあえて強調していませんが、必要なミネラルです。日本ではカルシウムの重要性は十分に認識されていると思いますし、習慣として意識されている人も多いでしょう。実際に十分摂れている人は、少なくありません。ただしカルシウムだけを摂るのではなく、マグネシウムとのバランスを考えて摂取してください。


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