菊地秀行の『吸血鬼ハンター(41) D-暁影魔団』(朝日文庫,2023年』を読了。シリーズ41作目。
今年はシリーズ開始40周年らしい。それだけ続いてきたことは驚異的ではある。しかしその続き方が問題だ。一つの長大な物語が40年にわたって力強く続いているわけではなく,Dが活躍する様々なエピソードが40巻近く積み上げられてきたというのが実情である。超巨大な短編集とも言えるだろう。あえて意地の悪い言い方をすれば,物語を継ぎ足しに継ぎ足して,ようやくここまでたどり着いたという感じがする。
Dは圧倒的な戦闘力の高さを誇る孤高の存在であるが,本作ではその壮絶なまでの強さと美しさを楽しめるシーンはかなり少ない。おそらくシリーズ始まって以来,最低レベルの露出なのではないだろうか。Dを主人公と呼んでいいのか,正直微妙なところである。
作者はもはや惰性でDの物語を書いているのではないか。思わずそんな疑問を抱いてしまうほどストーリーも淡白だ。そろそろすべての秘密を明らかにして,Dの旅路に終止符を打ってあげるべきだろう。