基礎から学ぶビタミンC-1

三石巌:全業績ー8、ビタミンCのすべて、より

1.ビタミンCとは
 アスコルビン酸には、D型とL型と、二種の異性体がある。両者の、分子を構成する原子の相対的位置は同じなのだが、空間的な形において、右手と左手の関係のような、実態と鏡に映った像との関係のような立体的な違いがあるのだ。D(dextro)は右手、L(laevus)は左手と考えて良い。Dアスコルビン酸は右手アスコルビン酸、Lアスコルビンサンは左手アスコルビン酸ということだ。
 野菜や果物に含まれているビタミンCはLアスコルビン酸である。われわれは、Lアスコルビン酸をビタミンCとするのであって、合成品と天然品とは、Lアスコルビン酸である限り、いかなる点でも区別することはできない。現実に市販されているビタミンCは、例外なしに合成品と考えるべきである。天然物からこれを抽出するには、労が多く、高価になるばかりだ。そして、得られた物質は、天然品と、いかなる点でも相違がないのである。

2.サルや人間はビタミンC合成能力がない
 鳥でも牛でも犬でも、ビタミンCを体内でつくっている。そして、モルモットやインド産のコウモリなど、わずかな例外をのぞけば、ビタミンCの自給ができないのは、サルと人間だけである。最も進化した動物のみが、ビタミンC合成能力を欠くのだ。この事実は、動物進化の過程で、サルが出現した段階で、ビタミンC合成能力が失われたことを示している。サルという高等動物は、ビタミンC合成という作業から解放され、そのために浮いたタンパク質やエネルギーによって、高等動物たるにふさわしい能力を獲得したのであった。
 ところで、サルが突然変異によって失ったものは何かというと、Lグロノラクトン酸化酵素という名の酵素である。
 一般に哺乳動物の肝臓では、血糖(グルコース)からビタミンCを作っている。その過程には、図に見るとおり、ブドウ糖から出発して五段階の変化をたどる。突然変異は、その四段階目の代謝を、酵素の欠落により消し去ったのであった。

3.人間がビタミンCを自前で作れるなら
 現実にわれわれにとって最大の問題は、もし自前でビタミンCの生合成をおこなっていたとしたら、その量はどれほどか、ということである。なぜならばそれは、われわれが意識的に摂取しなければならないビタミンCの量にほかならないからである。とはいっても、われわれが、この量を知ることは困難である。
 自前でビタミンCを合成する動物で調べた数字をたよりに、推理の手をのばすほかに、方法はないだろう。ただし、変温動物においてはストレッサーが少なく、ビタミンCの要求量も少ないから、これを参考にしてはまずい。やはり、哺乳動物をもってこなければいけないのである。
 そこで、参考にすべき下等動物のデータをあげてみよう。もっとも、正確な研究はラットを対象としたもののみで、大型哺乳類には全く手がついていない。ラットの肝臓が一日に合成するビタミンCの量を、体重60kgの成人に換算すると、1.7~3.4グラムとなる。これだけのビタミンCをとっていれば、ストレッサーがゼロに近いときなら、血中ビタミンC濃度は正常に保たれる。この数字は、ストレスによってはねあがる。
 アメリカの動物栄養委員会が1962年に報告したところによれば、サルの場合、ビタミンCの一日必要量は体重一キログラム当たり55mgである。体重60kgの成人の場合に換算すれば、これは3.3gとなる。また、モルモットの場合は体重1kgあたり42~167mgである。体重60kgの成人にこれを適用すると、2.5~10gとなる。人間がもし自前でビタミンCをつくるとしたら、その一日量は2~20g、というところだろう。
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まとめ
1)ビタミンCは天然、合成は関係ない。ビタミンBも同じく関係ない。安い合成品で問題ない。
2)ビタミンCはグルコースから作られる。形が似ているのも納得できる。他のビタミンでグルコースから作られるものは、多分ないはず。
3)ビタミンC必要量、一日量は2~20gということは、ビタミンCを飲んでいない人は全員ビタミンC不足。ビタミンC不足が代謝障害を引き起こしている。
4)ストレスがあるとビタミンC需要は数倍に跳ね上がる。

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