【超和訳】「Metal Hammer Summer 15 Issue 273」の特集を全文訳! | たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

趣味的なことを中心に,いろいろと思ったことを徒然なるままに語ります。映画/本/スポーツ/世の中/旅行/音楽(ヘヴィ・メタル)/BABYMETALなど。

BABYMETAL 世界が衝突する時

彼女たちのことが好きであろうと嫌いであろうと,確かなことが1つある。それは,
BABYMETALが何年にもわたってこの宇宙に一撃を食らわせる,最も物議を醸すバンドだということだ。彼女たちの直近のUK侵略に際して,Metal Hammerはカオスに満ちた72時間の密着取材をさせてもらった。(文:Eleanor Goodman,写真:Mick Hutson)

金曜日の午後,私たちはDownload Festivalのアーティスト・エリアにあるドレッシング・ルームをうろついていた。彼女たちがそこにいる。リード・シンガーのSU-METALと,その傍らにはバック・ボーカルを務めるYUIMETALとMOAMETAL。トレードマークである赤と黒の衣装を身にまとった,無邪気でkawaii,メタルでできたマーマイト。彼女たちはこの2年でメタル・シーンに衝撃を与えた最も大きな存在であるが,しかし本当にメタルなのかどうかで意見を二分してきた。そしてこれらすべての議論がいつも笑顔の3人の少女たち降りかかる。彼女たちは私たちに会いたがっているという。私たちは諸手を挙げて歓迎した。最近,調子どう?

「絶好調DEATH!」彼女たちは顔を輝かせながら,声をそろえて叫ぶように言う。そして正しい言葉を探して一瞬固まり,「Golden Godsが楽しみDEATH!」

BABYMETALはこの日,Downloadで公式にプレイする予定はない。だが彼女たちはDragonForceのセットでサプライズ登場することになっている。DFの面々が,いつも少女たちのバック・バンドを務める「神バンド」の代わりだ。月曜日にあるMetal Hammerのセレモニーのための実際のリハーサルとなる。

もちろん,BABYMETALがUKのフェスティバルに出場するのは今回が初めてではない。去年の7月5日,彼女たちはSonisphereのメイン・ステージでデビューし,絶賛されたテックメタルのTesseractよりも高い評価を得た。その2日後にはロンドンのForumをソールド・アウトにし,11月にはBrixton Academyで凱旋公演を果たした。読者がこの記事を読むまでに,彼女たちはキャパ25,000人の幕張メッセで自身最大規模となるショウを行っているはずで,さらに8月にはReading and Leeds Festivalに出場予定だ。そしてロック・スターとの自撮り。Limp BizkitやKissにMetallicaなど多くのスターが3人と写真に収まり,Twitterで拡散された。好むと好まざるとにかかわらず,BABYMETALは私たちの世界における地震のような事象であり,世界の中心をリフで揺さぶり,その強固な殻に回し蹴りと笑顔でヒビを入れるのだ。今週末,Metal HammerはBABYMETALに初めて72時間密着。彼女たちは世界征服の旅を続け,私たちはBABYMETAL現象を直接観察することとなる……。

まず初めに,彼女たちは今日誰に会いたいのか訊いてみた。答えはまさしくメタルそのもの。「Judas Priestさん!」 BABYMETALの創始者でありマネージャーであるKOBAMETALは,1990年にリリースされた”Painkiller”アルバムのアートワークを模したBABYMETALのTシャツ(3人の少女がバイクに乗っている)をワクワクしながらプロデュースした。FOXスサインを掲げながら,3人はそのTシャツを身につけてポーズを取る。私たちはiPhoneでその瞬間を喜んで撮影した。

周りにはスターたちの姿――Corey Taylorが笑顔でうろつき,その後に続く小さな集団は私たちの視界に入らないようにと後ずさりするふりをする。その後私たちは,バンドのテレビ出演のために,閉鎖的なアーティスト・エリアからより制限の少ないメディア・エリアへと移動した。反応はLAの通りを歩くKardashian家の人たちのようだ。半狂乱となったフォトグラファーとセルフィーを撮ろうとする人たちが,少女たちを一目見ようとお互いに肘で押し分けて進む。DragonForceのリーダー,Herman Liが人だかりの中,私たちの背後に現れた。「今まで一緒にプレイしたことはないんだ」と彼は明らかにした。その表情には責任の重さと時差ボケが入り混じる。「昨日は眠れなくてね……」

「夢が本当に叶ったんだなって思います」
BABYMETALでの生活の話になると,リーダーのSU-METALは満面の笑みに。


DragonForceがBABYMETALとの共演にわくわくしている一方で,多くのメタラーは「でっちあげだ」と彼らを非難した。芸能事務所で働いていた大のメタル好きであるKOBAMETALが自身の重大なビジョンを実現するために3人の歌手をリクルートした時,彼女たちは「さくら学院」と呼ばれるアイドル・グループに所属する小学生と中学生だった。彼女たちのバックの神バンドは「キツネ様によって召喚された」ミュージシャンたちが代わるがわる務め,楽曲は名を伏せられた複数の作曲家によって書かれる。ある作曲家が匿名を条件に質問に答えてくれた。彼はメタルとともに育ったが,”ド・キ・ド・キ☆モーニング”が彼に強烈な印象を与え,その後BABYMETALの作曲コンテストに応募したのだという。

「僕は何か新しいこと,人々の目を日本に向けさせるような,メタルに関わることをしたかった。それが,ポップスと僕が愛するメタルを融合させようと思いついた経緯です」とKOBAMETALは説明する。

バンドのために選ばれた瞬間の喜びを語るとき,BABYMETALに関わる人たちはディズニー・クラブ流の10代の精神に満たされていることは明らかだ。おしゃべりするために私たちが座ると,彼女たちの側近が群がってきた――カメラマン,セキュリティ,メイク係,うちわで扇ぐ女性,そして細身でいつものポニーテールにパーカー姿のKOBAMETALが目を光らせている。

「小さいときからいつも歌手になりたいと思ってました。そして今,たくさん歌って踊ることができて,夢が本当に叶ったんだなって思います」 クルーが撮影を続ける中,ツアー・マネージャーであり通訳でもあるNoraを通して,17歳のSU-METALが熱く語る。MOAMETAL(16歳)はこう言う。「子どものとき,いつも誰かの幸せの理由でありたい,誰かが笑顔になれる理由でありたいって思っていて,今まさにBABYMETALでそれができてるなって感じてます」 YUIMETAL(16歳)は自身のキャリア選択にとって英雄崇拝的なものがあったと告白する。「小さいころは(――「もちろん彼女たちはまだ子どもだ!」とNoraが通訳をしながら付け加えた)歌手になりたくなかったんですけど,前のグループでのSU-METALの姿を見て,それがすっごく好きで。それで(歌手に)なってみたくなったんです」とYUIMETALは微笑んだ。

BABYMETALは日本のゲームやマンガ,映画の登場人物を思い起こさせるかもしれない。しかしKOBAMETALのミーハーな融合のアプローチによって,日出づる国において彼女たちは実際に例外的な存在となる。

「彼女たちはあんなにキュートなのに,なんでヘドバンしてるんだ?」
「ヘドバン」編集長のUmeはどれだけ多くの日本人がそう感じているかを説明する。


「日本では,アイドル・グループは巨大マーケット。メタルは小さなマーケットです」 BABYMETALを見出した後に「ヘドバン」という日本のメタル雑誌を創刊した梅沢"Ume"直幸は語気を強めて言う。「BABYMETALはその中間。なぜなら,その2つの混合だからです。彼女たちを見た人は,BABYMETALはアイドルだ,でもやっていることはメタルだと考え,そしておそらくそれが妙なことだと考えます――とってもカワイイ女の子たちなのに,なんで彼女たちはヘドバンしてるんだ?」

同じような文化的混乱に関するKOBAMETALの証言はもっとわかりやすい。「僕は一般の人たちの代表ではありませんが……母にCDをあげたんです。彼女はメタルなんて聴きません。『これはとんでもなく面白いね……』というのが彼女の最初のリアクションでした(笑)」

Umeは,BABYMETALが口コミによってゆっくりと大きくなったのを見てきたが,シングルを連発する企業の機械のように働くアイドル・グループとは対照的だとも言っている。

「アイドル・ファンはバカじゃありません――彼らはお金の匂いを嗅ぎ分け,少年少女の背後にどんな企業がついているのかがわかるんです」 彼はそう説明する。「しかし実はBABYMETALは反対なんです。BABYMETALが生まれた経緯を見ても,大金の臭いを嗅ぎつけることはできません。彼女たちはアイドル・グループじゃなくて,自然な感じがするんです」

Downloadの話に戻ろう。時刻は午後7時。私たちはMarverick Stageの後ろ側にいる。BABYMETALは初めてのコラボレーション――正真正銘のメタル・バンドとの――に向けて,そこで準備をしている。DragonForceがオーディエンスをズタズタに切り裂いていたとき,会場の外では雨が激しく打ちつけ,フェスの雰囲気は湿り気を帯びていた。チームBABYMETALは集合し,お互いに手を差し出して重ねあわせると,勝ち誇ったようにその手を高々と掲げた。彼女たちはステージへと跳び出して行き,神曲”ギミチョコ!!”でクルクルと回る。耳にこびりついて離れないコーラス。聴衆は大興奮状態だ。無数のスマホも掲げられる。もちろん取材ピットには40台のプロのカメラ。3人が「Thank you!」と叫ぶと,ベーシストのFredが手でハート・マークを作って額の前に押し出し,彼女たちに向かって恭しくお辞儀をする。

ショウの後もBABYMETALは興奮を失ってはいなかった。もっとも,いつものように鍛えあげられたプロ的礼儀正しさ伴ってはいたが。

「ステージでの感じをつかむためにDragonForceさんが私たちの最近のツアーのビデオを観てくださっていたと今日聞いたとき,『わぁ!本気で私たちがやりやすくなるようにしてくれてるんだ』って思って,とっても嬉しくなりました」とMOAMETALがうなづきながら言う。「DragonForceさんは,神バンドの音に近づけようとしてくれたんです。実際そう感じることができました。とっても楽しかったですし,このような機会をいただいたことに対して感謝の気持でいっぱいDEATH!」

そして私たちは,Judas PriestとSlipknotを観るためにBABYMETALと別れたのだった……。

「彼女たちは楽しんでますよ。大人の方が大変です!」
KOBAMETALはBABYMETALがもたらした目のまわるような生活を振り返る。


次に私たちがBABYMETALに密着したのは日曜日,ロンドンにあるIndigO2で行われるGolden Godsのリハーサル現場だ。人払いされ,写真撮影は禁止。雰囲気はよりリラックスしている。昨日,オーストラリアのポップス・グループFive Second Of Summerを観にWembley Arenaへと向かう前,彼女たちはCamden Marketでショッピングをした。友だちへのお土産を買うためだ。

「彼らのファンはメタル・ファンよりもっとハードコアなんですよ!」 絶叫を目の当たりにしてKOBAMETALが説明する。BABYMETALからの反応は概して野心的だ。

「彼女たちはあらゆる所へ行き,すべてを見るんです。まるで『ここでいつかプレイするぞ!』とでも言いうように」とNoraが通訳する。

Five Second Of SummerとSlipknot。女の子たちはどちらが好きなのだろうか?

彼女たちはおしゃべりしながら,クスクスと笑い出す。「両方DEATH!」とNoraが言う。

今日は終日DragonForceとの練習だ。彼女たちがどう影響を与え合い,”Road Of Resistance”をどのようにしてやってのけるのかを訓練する。この曲は去年彼女たちがコラボして作った曲で,Herman Liは「Guitar Hero」で有名な”Through The Fire And The Flames”と同じくらい「速い」と言っている。

「曲作りをするときに思ったんだ。『複雑でクレイジーで,とことん演奏するのが難しい曲にしてやろう。どうせ俺たちがライブでプレイすることはないんだから』って」 彼はニヤッと笑う。「ラッキーなことに俺たちは今長いツアー中だ。だからすぐに曲を学ぶことができる。でも普通は選ばない曲だよね……」

BABYMETALが帰国後のショウに備えていくつかの秘密の動きをチェックするためにドレッシング・ルームに引きこもったので,私たちはチームで残ったメンバーたちと一緒にバック・ステージのラウンジに座り,袋に笑ったキャラクターが描かれた日本のポテトチップスを食べた。赤いドアの向こう側から”ド・キ・ド・キ☆モーニング”がガンガンと力強く鳴り響く。姿を現した彼女たちは,貪るように水を飲んでいた。

週末にかけて,無数の人たちがBABYMETALを「キュートだ」と評したが,その理由は明快だ。幸せなお菓子。ポップなフック。ツアーTシャツにパジャマのパンツという今日のオフ・ステージの衣装。ステージ上やカメラの前に立っていない時,彼女たちはこんな風に振る舞う――この日の夜,会場を後にする時,YUIMETALはスケート・ボードをくっつけたスーツケースに乗ってドレッシング・ルームから飛び出してきた。しかしBABYMETALでいる時は,多くのハード・ワークと献身を要求される。午前中は家庭教師について学校の課題,午後はバンドのあれこれ。彼女たちの毎日は精神的にも肉体的にも過酷であるに違いない。

BABYMETALの面倒をどうやってみているのかと尋ねると,KOBAMETALは「彼女たちはツアーを楽しんでますよ」と言う。「彼女たちにとっては,たぶん難しいことじゃないんです。明らかに大人たちにとっては難しいですけどね(笑)。こんな経験は日本にいたらできません。彼女たちは外国の文化にとても興味を持っているし,たぶん教室で先生と一緒にいるクラスメイトの誰よりもたくさん英語を学ぶでしょう」

KOBAMETALに父親のような感覚はあるのだろうか。

「確実にあります。彼女たちは僕をお父さんって呼びますし,”ツアー・ママ”もいるんですよ。一緒にツアーをしている家族のようなものです」

たとえ彼女たちがスケジュールがきついと思っても,誰もそのことには気づかないだろう。彼女たちはいつもクスクスと笑っているし,バンドに関する質問は極めて慎重に扱われる。彼女たちは年齢の割に賢そうでありながら,その幼い外見の故に,突っ込んだ質問をすると彼女たちを困らせてしまうのではないかと不安になる。それは奇妙なコントラストだ。

会場のステージに立てば,BABYMETALはプログラムされたロボットのように正確無比にハイオク満タンで”ギミチョコ!!”を演じきる。DragonForceは敬意を表して彼女たちにスペースを空ける。2回目なので,彼らはやりたい放題。もう何年も一緒にプレイしているかのようだ。KOBAMETALは拍手をしながら満足そうに親指を立てる。そして”Road Of Resistance”だ。上手くいったとわかってDragonForceの面々は安心したようだ。さらに数回通した後,同時にジャンプして全員で挨拶する練習をすると,多くの笑いが沸き起こる。「See you!」と少女たちが叫び,想像上のオーディエンスに手を振る。DragonForceは「See you!」とコミカルな低い声で返事をした。

一度3人が姿を消した。街でミーティングする前に,KOBAMETALがHermanと改善点を話し合う時間だ。少なくとも大人たちにとっては,BABYMETALはけっして立ち止まらないように見える。熱烈なメタル・ファンとして,彼はたった今起きた出来事に恐れおののいている。

「DragonForceと同じ部屋の中で座ってるなんて信じられません!」 バンドの方を身振りで示しながら彼は語る。

カオスとサーカスのさなかにあって,KOBAMETALは生涯のアイドルと会話し,ステージと音楽を共有するという夢の中に生きているかのようだ。そして,BABYMETALもまた自身の夢の中を生きている。それは象徴的な関係だ。

「BABYMETALはメタルじゃないと僕は思います。BABYMETALはBABYMETALです」
バンドはポップスとメタルの文化を新しいジャンルへと融合しようとしている。


Golden Godsの日だ!そしてそれはBABYMETALがUKで行う5回目のショウの日でもある。UKは日本とアメリカに次いで彼女たちが最も多く訪れた国であり,それは私たちがBABYMETALにとりつかれていることの証左でもある。

KOBAMETALは自身のバンドが海外で成功したことに驚いている。彼女たちはイタリア,スイス,フランス,ドイツ,カナダ,メキシコの熱狂的な人々の前でもプレイしてきた。彼は,BABYMETALが普通ではあり得ない地点まで到達した日本で最初のグループだと考えている。

「今まで日本を出て海外に挑戦しようとしたバンドはたくさんありましたが,それが大きなグループではなく,マイナーな少女たちのグループだったことはありません」とKOBAMETALは驚きを隠さない。

彼女たちの海外での成功がその音楽性によるものであろうと,あるいはその"目新しい"要素によるものであろうと,もう一つ問題がある。いずれにしても,「ヘドバン」のUmeによれば,海外での注目度の高さが,BABYMETALの母国における驚きと注目の要因なのだ。クリスマスには,日本版BBCとも言うべきNHKが,London Brixtonのショウの映像をフィーチャーしたBABYMETALの特番を放送した。「みんなBABYMETALの存在に本当に気づいてはいません。日本国内ではあまり広告を打たなかったからです。でも海外では十分な広告活動をしたんです」とKOBAMETALは言う。「彼女たちはSonisphereでプレイし,Lady Gagaのサポート・アクトを務めました。そしてこれらすべてのニュースが日本へともたらされて,みんなが気づいたというわけです」

Umeによれば,日本のメタル・ファンは2つのグループに分かれる。BABYMETALが「すごく良い」という人たちと,「最悪だ」という人たちだ。しかし非常に多くの人たちが何度も何度もその立場を変えている。その裏で,ポップ・ミュージックのファンたちがヘヴィ・ミュージックを漁り始めた。

「BABYMETALはアイドル・ユニットとしてスタートしました。だからファンは明らかにアイドル・ファンです。しかし今や彼女たちは海外で正真正銘のメタル・フェスティバル出場しているので,真正のメタル・ファンたちがBABYMETALのファンになりつつあります。そしてアイドル・ファンはこう考え始めたのです。『よし,わかった。BABYMETALがメタルだというなら,メタルを聴こうじゃないか』と」Umeはそう説明する。「だから単なるBABYMETALファンが存在するのではなく,アイドル・ファンから育ったメタル・ファンがいるのです」

イギリスでも,反応は混在していた。ネット上にはBABYMETALがメタルという言葉に可愛らしいイメージを与えたことに対する批判があふれていた。今夜,つまりメタルのカレンダー上でもっとも重要な日,BABYMETALはポップ・アイドルのスタイルでヘヴィネスと再び交わり,メタルの遺産を自身の新たな未来へと持っていく。彼女たちの予告編はBrian Mayのそれとは真逆だ。Naparm Deathのメンバーが近くをうろついている。FreshはGene Simmons,Dave Mustaine,Duff McKagan,Butcher Babies,Killing Joke,Bring Me The Horison,Scott Ianを含むBABYMETALセレブ写真カルトに入会した。KOBAMETALにとって,ジャンルをまたいだこの結びつきは,まさにBABYMETALのポイントなのだ。

「僕はBABYMETALがメタルだとは思っていません」 KOBAMETALがいくぶん驚いた調子で言う。「BABYMETALはBABYMETALです。もしBABYMETALが10年前に登場していたら,僕はメタルを滅ぼすと言ってバッシングする一派の1人だったでしょう。でも僕がBABYMETALをつくろうと思ったのは,あらゆる音楽のジャンルの中で,メタルだけが多くの異なるタイプの音楽に対してオープンだからです。ラップ・メタルもあればメロディック・メタルにパワー・メタル,ブラック・メタルもある。メタル・シーンは非常に閉鎖的であると同時に,あらゆるタイプの音楽に対してオープンでもあるんです。それが,BABYMETALが今ここに存在する理由です」

KOBAMETAL,YUIMETAL,Ume,そして名を伏せた作曲家たちの全員がBABYMETALに関して「新たなジャンルを創造する」という言葉を使う。マーケティング用語のようだが,たとえポップスからもメタルからも支持を得られなかったとしても,おそらくそれは賢明な狙いなのだろう。

「ポップスと呼んでもいいし,ヘヴィ・ミュージックと呼んでも構いません。ですが実際にはどちらにもフィットしません。なぜならそのコンビネーションだからです」とKOBAMETALは論じる。

「メタルはいつだって楽しいものだった。だからみんな彼女たちが好きなんだ」
レーベル・マネージャーのMax VaccardはBABYMETALをKISSのようなシアトリカルなバンドと比較する。


だが今は,リハーサルが実を結ぶかどうかを見極める時だ。IndigO2の中には群衆が押し寄せている。あの奇妙なジャンルの結合体が再び壁にあたって跳ね返ると,"ギミチョコ!!"のコーラスパートを一緒に歌っていたグループの目の前に,”Road Of Resistance”で使用するフラッグを手に少女たちがやって来た。ここで目にしたのは,シンプルなBABYMETALのショウだけだ。しかし日本では,棺桶,寺社,スモークと炎の渦,そして熱狂を満たすためにデザインされたヘヴィ・メタル仕様の花火といったコンセプチュアルなショウとなる。

「あるショウでは,巨大な女神像がありました。ショウの終盤で,その像は崩れ落ちたんです」とUmeが回想する。「Metallicaの”...And Justice For All tour”を見たことがあるなら,KOBAMETALがそこからアイデアを得たことがわかります。それを見た多くの人たちは最初から『ああ,これは爆発するぞ!』と思っていました。メタル・ファンたちはどのバンドが次のモチーフになるかを興奮して考えます。Dioか?Manowarか……?」

このちょっとした拝借はショウとグッズに限ったことではない。彼女たちの音楽についても同様だ。KOBAMETALは一貫してオタクのようにメタルの歴史を参考にしている。

「彼はMetallicaやSabbathや他の多くの有名バンドの音楽からフレーズを取り出して,BABYMETALの曲にはめ込んでいます」とUmeが説明する。「例えば,"おねだり大作戦"ではLimp Bizkitを使っています。ビーチでの宝探しみたいなものです。BABYMETALが新曲を発表する度に,ファンはそういった小さな断片を見つけるために曲を聴いて,聴いて,聴くんです。まるでヒップ・ポップのサンプリングです」

BabyDragonがGolden Godsのショウを終えると,そのパフォーマンスに対して大歓声とFOXサインが掲げられた。彼女たちを誹謗中傷する人達がいることさえ忘れさせるほどだ。彼女たちはどこへ行こうとも,飛び上がらんばかりの喜びの感情の痕跡を残していく。

「メタルはいつだって楽しいものだから,みんな彼女たちが好きなんだと思います」とMax Vaccaroは言う。彼はBABYMETALが契約しているヨーロッパのレーベルearMUSIC(StratovariusやGamma Rayも所属している)のゼネラル・マネージャーを務めている人物だ。earMUSICはBABYMETALのセルフ・タイトルのアルバムを欧州デビュー作として再発したばかりだが,このアルバムは同レーベルに所属するアーティストが年間で売り上げるのとほぼ同じくらいの枚数を数日間で売り上げた。「メタルのあらゆるサブ・ジャンルではなく,KissやMotley Crueといった,今でも大成功を収めてツアーをしているようなバンドを考えてみてください。ピュアでエクストリームなメタルが素晴らしいパフォーマンスでプレイされることを,みんなが同時に楽しみたいのです。それが秘訣だと思います」

DragonForceのFredの反応はもっと感情的だ。「まるで2つの宇宙が衝突したようなものだよ。Slipknotみたいな低くて邪悪なサウンドだから実にブルータル。そして女の子たちは『イエーッ!』とくる。彼女たちはとってもキュートなんだ。BABYMETALファンの心の中には,ちいさな金色のハート(heart of gold)があって,BABYMETALを見た瞬間に,そのハートはとろけるんだよ」

BABYMETALはみんなのハートをとろけさせるのだろうか? Only The Fox God Knows。エバンジェリスト(福音の伝道者)たるKOBAMETALは言う。「もっと多くの人がBABYMETALの音楽を聴いてくれて,それがメタルに興味を持つきっかけになってくれれば,僕はそれで十分です」 一方で,少女たちはショウの後のパーティーのことだけを心待ちにしている。自力で勝ち取った,深夜のお菓子。でも,お気に入りのお菓子は何なのだろう? 返事はもちろん「チョコDEATH!」でキマリ。


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上記は「Metal Hammer Summer 15 Issue 273」に掲載された記事を日本語訳したものです。日本語としての読みやすさを重視したため,原文とはニュアンスが異なる箇所があります。あくまでも素人が趣味で訳した文章であることをご理解ください。


写真=BABYMETAL公式Twitterより。