この場所で大変長い時間お世話になった。
他の仕事を模索していたが、なかなか見つからなかった。
そんな時、突然仕事が見つかる。
このセンターで飼育管理員という委託業務として夜6時から朝の9時までセンターにいるすべての犬をケアする仕事だ。
ただ、お盆休み、正月休みなど関係ない。
生き物を管理するためこのセンターは24時間365日必ず人がいなければならないのだ。
これは委託業務という形なので日当は頂けた。
パピーから引退犬まで様々な犬たちをケアする。
多い時で約60頭。しかも一人でこなした。
というか、1日一人と決まっていた。
夏は良いが冬は氷点下になる場所。何度も滑って転んだ。
繁殖犬がいれば仕事の合間を見て産室ウェブカメラで様子を確認。
体調管理。巣作り行動が出れば獣医に連絡。
出産が始まればお手伝いをし、出産にも立ち会った。
子犬を取り上げたこともある。
命の誕生は本当に神秘的なものを感じる。
血を見ると参ってしまう私だったが、そんなこと関係なく感動して泣いた。
生まれて数週間たったパピーに関してはご飯をあげたり、体調管理や夜部屋作りにうんちまみれになった犬舎掃除。
可愛いからといって写真を撮りたい時もあったが、忙しすぎてそんな暇などなかった。
けれど朝一は何度か撮れるチャンスがあった。
訓練犬、PR犬などの成犬たちの朝と夜のゴハン。次の日のゴハン作り。
排便処理。体調管理。
引退犬たちは、朝夜のゴハンや、投薬、排便処理。体調管理。
ゴハンも高齢になると流動食になり抱きかかえながらスポイトのようなもので、気管に詰まらないように与える。
排便も自力でできない子は膀胱を圧迫排尿させなければならない。
仮眠をとる時間も許されていたが、引退犬は夜泣きがひどく、なだめながら引退犬と一緒になって寝たりもした。というか、寝れなかった。
老衰や病気で亡くなった子もいる。
ここは命の誕生もあるが命が尽きる子も多い。
命の始まりから終わりがここにはある。
複雑な気持ちだった。
今ここで写真に載せた犬達も大半は亡くなっている。
最後に施設施錠、点検、管理。夜の仕事はこんな具合。
順調にいって夜の仕事は11時頃に終わる。
出産があれば引き続き出産対応。
朝は4時半に起床。自分の朝ゴハン。子犬のフードふやかし。引退犬のケア。
冬は外の水道管が凍っているためお湯で解凍処理。
朝9時までの朝礼に間に合わせなければならなかったので時間との勝負だった。
段取り良く進めなければ間に合わない。
朝礼ではその日起こった出来事を訓練士、担当スタッフに報告。排便の様子なども。
昼間は、デモンストレーターとしてボランティア活動。
団体様、来館者のデモンストレーション担当。施設案内対応。
丸1日センターにいたこともある。
ほぼ休みなどなく大変だった。
でもとても充実していた。
生きている実感が湧いた。
自分にしかできないことだったからだ。
自分だけのポジションを見つけられたような気がした。
順調に進んでいるころ、転機が訪れる。
普及啓発活動を担当するスタッフを進められた。
要は当時私が行っていたボランティア活動の職員バージョンといったところだ。
内容はさらに濃くなり忙しくなる。
正社員ではなくパートという立場だったがやってみることにした。
ただ、飼育管理員の仕事は辞めなくてはならなかった。
スタッフとなる以上、委託業務を行うことはできないからだ。
寂しい気持ちもあったが、昼と夜との1日中動きっぱなしの生活はさすがに答えていた。
後遺症もあったし。
だからスタッフとして好きな仕事を昼間みんなと同じように仕事をしたかった。
でも、スタッフになったからには責任がついてくる。
いくらパートと言えどもお金をいただく以上プロなのだ。
また、この協会は9割以上が寄付募金で成り立っている。
職員の給料もここから出ている。出どころは寄付募金なのだ。
今まで以上に頑張らなければならない。期待に答えなければならないと思った。
私はよく周りから、まじめだと言われることが多い。というかバカ真面目なのだ。
神経質で変なところで頑固なところもある。
そんな性格が祟ってか、この仕事も僅か1年で辞めることになる。
仕事も一人前にできないくせに、張り切り過ぎて体調を崩したのだ。
出来ないものを出来ないと言わず、自分で何とかしようと出来るまでこなしていた。
とことん仕事は引き受けていた。早く上に立つ人間になりたかったからだ。
時間がかかった。
休日も仕事をしていた。
自分にはできると思っていた。
なんとかしなきゃと焦っていた。
要領が悪く、下手なのである。
自分の体調管理を無視してひたすら仕事をしていた。
ある時、周りからも痩せたと言われ久しぶりに体重計に乗ってみる。
45kgしかなかった。
正直焦った。
ヤバいと思った。
大抵私は55kgがベスト体重である。
なのに-10kgとは・・・。
不摂生な生活が祟り、ドクターストップ。
悔しかったが辞めざるを得なかった。
まただ・・・。なんでだ・・・。
いつもこうやって大きな壁が立ちはだかり続ける。
私はとても生きることに不器用で下手なのだ。
少し休みを取って考えることにした。
次回へ続く・・・。