うつ病の維持療法は何故6ヶ月なのか?

うつ病患者は抗うつ薬治療にて約1ヶ月で寛解状態となりうつ病の症状は消失します
しかし、この時点で治療を中断すると症状が再発しやすいので6ヶ月は抗うつ薬を継続して漸減中止する、と精神医学の教科書には書いてあります
しかし、どの教科書にも何故6ヶ月なのかについては全く記載がありません
どうして5ヶ月ではダメなのか、7ヶ月ではダメなのか?

以前、夏井睦先生の本に、傷の消毒を24時間毎に行うのは全く科学的根拠がないと書かれていました
うつ病の維持療法の6ヶ月というのもこれと全く同じです
今まで全く科学的根拠鵜がなく、昔話のような寓話として教科書に書かれている
今まで私は以前からこのことを疑問に感じていました
他の精神科医はこの事に何も疑問を感じないのだろうか、というのも不思議でした

しかし、先日長年の疑問だったその理由をやっと発見しました
鉄タンパク不足の女性のうつ病に対して、鉄剤を投与して、高タンパク低糖質食を指導すると、尿素窒素(BUN)、フェリチン値が改善するまで3-6ヶ月かかる事ということです
つまり、栄養学的データが正常化すれば抗うつ薬も中止できるという事実
即効性がある薬物に比べ、栄養療法の効果はどうしても月単位の時間がかかります
鉄タンパク不足によりうつ病になったのですから、鉄タンパク不足が治ればうつ病も治るという単純な理由です

むろん、6ヶ月で生物学的なうつ病は治ると言うことですが、患者の気持ちは一筋縄ではいきません
うつ病の時の苦しさが再発することへの恐怖が強く、6ヶ月経っても抗うつ薬を止めたくないと言う患者も多いのです
生物学的には治っていても、心理学的には治癒していない状態と言えます
その場合、寛解状態を維持して時間の経過とともに不安、恐怖が和らぐのを待つのも必要でしょう
多くの患者では、不安、恐怖が和らげば、今まで飲み忘れることなく規則的に服用していたのが、服薬し忘れるようになります
そうなるとそろそろ中止しても良い時期だと判断しています

一方、高齢者の脳血管障害や脳変性疾患に伴ううつ病は、当然ながら薬を6ヶ月経っても抗うつ薬を終了するわけにはいきません
また、男性のうつ病は原因が異なりますからこれとは異なる指導が必要となります
しっかり睡眠を取れば治りますので、”いつまでも残業せずに早く帰ってしっかり寝なさい”と指導します
睡眠が確保できれば維持療法は必要ありません


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