【希望・卒業・そして未来へ・・・】その⑤。 | DOG LABS~WITH ALL ONE'S HEART~

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DOG(犬を) L・ LOVE(愛して)WITH(共に) A・ ALIVE(生きて) B・ BELIEVE (信じて)S・ SAVE (守る)ことを誓います。
WITH ALL ONE'S HEART・ ・・真心こめて。

 

結局2週間ほど休養をとった。

 

この2週間もの間、色々と考えたが続行することは不可能だった。

 

これは体調管理を怠った自分が悪い。

 

出来ないものを出来ないと言わなかった自分が悪い。

 

最悪の時には声が出なくなってしまった。

 

そこまで追い詰められていた。

 

悔しかったが、上司に退職の意を伝えた。

 

そして色んな人に迷惑をかけた。

 

 

そんな時、あの東日本大震災が起きる。

 

次の日には富士宮に震度6の地震が襲い、訓練センターもダメージを負う。

 

ラウンジ棟のガラスが割れ、デモンストレーション会場の天井が剥がれ落ちた。

 

直るまで来館者の出入りは禁止となった。

 

結局、私が最後に担当する予定だったデモンストレーションも中止となり、中途半端に終わった。

 

3月31日。

 

退職した。

 

 

 

それから、仕事を探しながら1カ月ほど自由に過ごした。

 

そんな時、訓練センターから1本のメールがあった。

 

『ビスケ』の引退式をするから見に来ないか?と。

 

『ビスケ』は盲導犬をしていた子で、若くして引退をし、PR犬として活躍したラブラドールとゴールデンのミックスの子だ。

 

私がデモンストレーターとして初めて活動する時も隣にいてくれた。

 

テストもビスケだった。

 

いつも一緒だった。

 

とても頼れる子だった。

 

そんなビスケが引退するという。

 

もう会えなくなると思うとなんだか気が抜けてしまった。

 

また、デモンストレーションをしたくなった。

 

最後くらい同じ時間を過ごしたかった。

 

退職はしたが、ダメもとで『1回きりでいいから担当させてくれないか』とお願いをした。

 

まさかのOKが出た。

 

そして引退式のデモは私はビスケと共にいつもと同じようにこなした。

 

そしてさよならをした。

 

 

ずっと余韻が残っていた。

 

犬と一緒に伝えることが楽しいと改めて思えた。

 

 

 

それから2カ月ほど経ち、他の仕事が決まる。

 

だけど他の仕事といっても前の自動車整備士の仕事に復帰しただけだ。

 

いつも仕事場には犬がいたので、何か心に穴が開いたような寂しさを感じていた。

 

離れてみると恋しくなるもんだ。

 

 

あと、心残りだったのは一番はじめにセンターへ出向く前の気持ちは果たせたかどうかだった。

 

訓練士にはなれなかったものの、人に助けられたのだから人のために役に立ちたい。

 

中途半端だった気がする。

 

いや、中途半端だった。

 

自分の事で精一杯だったのかもしれない。

 

それで終わっていた。

 

 

だから、私は再度ボランティアをすることにした。

 

車の仕事をしながら両立を試みる。

 

両立が下手な私だったが、強く伝えたいことがたくさんあったからだ。

 

ボランティアだったら自分の好きな日に活動することができる。

 

毎日ではない。

 

時間が空いている時に行けばいい。

 

また、犬たちに会えるし。

 

納得できるまでやってやろうと思った。

 

 

こんな不器用な私が、それから2015年の12月まで(公財)日本盲導犬協会認定のデモンストレーターとして活動することができた。

 

納得できるまでやることができた。

 

スタッフやボランティア仲間、関わった犬たちのお陰だ。

 

今まで共に活動したPR犬は20頭にもなる。

 

その子たちにも感謝しないと。

 

ビスケは今年、虹の橋を渡ったという。

 

安らかに。

 

また、助けられたね。

 

ありがとね。

 

 

そして、また仕事とボランティアを辞めようと思った。

 

これはつらくて辞めるのではない。

 

希望ができたのだ。

 

前に進もうと思ったのだ。

 

今、この仕事をしていて、これからの未来にメリットがあるのか?

 

お金じゃないだろう?

 

本当にやりたいことなのだろうか?

 

そうではないと。

 

 

あと、私の後に私と同じ志を持つデモンストレーターが増えたこと。

 

もう私がいなくてもやっていけると思ったから。

 

若手にこの思いを繋ごうと。

 

で、もう一つ。

 

人生の一区切りとして、もう一度訓練士を志したかった。

 

訓練士を仕事にしたかった。

 

そんな気持ちがずっと心の隅にあったのかもしれない。

 

人生一度きり。

 

やってやろうじゃないか。

 

もうたくさん歯を食いしばって何とかやってきた。

 

また、乗り越えればいい。

 

時間はかかるけど。

 

新たに希望を持つことができた。

 

次回へ続く・・・。