「ザ・ブランド・マーケティング「なぜみんなあのブランドが好きなのか」をロジカルする」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

 

 

「ザ・ブランド・マーケティング「なぜみんなあのブランドが好きなのか」をロジカルする」(スコット・ベドベリ&スティーヴン・フェニケル)

 

 

「SHOE DOG」「スターバックス成功物語」を読んで以来、ナイキも、スターバックスも、より好きになってきた。なんとなく類似性を感じて、この2冊を連続で読んだのだが、やはり思った以上にこの2社には共通するものがあると感じていたところ、この本に出合った。著者は7年間ナイキの広告部長をつとめた後、1995-1998年にスターバックスのマーケティング担当副部長をつとめた。


2社に共通するのは、「商品」そのものではなく、ナイキであればスポーツの歓び、スターバックスであれば居心地の良さ、といった「体験」や「価値」の提供をぶれない目的にしていること。その目的を達成するために、商品の機能や味を追求するし、関わる人に投資しているし、一貫したコンセプトの上で草の根的に(時にキャンペーンもするが)価値の訴求をはかっている。


シューズの反発性を〇%向上させる、のが目的ではなく、アスリートにもっといい体験をしてもらうため。こういう根源的な目的を見失わないことが、どの企業においても重要だ。



以下、備忘



「ジャスト・ドゥ・イット」


スニーカーではなく、価値を伝える。商品ではなく、ナイキの精神を伝える。
バスケットボール編、ランニング編、クロス・トレーニング編、ウォーキング編、「ジャスト・ドゥ・イット」をテーマにした1ダース以上のCMを制作した。20歳のトライアスロン選手にとっても、50歳のウォーキング愛好家にとっても、意味のあるメッセージ。
ナイキ・ブランドは「ジャスト・ドゥ・イット」のユニークなブランド・ポジションのおかげで、統一性を保ちつつ拡大することができた。



スターバックス・ブランドの中核アイデンティティは、すばらしいコーヒーを提供することよりも、むしろコーヒーとのすばらしい出会いを提供することにある。いうまでもなく、最高級のコーヒー豆を正しく挽き、清浄な水を使い、適切な温度を保ち、きちんと時間をはかって淹れることは大切である。が、「ナイキ・ブランド」の本質がトーション(ねじれ)・コントロールやミッドソール・クッショニング・システムを超えたスポーツとフィットネスの歓びにあるように、スターバックス・ブランドの本質は、コーヒーが醸成する雰囲気にある。



ブランド・マントラ
 

ナイキ

「本物のアスレチック・パフォーマンス」

(Authentic Athletic Performance)
スターバックス

「満足を味わう日常のひととき」

(Rewarding Everyday Moments)
ディズニー

「楽しいファミリー・エンターテインメント」

(Fun Family Entertainment)
 

ブランド・マントラは、キャッチ・コピーではない。企業がどのような商品やサービスを提供するか、どのようにビジネスを進めるか、どのような人間を雇うか、といった問題に方向性を与える道しるべのようなもの。



優れたブランドは心の琴線を揺らす
「バーガーショップは客の腹を満たす、いいコーヒーハウスは魂を満たす」



スターバックスでの新人研修は、微分積分のようにすぐ忘れてしまう抽象的で非実用的な知識ではない。一度覚えたら一生忘れない技能―――まともなコーヒーの淹れ方を教わる。
完璧なエスプレッソの・ショットの抽出スピード(18-23秒)、スチームミルクのつくり方(煮立てない、80度以下が理想)、ほかにも一杯のコーヒーを注文するときには考えもしないような多くの知識をたたきこまれる。「スター・スキルズ」という研修科目では、人手の足りない朝の7時19分にカウンターの前にカフェイン切れ状態で気の立った客が20人並んでいても、エスプレッソ・バーの後方で禅の平静を保ちつつ親しみのある笑みをうかべて、バリスタの業務を遂行するための訓練をする。



ハワード・シュルツは、ブランドを形作っていく上で各店舗の従業員が決定的に重要であることを理解していた。パートタイマーに対して正社員と同レベルの健康保険を適用し、勤務時間数に関係なく全従業員にストック・オプションを与えた。投資家からは不必要な間接費を増やすとして強い批判を受けたが、シュルツは、企業が従業員を大切にすれば従業員は顧客を大切にするようになる、と主張して譲らなかった。同じ理由から、シュルツはどこの企業にも負けない新人社員研修にも心血を注いだ。最高の福利厚生制度と最高の社員教育を用意することで、最高の人材を確保できると考えたのだ。そして、それは正しかった。



ナイキとスポンサー契約を結んだ最初のテニス・プレーヤー、イリ―・ナスターゼは、テニス・プレーヤーの大多数が「よい子」だった70年代に、正真正銘の「反逆児」だった。そして、1977年、ウィンブルドンの観客席に座っていたフィル・ナイトは、ナスターゼの後継者ジョン・マッケンローを見出した。
「この赤ら顔した18歳の選手が、古臭い決まりごとを打ち破る雰囲気をまき散らしていることにナイトは気づいた。その雰囲気はナイキ流の考え方とも合致していたし、同時に、テニスをエリートのためだけのスポーツにしようと巧みに囲いこみをおこなうテニス界主流派の、抑圧的な規範や協約と一線を画すものであった」(カッツ)




(監修者はじめにより)

長く生き残っているブランドは必ず「信用」を武器にしている
エルメスは150年、虎屋は480年の歴史。「あのブランドなら間違いない」という絶対的な信用を得て、それを武器にしている。
信用も歴史も、商品力でも経営手腕でもなく、「人の力」によって築かれる。だからこそ、人に投資し、社員を教育していくことが一番重要。

デジタルは第一印象で九割決まる
「メラビアンの法則」によれば、「無表情の暗い声で『君は素晴らしい』と褒めたたえる」など、視覚情報、聴覚情報、言語情報が矛盾していた場合、視覚情報を採用する割合が一番高い。
デジタル社会では、スマホを数秒でスクロールする。つまり数秒の視覚情報だけで「いい・悪い」を判断する。


(監修者解説より)

デジタル社会によって、かつて一般の消費者が知り得なかったことが、白日のもとにさらされます。
「内部告発は卑怯だ」とか「一億総監視社会で疲れる」というマイナス面もあることは否定しませんが、本書に書かれているような「誰に見られても恥じることのないブランディング」を心がけることは、もはやきれいごとではなく必要不可欠な危機管理といえるのではないでしょうか。
 

 

 

 

 

※目次はこちらのブログご参照

 

 

 

 

以下、余談

 

2024/6/18 仕事前、職場近くでトリプルエスプレッソラテ。

スターバックスラテより2ショット多い、3ショットのエスプレッソを使っている、とのことだが、そこまで濃厚な感じはしない。味に慣れてきてしまったのか。初めてスターバックスラテを飲んだ時の感動に近い記憶も薄れつつある。

 

 

 

 

2024/6/20

大株主への決算説明、株価評価結果の精査、個人株主への問い合わせ対応、住民税追加手続き、給与支給処理、賞与データ作成、労務問題調査、と今日1日はミッションクリティカルな仕事満載、ずいぶん神経をすり減らす。

そんな夜20時のスタバ、ココアで癒されるひと時。ふわっとしたホイップクリームとともに飲む最初の一口が、やみつきになりそうだ。そしてクリームをぐるぐる混ぜて温かいうちに胃に流し込む。ショートサイズで十分満足(むしろ、トールの量だとちょっと無理かも)。

そして、しばし、ぼんやりした時間を過ごす。