海外では鉄不足の人が少ない理由

「すべての不調は自分で治せる」より

 厚生労働省の日本人の鉄摂取量は、60年以上前の1950年から、約6分の1に減少しています。一方、先進国の中でも特に欧米の女性は、日本女性のような鉄不足による貧血に悩む人はほとんどいません。欧米では、鉄分を多く含む肉を日本人の3倍ほど食べますし、あらかじめ小麦粉に鉄を添加するなど、鉄不足対策が行われています。
 1800年代後半から1900年代前半にかけて、糖質精製技術の普及により、全米ではビタミン不足、ミネラル不足が深刻化していました。鉄欠乏性貧血の増加や、トウモロコシを主食とする米国南部ではペラグラ(重度のナイアシン欠乏症)も増加していました。
 ペラグラは統合失調症と症状が似ているため、600mgのナイアシン投与に反応するか否かで診断されました。ナイアシン投与によって反応するようであれば、ペラグラであると診断されます。
 1942年、米国保険局は、「全米に流通するすべての小麦粉にビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、葉酸、鉄を添加することを義務付ける」という画期的な決定をしました。
 その結果、鉄欠乏性貧血は激減し、ペラグラも激減しました。現在は、他の欧州諸国も米国政府と同じような対策を行っています。
 一方、日本ではそのような対策は全く行われていません。日本で消費される小麦粉の90%以上は輸入されていますが、その小麦には鉄は入っていません。
 これが日本人女性にのみ鉄不足が多い理由です。 
 したがって、欧米のオーソモレキュラー本では、欧米では鉄不足はないことが当たり前であるという前提で話が進みます。
「ほうれん草やプルーン、ヒジキを食べて鉄を摂ろう」などといわれていますが、ほうれん草やプルーン、ヒジキに含まれる非ヘム鉄は、肉や魚に含まれるヘム鉄の10分の1と著しく低いのです。ほうれん草だけで必要な鉄を摂取するためには、毎日バケツ4杯以上の量を食べなくてはならない計算になります。
 また、非ヘム鉄は、腸管から吸収される際に、野菜などに含まれる食物繊維や、玄米に含まれるフィチン酸、コーヒーやお茶に含まれるタンニンなどの作用で、吸収が阻害されます。胃壁や腸管が荒れやすいともいわれます。
 一方、肉や魚に含まれるヘム鉄は、鉄イオンがポルフィリン環というものに囲まれているため、食物繊維やタンニンなどからの吸収阻害を受けにくく、また胃壁や腸管を荒らしにくいという特徴があります。さらに、ヘムオキシゲナーゼという酵素が吸収量を調節してくれますので、鉄の過剰摂取にもなりにくいというメリットもあります。
 したがって、食品に含まれる鉄を意識するなら、断然ヘム鉄です。ただし、詳細は後述しますが、サプリメントのヘム鉄は非効率ですので、キレート鉄を勧めています。


元記事はこちら