分子栄養学の提唱-2

三石巌:分子栄養学序説、全業績ー3。より

分子矯正栄養学
 分子栄養学では、DNAないし遺伝子が頭をはなれることはない。ライナス・ポーリングは、「分子矯正栄養学」(オーソモレキュラー=ニュートリション)の概念を提唱している。これは、ある種の疾病がビタミンの大量投与によって改善されることに着目した栄養学である。彼は初め、これを「分子矯正医学」と名付け、やがてこれを分子矯正栄養学に改めたのであった。そしてこれは、いわゆるメガビタミン主義の主張のもとになったものである。この分子矯正栄養学は、分子生物学と無関係といってよい。それは、DNAレベル、遺伝子レベルのものではい。したがって、分子矯正栄養学は、私のいう分子栄養学とは無縁のものである。これを分子整合栄養学と訳す人もいるが、いうまでもなく、この栄養学も分子栄養学とは無縁のものである。
 分子遺伝学という科学の分野がある。これは、分子レベルの遺伝学の意味ではなく、DNAレベルの遺伝学の意味である。一般に「分子」を冠する学問は「遺伝子分子」、「DNA分子」を頭におくものとしてりかいされるべきである。ここにいう「分子」は、狭義の分子でなければならない。

ニュートリオロジー
 栄養学の英語はニュートリションである。私は自分の分子栄養学に「モレキュラー=ニュートリオロジー」という英語を与えたいと思う。モレキュラーは「分子」、ニュートリオロジーは栄養の論理学である。ある人は、ニュートリションはギリシャ語由来のことばであり、ロジーはラテン語由来のことばであるからおかしい、といった。それならば、ラテン語の栄養「アリメンタ」にロジーをつけて「アリメントロジー」とするのが無難かと思う。しかし、なにぶん、ニュートリションという言葉には伝統があり、なじみがある。そこで、古典につうじている識者にはがまんしていただいて、やはり、モレキュラー=ニュートリオロジーを以て、分子栄養学の英語にしておきたいと思う。ただ、このことばは長たらしいので、簡単に、ニュートリオロジーといってもよいことにしておく。

メガビタミン主義
 メガビタミン主義ということばがある。これは、コッフェルの造語だそうであるが、要するに、ビタミンの大量投与によって健康上の問題を解決しようとする考え方をあらわしている。
 周知のとおり、ポーリングはメガビタミン主義者である。そして、その原点は分子矯正栄養学にある。彼の栄養学によれば、ビタミンの大量投与は必然の帰結になってくる。そしてまた、私の分子栄養学も、これと同様にメガビタミン主義の方向をとる。その点のみに着目すると、分子矯正栄養学と分子栄養学とのあいだにちがいがないように見えてくるだろう。
 ポーリングが自ら語るとおり、分子矯正栄養学では、ビタミン大量投与の理論的根拠を示すことがない。それは、臨床的経験以外のものではないのである。それに対して、分子栄養学では、ビタミン大量投与の理論的根拠を示すことができる。というよりはむしろ、メガビタミン主義は、分子栄養学からの当然なのである。分子栄養学が、その理論を与えるのである。
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”栄養のバランス”という言葉は科学的でない。
大切なのは、「タンパク質とビタミンの絶対量」である。

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