2019年5月11日 Text by たろ a.k.a. TAROO-METAL
Elevator Girl / BABYMETAL
2019年5月10日配信開始
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まず2分44秒という曲の短さにびっくり。これはBABYMETAL史上もっとも短い曲である。2ndアルバム「METAL RESISTANCE」以降にリリース（配信）された新曲を見てみると，“Distortion”が3分5秒，“Starlight”が3分37秒だったので，“Elevator Girl”はその流れをくむコンパクト仕様だと言える。それにしても約2分半というのは実に短い。4分超の"KARATE"や5分超の"Road of Resistance"の頃とは隔世の感である。ちなみに今までの「最短曲」は“GJ！”の2分57秒だった。
曲の構成もいたってシンプル。起伏に富んだ展開はなく，最初から最後まで全編サビのようなキャッチーさを前面に押し出して突っ走っている印象だ。悪く言えば一本調子とも言えるが，この点は“Dsitortion”に似ていると思う。
独特の歌詞世界や曲全体のポップな雰囲気は“あわだまフィーバー”っぽい（曲の長さはまったく違うが）。サウンドやリズム感，メロディラインにも“あわだまフィーバー”に似たテイストが感じられる。今までのBABYMETALにはないオシャレ感を身にまといながらもポップかつヘヴィ。バックの轟音に埋もれることなく，暗闇に差し込む一条の光のようなSU-METALの歌声も健在だ。BABYMETALの個性と多様性を存分に体現している，実に〈らしい〉曲だと思う。
もう一つ注目すべきはSU-METALの歌声にエフェクトがかかっていること。明らかに加工されているのは最初のサビに至るまでの冒頭40秒ほどだが，BABYMETALをBABYMETAL足らしめている〈生命線〉がSU-METALのヴォーカルにあることは誰もが認めるところ。その彼女の歌声を加工するというのは，ある意味では冒険だ。結果としては曲のカッコよさにマッチしているので，この試みは正解だったと言えるだろう。
〈2分44秒という短さ〉と〈シンプルな構成〉，〈キャッチーなメロディの洪水〉というのは，ほぼ確実に「音楽はストリーミングで聴く」というトレンドを踏まえた結果だと思う。今は「頭の15秒」を試聴してピンとこなければ無視される時代。「どこを切っても印象的」であるためにはキャッチーなメロディをふんだんに盛り込む必要があるし，曲が長いと飽きられて途中で別の曲に「耳移り」してしまうリスクがある。音楽が消費される現代において「曲」が生き残るためには，“Elevator Girl”や“Distortion”のような特性を備える必要があるのだろう。
しかし，個人的には“イジメ、ダメ、ゼッタイ”や“Road of Resistance”のような「メタルのお約束」を踏襲した曲を聴きたいという気持ちがあるのも事実。メタルの様式美に酔い，ギターリフのかっこよさに痺れ，サビを一緒に歌いたくなるような曲――それは〈3分弱の曲〉や〈全編がサビのような曲〉では体験できない「メタルの素晴らしさ」なのだ。「消費されるものとしての音楽」を追求するのは虚しいし，あまりに刹那的。じっくりと聴き込んで楽しむことができるような曲も必要だ。
BABYMETALは革新性と多様性に富んだアーティストなので，“Elevator Girl”の様ないわゆる「売れ線狙い」が今後の主流になるとは思えない。今年リリースされる予定の3rdアルバムには，メタルをBABYMETALなりに解釈した多種多様な楽曲がずらりと並ぶことを期待したい。
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