松岡圭祐「探偵の探偵」を読了。
探偵の探偵 (講談社文庫)/講談社
¥637
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「万能鑑定士Q 」シリーズの著者による新シリーズが開幕した。
「万能鑑定士Q」と「探偵の探偵」は可憐なヒロインが主人公という点は共通だが,それ以外には似た所が見当たらないほどの別物。読む前は「もしかしたら似たような感じなのかな」と思っていtのだが,杞憂に終わった。
「Q」は「人が死なないミステリ」として好評を博した一方,「探偵の探偵」は人こそ死なないものの,バイオレンスが全面に押し出された印象だ。主人公であるヒロインの紗崎玲奈がボコボコに殴られるシーンが何度も出てくるのがとにかく衝撃的。
家族にまつわるあまりに切ない壮絶な過去を胸に秘め,いわばその復讐のために極めて暴力的な世界に身を投じた玲奈。何度も殴られ,蹴られ,血を流し,瀕死の重症を負いながらも決して屈することなく前進するその姿は,最近読んで衝撃を受けた「その女アレックス」のヒロインにも通じるものがあると思う。もしかしたら著者は「その女アレックス」に影響を受けたんじゃないかと勘ぐってしまうくらいだ。
玲奈の脇を固めるキャラクターも魅力的。探偵業界を知り尽くした須磨は玲奈の暴走をさながら父親然とした感じで受け止めるし,同僚の琴葉は玲奈のトラウマに間接的に関わりながら,ともすれば冷徹な復讐マシーンになってしまう玲奈の人間的な部分を自然と引き出している。終盤では警視庁という組織内にいながら一匹狼的な雰囲気を醸し出している窪塚も活躍。
ダイナミックなストーリーの魅力的なキャラクターの存在は,映像作品としても楽しめると思う。しっかりとお金をかけて,安易なキャスティングをしなければ十分見応えのある映画を作れるんじゃないか。
とても映像的で読み応えのある新シリーズ。早く続きが読みたい。